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2017.05.26

八ヶ岳のパン工房をDIY #2 — ガレージと物置小屋の建築

Text by Noriko Matsushita

編集部から:新刊『マイクロシェルター』の世界を身近に感じていただくために、このmakezine.jpに記事を書いていただいている松下典子さんが実際に工房を作った際の経験を3回シリーズの記事として寄稿していただきました。

筆者は、ライター業のかたわら八ヶ岳でベーカリーカフェ、ペロンタを経営している。パン工房は、パートナーがDIYしたガレージ併設の物置小屋を改装したものだ。前回は、パン工房に改装する前の、物置小屋の基礎からステージの製作までの話を書いた。今回は引き続き、ステージに壁と屋根を付けて、物置小屋が出来上がるまでの工程を紹介する。

トラスの制作

最初に屋根の三角構造であるトラスを作る。物置小屋とガレージを合わせると同じものを正確に10個作ることになるので、しばらく悩んだ結果、完成している物置小屋のステージをテンプレートに使うことにした。ステージに原寸でトラスを作図し、要所に角材を留めてガイドにする。ここに正確に切った材料を当てはめてコーススレッドで結合すれば同じものが簡単に作れるというわけだ。

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ステージに当てはめてみて、サイズや角度を微調整すれば位置がばっちり決まる。

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コーススレッドを打てば、出来上がりだ。

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できたトラスは塗装しておく。なお、物置小屋に使うのは4個。残りの6個はガレージ側で使用する。

壁の制作

壁の枠を2×4で組む。

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左端は2×4を3本束ねて、ガレージの屋根を乗せる軒桁をのばすためのホゾを空けている。ガレージは開口部が広い。強度を確保するために物置小屋を構造の一部にする狙いだ。枠に合板を張れば壁の出来上がり。通常の2×4工法だ。

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長い壁は2分割して作った。合板を張ると、ひとりでは持ち上げられない大きさになるからだ。さらに、ドアの開口部がある長い壁を作り、壁を全部立ててから、屋根作りに入る。

壁を立てる

まず、基準にする1枚を立てて、振り下げで垂直を出す。壁から糸までの長さを掘り下げの上の方と下の方で測り、2点の長さが同じになるように壁の傾きを修正。垂直が出たら半割を使い、壁をステージに仮留めする。合板を張るとやはり重いので、ご近所さんにヘルプをお願いした。

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まだ屋根がないので、作業を中断するときは雨の養生も必要。ブルーシートをかけ、雨水がたまってシートがはずれないように、水を入れたペットボトルをおもりとしてぶら下げている。

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棟上げ

トラスを固定して棟木を乗せることを「棟上げ」という。トラスが壁の上でずれないようにコンパネの余りをガイドとして張り、4個のトラスを壁の上に乗せる。

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棟木を乗せてトラスの垂直を確保し、トラス間の距離に大きなズレがないことを確認したら、トラスを固定する。

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屋根張り

屋根は、➀野地板、➁ルーフィング、➂屋根材の順に張っていく。今回、野地板としてはちょっと贅沢に2×4を並べることにした。これは冬の雪対策。母屋のログハウスの屋根は角度がきつく、ある程度積もると雪が雪崩のように一気に滑り落ちてくる。おかげで屋根の雪下ろしは不要なのだが、この雪が物置小屋の屋根を直撃する。そこで、合板の野地板ではなく、2×4で強度を出しておこうと考えた。

まず、棟木の両側に目隠しの板を付けた。これは、野地板代わりの2×4を棟木に固定するコーススレッドが下から見えないようにするため。これがないと、50本弱のコーススレッドの列が丸見えになってしまう。

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2×4を半分にした板を棟木の両側に張り、コーススレッドの目隠しにした

野地板として8フィートの2×4を使用。片側で27本、計54本。

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次に、ルーフィングをタッカーで固定する。

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屋根材は、オンデュリンのメタリンシートを使うことにした。フランス製のアスファルト系屋根材で、軽く丈夫で施工がしやすい。現在、メタリンシートは販売終了となっているが、オンデュリン・クラシックシートがホームセンターなどで手軽に入手できる。

メタリンシートを並べて、専用釘で固定していく。

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専用釘は水の浸入を防ぐためのキャップが付いており、釘を打ったあとでフタを閉める。このキャップの位置がバラバラだと美しくないので、糸を張って位置が揃うようにした。シートの並べ方や釘を打つ順は、メーカーのウェブページで施工手順を確認するといい。

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軒先から出る屋根の長さを一定にするために板のガイドを作り、軒先にクランプで固定している

同じ要領で両側を張り、棟木カバーを張れば完成だ。

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ガレージ部分の制作

完成した物置小屋から一段下がった場所にガレージを作る。ガレージの柱は、2×4材を3本を束ねたものだ。角材ではなく2×4材を使う理由は、中央の材を分割することで簡単にホゾ穴が作れるから。この柱を束石に立て、あらかじめ物置の柱側に空けておいたホゾ穴に桁を差し込み、柱と固定する。すべての柱を立てたら、梁を接続する。

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あとは物置小屋と同様、トラスを乗せて、屋根材を張れば完成だ。ここでは、屋根を作る前に物置小屋のサイディングをした。屋根を張ると、作業がしづらくなるからだ。

小屋のサイディング

壁を防水するため、屋根に使ったルーフィング材と同じものを壁に巻きつけた。

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巨大な巻き物状になっているルーフィング材をぐるりと全体に回している

次に、サイディング用の羽目板を張る。羽目板をスライド丸ノコで切り、チョークラインで釘を打つラインを付け、1枚ずつ張っていく。

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張り終えたら、塗装。

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角の部分はルーフィングが丸見えになり、そのままではかっこ悪い。そこで、1×4を2枚L字型に組み合わせてカバーを作り、物置の角に取り付けた。

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窓とドアを取り付ければ物置小屋の完成。

ガレージの仕上げ

さて、ガレージの梁に残りのトラスを乗せて、屋根を張れば完成だ。ガレージは小屋よりも大きいので、屋根張りを少しでも楽にするため、ハシゴ(足場)を制作した。棟木にひっかけて固定し、板を張った部分にひざを置いて作業できる。

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完成したガレージに砕石を敷いた。1リューベ(1立方メートル)の砕石を使用

この7年後、2015年の秋から2016年3月にかけて、物置小屋部分をパン工房に改装することになる。その話はまたは次回。