Crafts

2017.04.17

食べられるイノベーション:マイクログリーンを育てるキット「MicroGrow」と「Seed Quilt」

Text by Chiara Cecchini
Translated by kanai

シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。


DanielとCamilleは、MIT Media Labの学生として出会った。どちらも機械エンジニアで、物を作るのが大好きだ。ボストンでは、制御環境式農業システムを作っていたが、それだけでは満足しなかった。人々があっと驚くようなものを作りたいという情熱を持つ彼らは、サンフランシスコに移り、HAMAMA@hamama_greens)を創設した。

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自分で食べるものを自分で栽培したいと思う人は多いが、実際にやろうとすると、かなり難しい。いろいろな制約(土地、天候、知識、気持ちの余裕)から、自分の菜園を作ろうという気持ちは萎えてしまう。「私たちは、もっと多くの人たちに、健康な食料を育てられるようにすることが、我々二人のMakerにとって、面白くてインパクトのあるチャレンジでした」とCamilleは話す。「始めばかりのころ、我々は農業の自動化を研究していました。センサーとソフトウェアですべての管理をさせる栽培法です。家庭菜園に失敗した経験のある人たちは、興味を示してくれました」

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しかし、その結果として生まれたのが HAMAMA MicroGrowキットだった。誰にでも、家で一年を通して栽培できるマイクログリーンだ。

マイクログリーンとは、野菜やハーブの苗のことだ。たとえば、最初に発売されたのが、ダイコンラディッシュ、赤キャベツ、サラダミックス(ブロッコリー、ケール、カリフラワー、コールラビ、ルッコラ、キャベツの混合)だった。小さな苗に育つだけだが、大きくなった野菜と同じ味がする。また、米農務省の研究によると、こうした苗は、完全に育った野菜よりも、栄養素が40倍も濃いそうだ!

CamilleDanは、マイクログリーンを自動的に育てるキットを、できるだけシンプルにするよう、たくさんのプロトタイプを作ってきた。そして、植物が育つ段階ごとに重要となるパラメーターを割り出したのだ。マイクログリーンを完璧に栽培できるようになると、彼らはその自動化に取りかかった。まずは、タイマーや環境センサーの値を使って、重要なパラメーターをコントロールしようとした。次に、センサーを使うのを止めて、植物自身が光や湿度の環境に適合できるようにデザインする方法を考えた。大胆なアイデアだ。そうして、Seed Quiltが開発された。

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種は、培養メディアとカバー層との間に挟まれている。カバー層は、光を遮断して、発芽に最適な暗い環境を作る。発芽すると、芽はSeed Quiltのカバー層を持ち上げ、小さくて湿度の高い空間を作る。やがてカバーを破って表に顔を出し、十分な光を受けられるようになる。その間、根は培養メディアの中で成長を続け、その下に貯められた水を吸い上げる。このシステムは、植物にすべてを任せている。

MicroGrowキットは、わずかなスペースしか必要としない(約30×18×6センチ)。それでいて、7〜10日ごとに、約57グラムのマイクログリーンが収穫できるのだ。ただ水を入れて、Seed Quiltを置いて、あとは見るだけ。Seed Quiltの中に、種と培養メディアが組み込まれており、光と湿度が管理される。MicroGrowキットとSeed Quiltがあれば、マイクログリーンを一年を通して室内で育てることができる。外の天気や季節は関係ない。ガーデニングの技術がなくても、場所や時間がなくても、地理的に厳しい場所でも、簡単に育てられるところがいい。水やりの心配もいらないのだ。

原文