シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。
ほとんどの人がそうだろうが、虫は気持ち悪い生き物で、家や庭からいつも追い出される対象だ。おいしい食べ物だなんて思わない。しかし、最初の「ゲッ」と感じる問題を乗り越えれば、食べられる虫の世界は、おいしいだけでなく、持続可能であることがわかる。
巨大な農場や巨大な牧場は、気候変動の大きな一因になっている。私たちが日常食べているタンパク質(ビーフ、ポーク、チキン)を生産する業界は、持続可能ではなく効率も悪い。大量の廃棄物は、環境とそこに暮らす人々に悪影響を与えている。こうした食品産業の非効率性を気に掛けていたAndrew Brentanoは、さらに、地球規模の人口増加に伴い、タンパク質の需要が高まることを心配していた。そして彼が出した答はこうだ。虫を食べよう!
始まり
Brentanoは多才な若者だ。彼の情熱は、金属加工、料理、さらにはビッグデータ解析にまで及ぶ。彼の会社の核となっているもの、そして彼の信念は、地球上の人の生活環境を改善するという道義的責務から発している。Cognitive Systems(コグニティブ・システムズ)社では、彼は自身の経験を活かして、高度なテクノロジーを昆虫牧場と密に組み合わせ、最終的にはスマートファームシステムを完成させようとしている。
Brentanoは環境保護主義者でもあり、熱帯雨林と人類の生活状態を憂慮している。これ以上、熱帯雨林を伐採して、世界の生物多様性を低下させ続けるのではなく、Makerとして、新しいタンパク源を探すべきだ。スマートファームの考え方を広めることで、私たちの需要を新しいタイプのタンパク質で満たし、食料生産のための破壊的な農場開発を阻止することができると期待している。そんな期待から、Tiny Farms(@tiny_farms)が生まれた。
虫を食べる
虫を食べるという考え方に心を閉ざそうとする前に、世界中の数多くの地域で昆虫食の習慣があったことを知ってほしい。昆虫はタンパク質と栄養素が豊富で、カロリーが低いが、食べ応えがある。普通に調理してもよいし、コオロギの粉のように、粉末にして使うこともできる。
昆虫食には、いろいろな利点があるのだ。脂肪の少ないタンパク質であり、常温保存が可能で、糖分も非常に少ない。いろいろな味付けや調理法で、おいしい料理になる。2008年から、世界のトップシェフたちが、昆虫を食材として採り入れ、工夫をし始め、昆虫を中心とした傑作料理がいくつも登場している。
小さな農場のコミュニティ
Tiny Farmsでは、昆虫に関して2つのことを行う。新規の昆虫養殖家に商売の手ほどきをすること、そして、家庭で昆虫を育てる人のためのコミュニティプラットフォームを作ることだ。このコミュニティは、Open Bug Farmと呼ばれている。昆虫を育てる人と食べる人たちがアイデアや経験や成功例や失敗例などの情報を交換する場だ。
ここはもともと、ゴミムシダマシの幼虫の養殖キットを販売し、昆虫食を宣伝するためのプラットフォームとしてスタートしたのだが、持続可能なタンパク源という部分に注目が集まった。現在、Open Bug Farmは、Tiny Farmsの助けをほとんど借りずに、人々が養殖器や育て方などに関する意見交換を行う大変に活発な場所になっている。この目覚ましい発展は、昆虫養殖への人々の興味が高まっていることを示し、消費者にとって、このタイプのタンパク質の利点を示すものでもある。
テクノロジーの導入
Brentanoの昆虫養殖の方法がユニークな点は、最初からテクノロジーを採り入れているところにある。高度なセンサー、データ収集、自動化によって、彼はスマートファームを作り上げた。これにより、経験のない昆虫養殖家でも、虫の状態を細かくモニターし、生産量を調整できる。
彼らは、昔ながらの昆虫養殖場、とくにコオロギ養殖を参考にして、コオロギの世話や収穫にかかる労力と時間を削減するために、一から考え直した。彼らのシステムを使えば、いつでも養殖器の環境をモニターできる。生産量は増えるが、時間や労力は削減れる。これから昆虫養殖ビジネスに参入しようという人には、うってつけのシステムだ。
Tiny Farmsは、世界のさまざまな地域で昆虫養殖の支援をしている。そこでは、地元のバイオマスを使ってタンパク質が豊富な昆虫が育てられている。同社では、すぐにでも既存のタンパク質市場に乗り込み、人とペットの食料として昆虫を売り込んでゆくことを考えている。肉の価格が高騰し続け、食肉産業が環境に与える悪影響が大きくなるにつれ、この安価で栄養豊富な選択肢が市場で注目されるようになるだれろう。
夕食用に、豚肉ではなくコオロギを買う日が来るかもしれない。それまでTiny Farmは、新規の昆虫養殖家にスマートな養殖方法を提供し、昆虫で充実した生活が送れるように支援を続けてゆく。
[原文]