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2017.06.12

Maker Faire Bay Area 2017 #1 ピンボールや機械式時計など古いからくり仕掛けの「新しい見せ方」

Text by Toshinao Ruike

アメリカ西海岸の最大のMaker Faire Bay Areaがカリフォルニアのサンマテオで5月19日から3日間開催された。

私はヨーロッパに在住しているため、これまで本サイトでローマやバルセロナのMaker Faireをレポートしたり、ヨーロッパ各地のテクノロジー事情を取材して記事にしてきたが、今回ベイエリアでの取材に際して初めてアメリカでのMakerムーブメントにじっくりと触れることができた。日本・ヨーロッパと比較しながら、今回から数回に渡りレポートしたいと思う。

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まだ5月にも関わらず、サングラスと日焼け止めが必要になるくらい極端に晴れ渡った青空の下、入り口ではバッタ、ハエ、蛾の鋼鉄彫刻が火を吹いている。暑い日差しの中で爆発音と共にひたすらに火炎を放つオブジェ。特別に何か凝っていて面白いわけでもなく、なんとなく作りたいから作ってしまったような雰囲気がベイエリアのMaker Faireの特徴を端的に表しているように思える。

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ピンボール博物館と地元の高校のSTEAM部によるピンボールゲームの展示が行われていた。ビンテージとなったピンボールゲームだが、今時の子どもたちも十分楽しんでいた。

ピンボールの玉を弾くバンパーの仕組みをゆっくり説明する装置。

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金属製の玉がぶつかることで球を弾くスイッチがオンになる、それだけの仕組みの説明だが、こういったゲームを構成するためにどういった技術が必要だったか知ることで、ものづくりのためのメカニズムについて学ぶことも多い。今ではこういったピンボールゲームの類はすべてデジタルに置き換えられてしまったからだ。

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ピンボールの台を開け、中で結線されている様子を見せて解説している。今日のようにマイクロコントローラーをプログラミングして使うことのできない時代に何がゲームを形付けていたのか、現在と昔の技術を比較することができる貴重な機会だと言えよう。

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こちらのご夫婦はレーザーカッターで切り出した木製の歯車を使ったアクセサリーなどのプロダクトを展開しているSteamy Techの二人。頭に被っている帽子にはレーザーカッターで切り出された歯車が回転している。

帽子の中で複雑に噛み合いながら回転している電動の歯車。会期中はブース内だけでなく、この帽子を被って普通に歩いたり外の屋台でご飯を食べたりして注目を浴びていた。

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木製の歯車をスムーズに嚙み合わせるためには正確さが必要で、レーザーカッターが不可欠とのこと。二人はMITでコンピューター工学を専攻していたという経歴の持ち主で、その後この歯車を使った製品を扱うビジネスを始めた。まったく違う道を歩んだようだが、エンジニアリングを勉強していたバックグラウンドは製品開発やメンテナンスなどに生きているそうだ。

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歯車を手で回すペンダントやネクタイなど、極力金具を使わないほとんど木製の製品は大好評であっという間に売り切れ、補充のために空き時間に補充用の部品を組み立てていた。必要な分だけ、レーザーカッターでまったく同じ部品を板から切り出して組み立てればいいのだ。

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歯車を自分の好きな色でデザインして、壁にはめ込んで参加するスペース。こちらも各歯車がかみ合っていて、一か所を動かすと連動して他の歯車も動く仕組み。歯車という物珍しさのないごく一般的な部品をレーザーカッターを活用して木を切り出して作ることで新鮮に見せていると言えよう。最近ハンドスピナーが流行しているが、彼らの製品が金属製ではなく木製であるという点は物珍しさにまた拍車をかけているかもしれない。

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こちらは米国各地で時計職人を養成する教育機関が加盟する協会のブース。

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時計の組み立ての実演を行っていた。悪気はなかったのだが、「最近は若い人はみんなスマホで時間を見てしまうから、なかなか時計に興味を持って職人になろうとする人も少なくなってますよね?」と聞いたところ、「だからこそ、今こうやって若い人に興味を持ってもらうために活動しているんです」と真剣な口調で語っていた。

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ファミリー向けに簡単な歯車を組み立てる玩具を使ってワークショップが行われていた。

時計職人の方には無神経な質問をしてしまって大変申し訳なく思ったが、こうやって古い技術を継承していきたいという意思を持って、Maker Faireに出展して教育活動を行っているような点は感心するべきだと思わされた。

ピンボールや歯車を使った展示のようにもう新しくはない技術を新しく見せる活動も面白かったが、危機感を持って時計のように職人がずっと引き継いできた技術を途絶えさせないよう啓蒙活動を行うことも非常に重要で、Maker Faireは古い技術たちを見せるための新たな場所にもなり得る、ということを感じさせた。