2019.06.10
Maker Media社の現状とMaker Faire Tokyo 2019について
先週末に米国のいくつかのメディアにて、Maker Media社の資金難による事業停止と従業員の解雇について報道が行われました。それらの報道を受けて、Maker Media社のライセンスをもとにオライリー・ジャパンが主催している「Maker Faire Tokyo」の開催を心配している方もいらっしゃるようです。本記事では、この件について説明したいと思います。
まず最初に「Maker Faire Tokyo 2019」は、8月3日(土)、4日(日)に予定通り開催されます。Maker Media社の創業者兼CEOであるDale Doughertyも、全世界のMaker Faireの運営者が参加しているメーリングリストに「Maker Media社の事業停止はライセンスを受けて開催されているMaker Faireの開催に影響がない」ことを明言しています。
出展が決定している方は、引き続き出展のご用意をお願いします。ご来場を予定されている方は、今後発表を予定している新しい企画もありますので、そちらを楽しみにしていただければと思います。
ここからは、日本のMaker Faireの現状について、いくつかの点から説明させていただきます。
一ヶ月ほど前、Maker Faire Bay Areaの開催が今年で最後になる見込みであることと、その大きな理由はスポンサーが減ったことであることが、米国のいくつかのメディアで報じられました。この点について、Maker Faire Tokyo 2019では、本日時点で未発表の企業も含めて、昨年と同様の数の企業にスポンサードしていただくことができました。また、メイカームーブメントの広がりという点では、昨年を大きく超えるメイカーの方に出展申し込みをいただくことができました(ただし、来年の東京オリンピック開催に伴う東京ビッグサイトの利用制限により、昨年より会場が狭くなったため、多くの方の出展をお断りせざるを得なかったことは本当に申し訳なく思っています)。加えて、この5月に開催された「Maker Faire Kyoto」では、主催者が想定していた来場者数の1.5倍の方にご来場いただき、大きな成功を収めました。
Maker Faire Tokyoの前身である「Make: Tokyo Meeting」から11年、Maker Faire Tokyoとしてリニューアルしてからは、6年が過ぎ、目新しさなどが減ったことなどから、いわゆる「メイカームーブメント」としての曖昧な期待感でメディアに取り上げられることは少なくなりましたが、日本のMaker Faireに関わっていただいているメイカー、スポンサー、来場者は着実に増えているというのが事実です。またその活動領域も広がってきています。
とは言え、Maker Faire Tokyoのような大規模イベントを “回す” のは簡単なことではありません。特に、高い技術を持ったメイカー(ギーク、ハッカー)の交流イベントとしての側面と、未来のメイカーである子どもたちにも開かれたイベントという側面、そしてスポンサー(とオライリー・ジャパン)にとってはビジネスの場所でもあるという側面について、どのようなバランスが適切なのかということについては、簡単な解決策は見出せず、ずっと悩んでいるというのが正直なところです。このバランスについては、はっきりした結論が出ることがないのかもしれないのかもしれませんが、それでも今回Maker Media社に起こったことによって、イベントの方向性や持続可能性、主催者としてMaker Faireに関わるすべての方々にどのようなメリットを提供できるかということについて、改めて直面させられました。
今後もさまざまな面で試行錯誤が続くかと思いますが、メイカーコミュニティの皆さんやスポンサーの方々のご意見をお聞きしながら、「新しいテクノロジーを好奇心を持って使いこなすメイカー同士、そして明日のメイカー(子どもたち)が、技術やアイデアや熱意を交換する場所」として、Maker Faire Tokyo / Kyotoが、これまで以上に意味のあるイベントであり続けるように、加えて持続可能なイベントであり続けられるように、チーム全員で努力していきたいと思いますので、ご支援をいただけますよう、お願いいたします。ご質問やご意見は、info@makejapan.orgまたは下の個人アドレスまでお寄せください。
最後になりましたが、これまで世界中のMaker FaireをサポートしてくれたMaker Media社のすべてのスタッフの将来が良い方向に向かっていくように、心より願っています。
オライリー・ジャパン
田村 英男(tamura@oreilly.co.jp)