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2023.12.28

最優秀賞はLiDARを使って空間の深度情報を音にするシンセサイザー「SPATIALIZER」、アイデア炸裂、驚異の作り込みの作品が大集合!―「Young Maker Challenge 2023」コンテスト表彰式

Text by Junko Kuboki


「Young Maker Challenge 2023」コンテスト表彰式のアーカイブ映像

Maker Faire Tokyo 2022から始まった「Young Maker Challenge」コンテストが、今年も開催された。コンテストの表彰式は今回も最後のステージプログラムに設定され、「Maker Faire Tokyo 2023」の締めくくりにふさわしい盛り上がりを見せてくれた。

このコンテストは、Maker Faire Tokyoの会場に出展するすべての「Young Maker(学生メイカー)」が審査の対象になる(2023年は51組がエントリー)。審査は、各作品やプロジェクトの技術レベルの高さだけでなく、発想のユニークさ、アイデアを形にすることへの熱意などにも着目、学生メイカーのチャレンジを多角的に応援するのが、方針となっている。

審査員は昨年(2022年)同様に、多摩美術大学情報デザイン学科教授の久保田晃弘さん、「デイリーポータルZ」の石川大樹さん、ギャル電さん。そこに、このコンテストをスポンサードするソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の太田義則さん、セメダイン株式会社の大村里美さんも加わり、計5名体制で審査は進められた。

審査のための審査員(久保田さん、石川さん、ギャル電さん)のブース巡りツアーは、1日目の午後、2日目の午前と2回に分けて行われた。約2時間半で25ほどのブースを巡る強行軍を、2日連続で実施するという日程。Maker Faireの会場を訪れたことがある人ならば、このハードさが想像できるはずだ。なにせ1日中をかけてもブースを20か30回るのが精一杯なのが、Maker Faire。ついつい長居してしまうブースがあったなら、見逃しが多くて後ろ髪を引かれながら帰路に着く、なんてこともよくある。

2日目に行われる審査では、ブース巡りの後に侃々諤々の議論と、表彰式の準備が待っている。議論は「これを絶対に!」はもちろん、「こっちのジャンルからも入れたい」「それはこちらの賞で」「これを忘れてませんか」となってなかなかまとまらない。全員一致で選ぶことになる「最優秀賞」はまだしも、各人が選定する「優秀賞」「スポンサー賞」のほうが「あれもこれも選びたくて1つを決められない」となってしまう傾向があるようだ。

ちなみに各賞は、「最優秀賞」(1組/賞金5万円)、「優秀賞」(3組/賞金各2万5千円)、「スポンサー賞」(各1組/賞金3万円)、「特別賞」(3組/オライリーブース物販購入券)となっている。

そんな審査の結果としてどのような作品が選ばれたのか、審査員コメント、受賞コメントともに、まずは紹介していってみよう。

受賞作紹介

●最優秀賞
SPATIALIZER — 作者:長谷川泰斗出展者紹介

久保田:長谷川さんが製作したのは、ひと目見て「製品じゃないか」と思えるくらいに完成度の高いシンセサイザーです。オレンジ色のツマミの後ろにLiDARセンサーがあり、空間の深度情報を取得します。そのデータを使って音が鳴るシンセサイザーなわけです。僕は最初、深度情報を使ってシンセサイザーのアルゴリズムをコントロールするのかと思ったのですが、実際に装置に触ってみて「なるほど」となりました。深度情報をそのまま音にしているんですね。そのほうが生々しい音になるし、装置単体で使うよりも空間でパフォーマーと連動させてライブパフォーマンスをやったり、即興演奏をすることができます。つまり、今までのシンセサイザーとは違う可能性があるようです。

石川:僕がすごくいいなと思ったのは、空間をサンプリングして音に変えるところです。環境や自然現象を音に変換して音楽にする例はこれまでに山ほどありますが、その際の変換方法は結局、人が恣意的に決めていたわけです。実際の自然現象とどのくらい連関しているのか、そこを僕はわりと疑問に思っていました。「SPATIALIZER」は、深度情報がそのまま波として音に使われるとのことです。目の前にあるものが音に変わる、そのメタモルフォーゼの面白さを体験できました。

ギャル電:このシンセは、音の作りが画期的、独創的ですよね。まず、「LiDARで音を作るの?」という驚きがあります。その音の作りもよくて圧倒されるのですが、ひと目見て「装置の外装がよすぎない?」もあります。このオレンジ色のアールとツマミ、よくよく聞けば、このステキなアールもMDFを水で濡らしながらちょっとずつ作ったみたいなんですけど。とにかくトータルにこだわりと完成度が高い作品です。

受賞コメント(長谷川泰斗さん):この作品の読み方は、「スパーシャライザー」です。読み方がわかりにくくてすみません。完成度については自分で言うのも恥ずかしいのですが、今はプロダクトデザインを専攻していることもあって、こだわりました。その結果、みなさんには市販品を改造して置いているように見えてしまったみたいで、そこに気づいてからは「実は木で作ったんです」と自分から言うようになりました。空間を音に変換することには、ずっと取り組んできています。これまでは同じ芸術系の人と触れ合う機会が多かったのですが、今回は工学系の人もたくさんいるMaker Faireに出展していろんな人に触ってもらって、「こうしたらもっと面白い」も見えました。今すぐ帰って改良したい気持ちになってます。賞をありがとうございました。

●優秀賞(ギャル電さん選定)
万能? チップマウンター「RaPick」— 作者:やえ出展者紹介

ギャル電:私は趣味でそんなに難しくない基板を作るのですが、これは基板の上にチップなどを載せてくれたうえにさらにはんだのペーストを塗ってくれ、最後に熱でジュッと定着させてという作業をすべて自動でやってくれる装置なんですよ! しかも、装置のサイズが小さい。家に置けそうですよ! 「製品化されたらマジに欲しい」と思えた作品でした。制御のソフトウェアまで自分で作られています。すばらしいです、製品化を期待してます!

受賞コメント(やえさん):チップマウンターは、高額にはなりますが販売されている製品があります。基板を自分で作ろうとすると、はんだを塗ってチップを置いてと手作業になります。回路を引いてアイデアをかたちにしたいという時、基板を作る工程が障壁になることもあります。もともと自分が欲しいなということから作りはじめた機械なのですけれど、今日会場でお話ししていると「自分も基板を作りたい」という人が多くて、売りたい気持ちも強くなってきました。ありがとうございました。

●優秀賞(石川さん選定)
ウオォォラコースター — 作者:接点事務所出展者紹介

石川:この作品は、ジェットコースターのレールのようなかたちがありまして、そこにLEDが点滅して動いています。ここで声を出してみます(「ウオォォ」)。と、大きい声を出すと、光がぎゅんと動きます。「絶叫するほどにぎゅんと速くなる」と口で言ってもピンとこないかもしれないですけれど、実際に大声を出してみるとすごく気持ちがいい。フィジカルなよさがある作品です。それと、3Dプリンターで作ってある透明な樹脂部分の積層のキメ、それによってLEDの光がライン上になったり拡散したり、それが美しくもあります。アイデア、全体の完成度の高さを含め、選びました。

受賞コメント(接点事務所さん):僕は中国からの留学生で、武蔵野美術大学大学院のクリエイティブリーダーシップコース修士2年をやっています。このローラーコースターは、修士課程でのデザインエンジニアリングの最初のプロジェクトでした。最初は完全にMDFで作りました。2つ目のプロトタイプは、けっこう大きなローラーコースターです。3つ目でこのコンパクトなミニバージョンにしました。僕は学部では機械工学を学び、修士で日本に来てデザインを学び、だから友達とやっている「接点事務所」は、工学と芸術の接点を見つけたいと活動しています。接点を見つけるのが目標なんです。今日はありがとうございました。

●優秀賞(久保田さん選定)
しゃかりき陶磁器 — 作者:いとうみずき出展者紹介

久保田:いとうさんは、3Dプリンターを使って陶芸をしています。それで話を聞いていくと単に3Dプリンターで造形するというだけではなくて、面白い工夫をしているんですね。プリンターのノズルを自作しています。陶芸で3Dプリンターを使うとなるといわゆる「紐作り」のやり方になるのですけれど、ノズルをいろいろ作って試すことで釉薬と組み合わさり、今まで見たことのないテクスチャーが出ているんですね。これは探索しがいのあるテーマになっていると感じました。それと、こうしたことをやっている人は周囲にまだいないそう。Maker Faireで同様のことを考えたり、やっていたりする仲間を見つけたいとのことで、今回は優秀賞に選びました。

受賞コメント(いとうみずきさん):京都芸術大学から来ました。このような賞をいただけてありがたいかぎりです。私は「セラミック3Dプリンター」というものを使って陶器作りをしているのですが、最近は3Dプリンターの「積層痕(せきそうこん)」は消したほうがよいという流れになっています。私は積層痕を活かした装飾性みたいなものを作りたいと考え、制作を続けています。周囲に同じようにやっている人がいなくて、やっていてもこっそりやっていたりするので、ぜひみんなオープンにしてやっていきましょう。こういう方法を知って興味を持っていただけたらうれしいです。

●SPRESENSE賞(ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社)
超小型人工衛星とハイブリッドロケットの展示 — 作者:東京都市大学宇宙科学教育コミュニティ:TAC出展者紹介

太田:今回、SPRESENSEを使った作品は、51作品中6作品ありました。賞の選定にはかなり悩みました。TACは今回、超小型人工衛星を作るとのこと。話を聞いていたら、ハイブリッドロケットにも弊社のSPRESENSEを使っているということがわかり、それが決め手となりました。衛星だけでなくロケットの制御にも使うということは、SPRESENSEが宇宙開発の開発プラットフォームに育っていくのではないかとの期待も持たせてもらいました。ぜひ今回の成果を発展につなげていってください。

受賞コメント(東京都市大学宇宙科学教育コミュニティ:TACさん):開発にはSPRESENSEを使っています。SPRESENSEは宇宙関連でも実際に衛星に搭載されていて、宇宙開発にも使える形で作られています。私たちの団体は「教育」と言っている通り、人材育成もテーマの1つとして掲げています。日常の電子工作から人工衛星開発という高度なところまで、段階的に技術を積み上げていける人材育成を目指しています。今後は、われわれ東京都市大学初のハイブリッドロケット、初の超小型人工衛星の成功を目指してがんばっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

●セメダイン賞(セメダイン株式会社)
結合振動子モデルでライブ会場を再現してみた — 作者:天狗工房出展者紹介

大村:私個人もライブシーンのあるアニメが大好きです。でも、そのライブシーンで「ペンライトが揃いすぎていると気持ちが悪い」ということなんですね。そのコメントを聞いた時、すごく共感しました。で、ここには数学モデル(蛍の発光やメトロノームの同期で見られる「結合振動子モデル」)を応用しているそうです。すごくマジメな分野の高度なモデルがこんな身近なエンターテイメントに反映できるんだよ、というコンセプトの作品です。そこにトキメキがありまして、選ばせていただきました。

受賞コメント(天狗工房さん):今回は、私の研究、オタク活動、ものづくり、この3つを融合させた作品です。オタク活動にせよ、研究にせよ、一般の人に広く伝えるのは難しいです。でも、ものづくりをしてMaker Faireという場を使わせてもらうことで、いろんな方に見ていただくことができました。ありがとうございました。

●特別賞(ギャル電さん選定)
計算機と出会ったオルタナティブプロセス — 作者:アナログ写真屋ちなっちゃん出展者紹介

ギャル電:この作品は、ちゃんと説明を聞かないと理解しにくいマニアックなプロジェクトによる作品です。彼女はフィルムカメラを使ったことがきっかけで、昔の写真の現像方法を研究、現代的にアレンジして再現するプロジェクトにしていきました。プロジェクト自体が面白いし、この面白さをみんなと共有しようという、説明の熱量もすごくよかったです。とてもよいプロジェクトになっていると思います。

受賞コメント(アナログ写真屋ちなっちゃんさん):「オルタナティブプロセス」という、フィルムカメラの前の時代の写真の技術をコンピューターを使ってアップデートする研究をしています。これは私が所属している筑波大学の研究室で行っている研究なのですが、これをやり始めたきっかけは、私がフィルムカメラよりも昔っぽい感じが好きだったからです。そしてたまたまそれをやっている先生と出会い、意気投合して始めたノリ満載のプロジェクトになりました。賞をいただけてうれしいです。

●特別賞(石川さん選定)
手づくりガチャ — 作者:京都芸術大学ガチャガチャサークル出展者紹介

石川:ブースで「なぜこれを作ったのか」と聞いた時、「最近は街中にガチャガチャがたくさんある。いっぱいあるものを見ると作りたくならないですか?」と逆に聞かれてしまいました。その気持ちはわからなかったけれど、モチベーションとして面白いですよね。それと僕は「デイリーポータルZ」というウェブサイトをやっていて、そこではいろんなライターさんが工作をしたりして記事を作っています。その中の1人が以前、「何でもデカくすると面白くなる」と言っていました。今回の出展では、通常サイズの「手づくりガチャ」のデータを拡大、すごくデカいガチャが作られています。まさに、大きくすると面白い! 小さいものをそのまま大きくしても必ずしもうまく動くとはかぎらないという現実があるわけですが、このデカいガチャはすごくスムーズに動きます。

受賞コメント(京都芸術大学ガチャガチャサークルさん):私たちのプロジェクトは、芸大生が作った手づくりガチャガチャの中に、芸大生が作った作品を入れるというものです。ガチャガチャを回してもらうことで簡単に芸大生の作品を世の中に出していこう、というコンセプトなんです。「大きくしたら面白くなる」というのは、まったくその通りです。そんな安直なノリでデカいのも今回は作ってきました。ガチャガチャの中味(作品)もまだ残っていますので、このあと、ぜひ回しに来てみてください。

●特別賞(久保田さん選定)
自作Z80マイコンでの鉄道模型制御システム「HOPE-2023」— 作者:中谷亘佑(大阪明星高等学校)出展者紹介

久保田:中谷さんが作ったのは、鉄道模型の制御システムです。コントローラーは8ビットマイコンで、使われている「Z80」はもう何十年も使われてきているプロセッサーです。それをCPUにして、ほかにも古い昔からあるチップを使ってマイコンを自作しています。そんなキットがあるわけでもなく、自分でデータシートを読み込んで「こんなことができるのではないか」とか「このチップは面白いから使ってみよう」とか、チップ自体の面白さにすごく意識的になって作っているところが評価ポイントです。それからこのブレッドボードは、例えばアドレスパス、データパスと用途に応じて容量を変え、しかも丁寧に美しく作られています。作り込みにもインパクトのある作品です。まだ高校生とのことで、今後も楽しみです。

受賞コメント(中谷亘佑さん):私は2年前からMaker Faireに参加していて、この基板を作る前に「Legacy8080」というZ80を使ったマシンを使って電車制御をやっていました。去年それが壊れてしまって、手元にマイコンのチップ、CPUがあるじゃないか、新しいものを使うより使い慣れた古いものでいいし、自分が楽しければそれでよし、とこれを作りました。実は一部にうまく書き込めてないエラーがあるのですが、それでも今回は特別賞をいただけてよかったです。ありがとうございました。

写真で振り返るYoung Makerゾーン

表彰の後は、今年からの追加企画として、審査中にスナップされた写真を見ながら各審査員がコメントしていく時間が設けられた。これは、賞には選ばれなかったけれど、ぜひ紹介しておきたい作品をピックアップする目的でありながら、審査員の目線でブース巡りをするような楽しさがある。紹介された作品から何点か、各審査員がスナップした写真とコメントを紹介してみよう。

今回3人共通で感じたことは、音や楽器のジャンルの作品の数です。最優秀賞の「SPATIALIZER」もそうです。この「描くターンテーブル」(Magyo-Z)は、ターンテーブルの上に物を置くとセンサーが反応して音を出す、という作品。口で言うとシーケンサーですが、物になることによってスクラッチができたり、その場で動かしたり、ぐしゃっと放り投げたりと、レコードとはまったく違う、物理的な操作ができます。シンプルに楽しい作品でした(久保田)/チップの色で音が違うところもよかったです(ギャル電)

「プラレールCBTC:障害物を避けて運行を継続する鉄道システム」(プラレーラーズ)はプラレールを使った作品、これもかなり悩みました。プラレールをコントロールするだけではなくて、そこに物語(ナラティブ)があるんです。そのナラティブを語るためのプラレールとその制御。ぐっときました(久保田)/もし事故があったとしても電車の位置を把握できるから、運行をシステムのほうで変更してうまく調整できる、というお話。その位置を読み取るための仕組みが面白くて、NFCカードのチップで位置の読み取りをしていたり。電車の後部に基板がはまるようにきっちり作り込みをしていたり。一見するとふつうにプラレールが走っているだけのようですが、説明を聞くとチームワークもしっかりしていてかなりすごいことをやっていることがわかる(ギャル電)/その物語を説明してくれる時の熱さもよかったな。「ここで事故が起きるんです。そこを回避するためにこっちの貨物のレールに入るんですよ」という感じで、「おおおっ」と思わされる気迫がありました(石川)

これは、ギャル電が買ってたやつ(笑)。カワイイですよね。小さい液晶が付いていて、画面が3分割されています。一番上は周波数、二番目は波形のパターンとかで、そこに何を映すかによって動物の鳴き声を合成した音が出ます。そういう楽しいシンセサイザー(石川)/審査員にあるまじき行動を取りました(笑)。2,000円と書いてありますよね。後方にはラズパイピコを実装していてモニターが付いているのが見えますよね。シンセで音も出ると言うんですよ。それで、作者の方に「2,000円はおかしくない? 安すぎるよ!」と怒りながら、2,000円で買いました(笑)。ともかくみんな、自分で作った基板装置を売る時には材料費だけではいけない。ちゃんと手間賃ものせよう、という熱いメッセージも伝えたいです(笑)(ギャル電)

これは、昨年僕が賞に選ばせていただいた亀井里咲さん(多摩美ハッカースペース・オープンラボ)の作品です。「夏の思い出」といって、ゴミが生きているかのように動きます。仕組みとしてはシンプルなのですが、その動きがまるで生きているようで、エモい。それと僕が思ったのは、展示するものって全部見て欲しいから、早くカチャカチャと動かしがちです。そうじゃなくて、これは生き物のテンポ、飼っているペットのようなリアルなテンポで動いているのが僕は好きでした(石川)

この「インタラクティブ刺繍-導電糸刺繍でつくるセンサ」(東京大学 IIS Lab)、めちゃよかった。導電糸の刺繍をセンサーにするのはけっこう前からあるネタですが、これはかなりブラッシュアップされて新しいテクニックがありました。こうするとこうなるのデータも含めて展示していて、どれもアイデアがいっぱいでした(ギャル電)/写真のこれは文字入力用刺繍なんです。上下にヨコ9本のラインが並んでいるけれど、これをマトリックスにするとかえって大変になってしまう。9つのラインを動く指の位置だけでABCの文字入力をできるようにしようとか、導電糸の刺繍で面を作って面を折り畳むことによってインターフェースを作るとか、布にしかできない特性を使った作品をいろいろ見せてもらいました。ジーンズの全面にこれをほどこしてスマートフォンに入力できるものを作りたい、と言っていましたね。とにかく完成度が高い(久保田)/いろんなものを新しいかたちに書き換えてくれるような、そんな可能性を感じる作品でした。スポンサー賞候補としてぎりぎりまで悩みました(大村)

「Animooo」(ました。)も、プロダクト力が高い人たちです。動物型の手袋をはめてハイタッチすると音が出たり、光が変化したりします。その仕組みをしっかり作っている。もうひとつのキャラクターのチョリソー(写真奥:チャラそーくん)はしゃべるんですが、どれもそれぞれ世界観がしっかりしていて、作り込みの完成度も高い。さらにすごいのは、無線にも対応していること。安易に無線を使ったらヤバいこの会場で、無線規格をちゃんと調べて使ってしっかりと動くデモで対応しているところもすごいなと思いました。移動してきて、設営して、2日間ずっと動く……これはギャル電的にはものすごく尊いことです(ギャル電)

これは、去年も出展されていたKatalystさんの「カタ破りな型成形技術」です。でこんな風につなげられるチェーンを型成形で作っているんですよ。3Dプリンターで出すと時間もかかって大変だけど、型ならどんどんいける。そういう可能性を追求していて、楽しいプロジェクトです(ギャル電)

「Math Games」(Ryo Museum of Mathmatics)は小学生がやっているプロジェクトで、これは素数を並び替えるパズルの展示。指の動きが速くて写真がブレてしまってます(笑)(久保田)/いわゆるスライドパズルをペットボトルキャップで再現しているんですよね。高速な動きも含めて魅せてくれました(石川)

「粒で作るフードプリンティングプロジェクト」(さつまラボ)は、水中でRGBの水滴を混ぜる装置を作っていました(久保田)/人工いくらみたいなゲル状の粒ができる調理法を応用しているみたいで、ああいう粒を滴下します。超音波で浮かして移動させているんですよね。接近すると、色が混ざる。今はこれは一粒ずつだけど、どんどん滴下できるようになると3Dプリンターみたいなフードプリンターができるのではないか、と(石川)/色も混ぜられるから、フルカラーでできる。これ、合体してポトンと落ちる瞬間がめちゃめちゃ気持ちいい(ギャル電)

ビー玉を転がす「メカニックスライダー」(デジタルファブリケーション同好会 Fabri.)を展示していた人たちは、装置の一部にこんなカメラの絞りの機構を作っていましたね(久保田)

こっちは、僕の趣味的な写真です。でもこれじゃ、わからないな(笑)。これ、倒れないロボット(「マニピュレータ付Wheeled-bipedalロボット」)なのですが、マキタのバッテリを使っていて、しかもそれが揺れてバランスを取る(久保田)/しかもこのチーム(さめはと)は、ロボットのデザインがとてもよかったです(ギャル電)

これも同じチーム(さめはと)のロボットで、ディファレンシャルギアの仕組みを使って新しい機構ができないか、タイヤが回転することと回ることを差動によってコントロールしようとしています。動きも面白い(久保田)/見たことがない機構でしたね(石川)

これは「3次元倒立振子」(Teruru)で、制御によって立方体が頂点で立っています(久保田)/面の部分の円に見えている部分では、おもりがぎゅーんと回っているんです。それでバランスを取っています(石川)

後半は駆け足になってしまったが、それでも紹介しきれないスナップはまだまだあった。しかし、残念ながらここで時間切れ。Maker Faire Tokyo 2023の閉幕時間が迫ってきているのだ。

アップデート、進化した作品に来年も会いたい!

ステージは、各審査員からの感想が語られて締められた。

大村:どのメイカーさんもすごい作品ばかりでした。審査は本当に、目が回るような体験でした。「1つだけなんて選べないよ」と悩みに悩んだ審査でしたし、セメダイン株式会社としても、こんなすごい作品やプロジェクトを接着の技術でお手伝いできていけたらうれしく思います。

太田:この2日間の盛況ぶりは本当に久しぶりのことで、本当に楽しんだ2日間でした。今回出展したYoung Makerのうちでは、残念ながら賞にもれた方が多くいました。けれど、来年以降はMaker Faire Tokyoを2019年の規模に戻していただき、さらに多くのいろんな人が参加できるMaker Faireにしていってもらいたいと思っています。また来年を楽しみにしています。

ギャル電:チャレンジに参加されたみなさん、本当にお疲れさまでした。今年は去年よりもさらに作品のジャンルが増え、異種格闘技みたいにそれぞれに違うよさを味わえた気がします。そこで選んでいくのは毎年ツラいんですが、みなさんがモチベーション高く、自分がやりたい、欲しい、作りたいと明確な思いでものづくりをしている人が増えていることを実感できました。それと、2年連続で審査員をやらせてもらっていると、去年も出ていて今年もという方がいて、アップデートや進化、さらに自分の興味の掘り下げといった成長も手に取るように見えるんですね。ギャル電はみなさんの親戚のおばちゃんみたいな気持ちで見守っています(笑)。

石川:ギャル電が言うように1年間ですごく成長したという方もいれば、Young Makerから育ってこのコンテストの対象外になって今年も出展されている方もいるんですよね。そういうYoung Makerからの巣立ちや成長を思うと、僕の胸も熱くなります。今年もよい作品ばかりで大いに迷ったのですが、作品には、技術的にすごいもの、デザインがいいもの、触って気持ちのいいもの、作った人の情熱がすごいものといろいろあります。評価軸を一本に絞れないのも、このコンテストの特徴かと思います。もうあまり時間はないですけれど、この後は時間の許すかぎりお互いの作品を見合って欲しいな、と思います。そしてお互いの話を聞いてみてください。僕らも会場を回りながら、熱心にな説明を聞くことがうれしいし、楽しいし、刺激になりました。そういう刺激を、この場にいるみなさんも受け合って欲しいと思います。

久保田:僕はみなさんの感想にうなずきながらも、Maker Faireは基本的にこうした賞を目的にしたり、賞を目指したりするイベントではないということを思い返しています。ですから、今日賞を受賞した人は「次も獲ろう」とは思わずに、そうじゃなかった人も「次は獲るぞ」とは思わずに、好きなことをやり続けてもらいたいと思います。じゃあ、この賞は何なのか? でも実際に、この世の中に「賞」はたくさんあって、「賞」がなくなったりもしないわけですね。今回は審査をしながら、賞の持つ意味やなくならない理由を考えていたのですが、これも応援の一手段なのかもしれません。来年以降も、Maker Faireとこの賞の存在、両方を考えながら、両方を盛り上げていきたいと思っています。みなさん、本日はありがとうございました。

今年もMaker Faire Tokyoの締めくくりとなった「Young Maker Challenge 2023」コンテスト表彰式。審査員の各作品へのコメントをたくさん聞くことができた表彰式は、Young Makerブースと学生メイカーのみならず、Maker Faire Tokyo 2023全体を振り返り、すべての出展メイカーと来場者に刺激と励ましを与えるくれるものになったようだ。メイカーのみなさん、来年も東京ビッグサイトでお目にかかりましょう!