2025.10.22
「ありえないものを走らせる」というアイデアから生まれた、公道も走れる“世界最速の(?)”「こたつ型モビリティ」
こたつが走ると聞いて、どういうものを想像するだろうか。高橋氏とクリス氏のユニット「高橋クリス」が展示したのはモーターと車輪で移動するこたつである。ナンバーを取得しており、公道を走れるようにしたのがキモだという。
ありえないものを走らせるというアイデアは、イギリスのエド・チャイナ氏から来ているという。チャイナ氏は家具などを走らせるプロジェクトを数々成功させており、たとえばソファを時速148キロで走らせてギネス世界記録に認定されている。そこで考えたのが、チャイナ氏がまだ取り組んでいないものを走らせること。特に公道を走れるようにすることを目標に据えた。
日本的なモチーフならエド・チャイナ氏が目をつけていなさそうだ、と考えて行き着いたのがこたつである。寒い日にこたつに入ったまま外に出たいという理由づけもぴったりくる。しかし公道を走らせることはできるだろうか。
公道を走れる車両の規格を調べたが、ちょうどよいものがない。実現は難しいと考えていた中、2023年の道路交通法の改正によって「特定小型原動機付自転車」という車両区分が新設された。都心で見かける、レンタルの電動キックボードも特定小型原動機付自転車である。免許は不要でヘルメットは努力義務、最高時速は20キロと定められている。これならいけると製作を決めた。
購入したミニこたつは幅60センチ。特定小型原動機付自転車の幅も60センチまでで偶然ぴったりだった。本体はアルミフレームで組み上げ、車両に必要となるヘッドライト、テールライト、ウィンカーなどを装備。クラクションは自転車用のベルで、これでも法的には問題ないそうだ。こたつとモーターの電力はキャンプなどで使うポータブル電源でまかなっている。
ナンバーは書類を市役所に届ければその場で交付される。車両の現物を見せたりはしないという。このこたつを見せられた担当者がもしいたらどんな反応をしただろうか。
正面から見たところ。こたつにはみかんと、展示向けの非常停止装置が載っている
こたつの中にはバイクと同じハンドルがある。右のハンドルの親指部分にあるボタンを押すと発進し、ボタンから指を離せば停止する。
こたつの内部。ウィンカーやベルもここで操作する
こたつを運転させてもらった。走行ボタンを押すとすっとスムーズに動き出し、ボタンの押し込み具合で速度が変わる。試乗向けに出力を落とし、速度が出すぎないようにしているとのこと。ハンドル操作への反応もよい。回転半径は想像より小さく、ほぼその場でぐるぐる回ることもできる。この日は最高気温が28度と季節外れの陽気でこたつはオフだったが、寒くなればハンドルがこたつ内にあることも相まって暖かなクルージングが楽しめそうだ。
冒頭で紹介したエド・チャイナ氏は、移動する家具などでさまざまな世界記録に認定されている。しかし「世界最速のこたつ」の記録はまだ持っていないはずだ。このこたつは今ならきっと、時速20キロでも世界記録を狙えることだろう。