2014.01.14
AfiniaがStratasysに反論「Stratasysの特許は無効であり脅しは競争を阻害する」
Afiniaは、Stratasysが侵害を主張している4つの特許について、すべて無効だと反論した。
昨年の11月、3Dプリント企業、StratasysがMicroboards Technology, LLCを訴えた(Microboards Technologyは人気デスクトップ3Dプリンター、Afiniaの販売会社)。これが、老舗の業務用3Dプリント企業が新参のデスクトップ3Dプリンターのメーカーを訴える2つ目の事例である以上に、この訴訟問題には、すべてのデスクトップ3DプリンターがStratasysの特許を侵害している恐れがあるという点で関心をひく。もしそれが本当だとなれば、大事になる。
最初の申し立ての内容は、この記事に要約した。今回は、Afiniaの反論について解説しよう。
Afinia の反論
画像提供:Flickrメンバー、jabella
Stratasysの申し立てもそうだが、Afiniaの反論についても、よく警戒して見なければならない。Afiniaはこの反論を、Afiniaに都合のいいように弁護士に書かせている。だからって、書かれている内容がすべて疑わしいということにはならないが、都合のよい話を差し引いて、ひとつひとつを慎重に見ていく必要がある。前回はStratasysの訴えを詳しく分析したが、今回はAfiniaの反論について、なるべく文字どおりの内容を解説しよう。
端的に言えば、Stratasysが侵害していると主張する4つの特許すべてに対して、Afiniaが反論したということだ。これは単に、Afiniaがそれらの特許を侵害していないと裁判所に認めてもらえば済むという問題ではない(Afiniaとしてはそれで済まそうとしているだろうが)。Afiniaはさらに、Stratasysの特許が完全に無効であることを認めさせようとしている。これは、Stratasysが他の特許を持ち出して侵害していると訴えてくることを阻止するためだ。Afiniaの都合で考えれば、Stratasysの特許は無効だ。Afiniaはまた、Stratasysがこの訴訟と特許を利用して、3Dプリンター市場を独占しようとしていると非難している。
925号特許
925号とその他の問題とされている特許の概要については、Stratasysの申し立ての要約を参考にしてほしい。925号特許は、プリントされるオブジェウトの内側のインフィルの制御に関するものだとされている。Afiniaがこれにどう反論しているかを理解するために、特許出願のプロセスについて知っておく必要がある。
いろいろな点で、特許の出願は協議の口火を切ることになる。申請者が特許を出願する。特許商標局の審査官がそれを審査し、過去に同じ特許が出願されていないかを確認する。あれば、今回出願された発明は新しいものではないとわかる(そのため特許は取れない)。過去に同様の発明の特許が認可されている場合は、出願内容を訂正し、過去の発明との違いを明確にして、その違いについて審査官に説明することになる。このやりとりを、書面で何度か繰り返す(納得いくまで繰り返せるかは別だ)。
Afiniaは、このやりとりの記録から、Stratasysが特許を取得するために、どのように範囲を絞っていったかを探った。そしてAfiniaは、925号で絞り込まれた部分は、もうAfiniaのプリンターでは使われていないと指摘した。この絞り込みは、それ以前にあった5,490,962号および5,518,680号と区別するために必要だった。Afiniaは、特に680号のほうに注目している。さらに、5,121,329号には、Stratasys が925号で主張している技術がすでに含まれていると指摘している。
Afiniaは、925号の侵害に対する反論を、Stratasysがこの特許を使って3Dプリント市場を独占しようとしていると非難して締めくくっている。これは、他の特許侵害への反論にも同様に盛り込まれている。
058号特許
058号特許は、ほとんどのデスクトップ3Dプリンターに使われている過熱式のビルドプラットフォームに関わるものとされている。これに対する反論として、Afiniaは、その特許に含まれる非常に細かい部分を指摘している。925号もそうだが、その多くは、先の特許と区別して特許の認可を得るために絞り込まれた点だ。この特許が守ろうとしている対象は、非常に細かいものになっている。
Afiniaは、058号特許の対象になる「コントロールシステム」と呼ばれる部分は、Afiniaのプリンターには存在しないと主張している。さらに、先に登場した680号のような古い特許に、すでに過熱式のビルドプラットフォームについて語られている。Afiniaは、過熱式ビルドプラットフォームに関わるすべての要素は、058号特許の前から存在していたと主張しているのだ。さらに、Stratasysは、5,501,824号特許に過熱式ビルドプラットフォームに関する記載があることを知りながら、それを特許審査官に伝えていなかったことを追求している。これは一般にひんしゅくものだろう。
124号特許
この特許は、Afiniaのエクストルーダーに関係するとされている。ここでは、Afiniaは、壁の厚さが0.005インチから0.015インチの間のチューブを過熱部に通すという点に注目した。Afiniaでは、その4倍の厚さのチューブを使っているため、特許の侵害には当たらないと主張している。
0.005から0.015という数値的条件が特許の要素を組み合わせた上の解釈から出てきたもので、明示されているものではないという点には、あまり意味がない。特許にこの条件が含まれているかどうかの法廷の判断を左右するものではないが、曖昧なところはハッキリさせるべきだ。
239号特許
239号特許から。
最後が239号特許だ。3Dプリントで採用されている積層方式によって現れてしまうつなぎ目を隠す方法に関わるものだ。
Afiniaは、ここでもStratasysが以前の特許技術との区別を付けようとした点に注目した。その記録から、Afiniaのプリンターとソフトウェアで使われている技術は、239号特許の条件と部分的に一致しないと主張している。とくに、始点と終点がないために、特許の範囲には含まれないというのだ。
Afiniaの反訴
Stratasysの申し立てに反論したAfiniaは、自らも申し立てを行った。最初のひとつは、AfiniaがStratasysのいずれの特許も侵害していないことを法廷に宣言するよう要請するものだ。Afiniaは、この宣言、つまり「宣言的判決」を、Stratasysの直接的な特許侵害の訴えと、二次的侵害の申し立ての両方に対して行うよう求めた。
もうひとつは、3Dプリント業界とコミュニティにとって関わりの深いものだ。Afiniaは法廷に対して、特許そのものが無効であるという宣言的判決を求めたのだ。これは単にAfiniaが訴えられている特許を侵害していないことを証明するだけに止まらず、特許が無効になる。これが認められれば、Stratasysは誰に対しても特許侵害の訴訟を起こせなくなる。
今わかっていること
今わかっている中でもっとも重要なのは、Afiniaがこの訴訟に本気で立ち向かおうという姿勢を見せたことだ。Stratasysの申し立ての概要で説明したとおり、この訴訟問題にはAfiniaの運命を決める以上のものがある。もし、Stratasysの主張が正しいと認められれば、Stratasysの特許技術がほとんどのデスクトップ3Dプリンターに使われていることになり、業界全体をコントロールする力をStratasysが握ることになる。去年、Stratasysがデスクトップ3DプリンターメーカーのMakerBotを買収したこともあり、もしそうなれば、新しいプリンターメーカーの参入は非常に難しくなる。
画像提供:Gizmomaker
Afiniaは法律事務所を雇い、この訴訟と戦おうとしている。過去の特許技術の徹底的な調査に多額の資金を投入しているはずだ。Stratasysとは簡単に和解しないという姿勢だ。裁判で戦うという決意の現れであり、勇気づけられる。
私たちはまた、Afiniaが過去のどの技術に注目しているかもわかっている。これは、より大きな3Dプリント業界やコミュニティが見るべき特許を教えてくれている。Afiniaが示した特許がもっと多くの人の目に触れることで、さらに多くの過去の特許技術が発見されることにつながる。3Dプリンターの操作に詳しい人ならば、上にリンクを示した特許に目を通してほしい。また、Afiniaの反論も見てほしい。特に、82-84、87、90、95、97、109、124の各パラグラフは重要だ。
今はわからないこと
残念なことに、Afiniaがいつまで戦おうとしているのか、どこまで戦えるのかは定かではない。特許侵害訴訟は、膨大な経費のかかる仕事であるため、和解に持ち込まれる可能性は常にある。Afiniaがとことん戦い抜くことを示すものは何もない。どうなるかは誰にもわからない。
画像提供:Outside the Beltway
それよりも、Afiniaの法的な主張がどれほど強いかが問題だ。Stratasysの申し立てだけを見た限りでは、StratasysはAfiniaのプリンターにはStratasysの4つの特許技術が使われているように思えた。そして今、Afiniaの反論を見たところでは、AfiniaのプリンターにはStratasysの特許技術はひとつも使われていないようにも(または特許が無効にも)思える。このあと、両者の主張が吟味される。それによって、すべての人の、特許に対する見識が深まることになればいいと思う。
この訴訟が、3Dプリント業界とコミュニティ全般にどんな影響を与えるのか、まだわからない。私たちは(少なくとも私は)、Stratasysが他の企業に接近し、この特許ポートフォリオをライセンスしたがっているのか、または、勝訴したあかつきには、誰に対してもライセンスしたがっているのかを知るすべがない。他の企業に話が持ち込まれたときに、彼らはどう反応するだろうか。この訴訟には、申し立てられたというだけで、開発者を縮み上がらせるだけの力がある。しかし、それでも開発は進むだろう。なんともフラストレーションが溜まる話だが、いろいろなことがハッキリするまでには、少しばかり時間がかかりそうだ。
いいニュースは、この訴訟問題が起きたところで、何もかもが止まってしまったわけではないということだ。少なくとも今のところは。
この記事はPublic Knowledgeに掲載されたものを、著者の許可を得て転載しました。
– Michael Weinberg
[原文]