2013.03.21
日本を忘れない ─ 素晴らしいオープンソースプロジェクト
Onyx放射線探知機のプロトタイプ。有機EL画面とタッチボタンを装備。
2011年3月11日 — 史上5番目の規模の地震が日本の東北地方を襲い、15,000人以上の人が亡くなり(日本語版編注:厚生労働省の2012年9月の集計では18,877名)、福島第一原子力発電所の3つの原子炉でレベル7のメルトダウンが発生した。放射能への不安が高まり、ガイガーカウンター(放射線量を測る電離放射線探知機)の販売が急騰した。数十年の歴史を持つガイガーカウンターのメーカー、International Medcomなどは、一瞬にして在庫がなくなった。この大災害を受けて、彼らは、集めたデータを共有できるようにと、すべての機材を日本に送ることに決めたのだ。そんな中で作られたグループに、データを集めて無料で公開することを目的としてする非営利団体、Safecastがあった。
Safecast は、なんとか動きを作ろうとオープンソースコミュニティから生まれた善意の好例だ。世界中に散らばった数人の主要な協力者が、できる限りの放射線データを集めようというプロジェクトを立ち上げた。この地震では、興味深い問題が明らかになった。震災前は、大規模なデータが一度も集積されていなかった。なので、震災後のデータを比較する対象がないのだ。
MAKEの仲間でオープンソース推進者のDr. Andrew “bunnie” Huangは、持ち運びが便利でどこでもデータを記録できるガイガーカウンターのリファレンスデザインを提供してくれた。このデバイスは、ガンマ線(もっとも貫通力が高い)、アルファ線、ベータ線と、さまざまな有害な放射線を探知できる大型のセンサー、LND 7317 パンケーキ型ガイガー管、bunnieのデザインの詳細はここで見られる。
Safecast iOSアプリの日本の地図。ここから無料でダウンロード可能。
放射線データ観測ポイントのギャップを埋めるために、Safecastのメンバーは、Tokyo Hackerspaceと共同で、自動車に取り付けられるガイガーカウンターを製作した。MedcomのInspectorをベースに、お弁当箱サイズのペリカンケースに収めたオリジナルのbGeigieは、5秒ごとにデータを集め、SafecastのiOSアプリやウェブマップと見事に連動する。現在のバージョン、Nanoは、これとは異なる電子回路を使い、無線でのデータ転送やGPSをサポートしているため、ユーザーは窓の外に装置を装着して走り回るだけでよい。bGeigieが普及したおかげで、700万以上のデータポイントが収集できた。その数は毎日増えている。
International Medcom, IncのDan Sythe(左)とSafecast JapanのJoe Moross。車に装備したbGeigie Nanoの前で。O’Reillyのメガネザルも横で見ている。
数週間前のことまで話を進めよう。JoeとDanはレーザーカッターとボランティアを探している。SafecastのKickstarterプロジェクトが成功したので、バッカーたちに進呈するOnyxの背面にシリアルナンバーを刻印するためだ。Onyxのプロトタイプを見て、bGeigie NanoとSafecastの話を聞いた私は感銘を受け、ボランティアを申し出た。
Joe MorossがbGeigie Nanoのパーツの機能について、私(左)とMAKEのインターンのNick Parksに説明しているところ。
私は、一度に16枚の背面パネルをレーザーカッターに入れられるように、ボール紙から治具を切り出し、シリアルナンバーを刻印した。Medcomは、完成した装置をKickstarterのバッカーに明日から送り始める。また、4月からは一般の販売を開始する。
このような重要なプロジェクトの一員になれて、私はうれしく思う。できる限り支援を続けていきたい。放射線データの回収装置の開発が恩恵をもたらすのは、将来のことだ。これが普及すれば、価格も安くなる。データポイントも増えて、市民科学も発展するだろう。そしてなにより、次の災害の備えになる(絶対に起きてほしくはないが)。
Epilog Laserにセットされ、刻印を待つ背面パネル。Onyxに関する詳細と予約はこちらをどうぞ。OnyxとbGeigie Nanoキットの売り上げの一部は、Safecastの地図インフラの整備に使われる。
– Eric Weinhoffer
[原文]