Fabrication

2014.12.15

3Dプリンター知的所有権訴訟の最新情報:Formlabsが3D Systemsにロイヤリティを支払うことに

Text by kanai

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FormlabsのForm1は現在も購入することができる。

長く続いていた3D SystemsとFormlabsの特許侵害訴訟が終結したというニュースが流れた。双方が和解し、すべての訴えと、反訴を取り下げ、裁判費用を各社が負担するということになった。さらに、Formlabsは売り上げの8パーセントをロイヤリティとして3D Systemsに支払うことを決めた。この展開は、初期のデスクトップ3Dプリンターにおける大きな訴訟問題が片付いたわけだが、疑問も残る。

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そもそもの訴訟

2012年の今ごろ、大手3Dプリントの老舗である3D Systemsが、当時は3Dプリンターのスタートアップであり、まだkickstarterのオーダーも出荷しきれていない状態であったFormlabsを訴えた。これは、デスクトップ3Dプリンター業界における最初の特許訴訟となり、大手3Dプリンターメーカーがデスクトッププリンターの製造業者を訴えるという初めてのケースとなった。

最初の訴訟について書かれたこの記事で考察されているように、この訴訟にはいくつもの疑問点があった。その翌年に起こされたStratasysとAfiniaの訴訟とは違い、3D SystemsのFormlabsに対する訴訟は他のデスクトッププリンターに直接の影響を与えるものではなかった。Formlabsのプリンターの核心的な部分は、他の一般的なデスクトッププリンターとは異なるものだったからだ。しかし疑問が残る。Formlabsは3D Systemsの特許を回避する方法を見つけたのだろうか。もしそうなら、訴訟に対抗できたはずだ。もしそうでないなら、3D Systemsがその特許ポートフォリオを使ってその次世代の3Dプリント技術を抑え込もうとするのか、または自ら市場に参入するのだろうか。それともこれは、Formlabsの価値を下げて買収するための3D Systemsの作戦なのだろうか。

様子を見よう

南カリフォルニアで最初の訴訟が起こされたあと、公的にはあまり動きはなかった。双方とも押したり引いたりで、法廷に延長を求めたり、それに応じたりしてきた。双方が和解の話し合いをするための延長ということもあった。

2013年11月、3D Systemsは、FormlabsとKickstarter(そう、この時点ではKickstarter もこの訴訟に巻き込まれていたのだ。これはKickstarter利用者にとって重大な事件になる恐れがあったが、それほどの事態にはならなかったので今は触れないこととする)に対する訴訟を自ら取り下げニューヨーク南部地裁に対して修正訴状を提出したのだ。この修正訴状には異なる特許が含まれていたが、主旨は変わらない。今のところ、特筆すべき事態には至っていない。

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今回、もうひとつ注目すべき展開として、ドキュメンタリーのカメラクルーが入ったことが挙げられる。彼らはその記録を撮影し、3Dプリントのドキュメンタリー『Print the Legend』としてまとめあげた。この番組の中心になるのが、3D SystemsとFormlabsとの訴訟問題だ。3D SystemsのCEO、Avi ReichentalとFormlabsのCEO、Max Lobovskyとのやりとりも含まれている。そのなかでもっとも興味深かったのは、Avi Reichentalがカメラに向かってこう説明したことだ。この訴訟によって3D Systemsは知的所有権について考え直すことになり、新しい手を打つことになると。残念ながら、ドキュメンタリーはその後のことについては触れていない。また3D Systemsも新しい手についてはほとんど発表していない。知的所有権について考え直すとは、どういう意味なのだろうか。それが今回の訴訟や3Dプリント業界全体にどんな影響を及ぼすことになるのだろうか。まだわからない。

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和解

和解によってすべての疑問が解消されたならよかったのだが、そうはならなかった。和解の覚書は3ページに及ぶが(そのほとんどは見出しとサインと空白) 、情報量は少ない。双方は訴訟を取り下げ、それぞれの裁判費用は自己負担とするというものだ。Formlabsにも3D Systemsにも、これに関して広報資料を出すなり、ブログ記事を書くといった気配はない。

だがこの和解の覚書は、3D Systemsが証券取引委員会に届け出たことによって密かに増補されていた。それによると、3D Systemsは、Formlabsに対して訴訟に含まれていた特許の使用を、「一定期間、製品の総売上の8.0パーセント」を支払うことで許諾するということだ。この届け出では、対象となる製品や有効期間については説明されていない。

この和解と届け出は、いくつかの疑問に答えているが、他の疑問はそのままだ。なかでもいちばん気になるのは、今回のケースで、3D SystemsはFormlabsに対してどれほど強かったのかだ。3D Sysytemsに有利で、Formlabsは勝ち目がないとわかったから和解したとも考えられる。逆に、3D Systemsが不利だったのだが、不利であることを公表されたくなかったので和解に持ち込んだとも考えられる。

これが、3D Systemsの新しい知的所有権戦略の一部であるかどうかも不明だ。3D Systemsの特許は強いので、その新しい(秘密の)戦略に基づいてFormlabsに特許技術をライセンスすることに決めたのかも知れない。または3D Systemsの特許が弱いので、Formlabsに対する保険の意味で安価なライセンスを申し出たのかも知れない。安くはないが会社が傾くほどではない8パーセントというライセンス料と3D Systemsが新しい知的所有権戦略を打つ出す可能性の組み合わせにより、この和解の先が読みにくくなった。

不確かではあるが、わかったこともある。Formlabsは、今回の訴訟の結果を受けてすぐには廃業しないということだ。同様に、Formlabsは3D Systemsに買収されることもない。3D SystemsもFormlabsも、今度の新しいパートナーシップについて、または合弁事業について発表はしていない。3D Systemsは、この和解にからめて新しい知的所有権戦略を打つ出すこともなかった。

今後のこと

もちろん、発表がないからと言って、そうした動きが起こっていない、または近い将来起こらないとは限らない。しかし、発表がないことは確かで、ロイヤリティの割合だけ発表されても、何の意味もない。

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来月、Consumer Electronics Show(CES)が開催される。そこで、3D SystemsとFormlabsがどのように訴訟から遠ざかるのが示されるかも知れない(されないかも知れない)。Formlabsと3D Systemsは新しいものを出すのだろうか。3D SystemsはFormlabsと直接対決するようなデスクトッププリンターを投入してくるのだろうか。3D Systemsは新しい知的所有権戦略を発表するのだろか。

それとも何も起きずに、我々の疑問は残されたままになるのだろうか。

– Michael Weinberg

原文