2014.02.21
faBricator:3Dプリントとレゴで高速プロトタイピング
faBrickatorソフトウェアか、すべてのパーツを3Dプリントか、時間節約の方法。
3Dプリントは、レーザーカットやCNC加工などの他のタイプの高速プロトタイピングと比較して時間がかかる。とくに、数多くのイテレーションが必要な場合は遅い。その問題を解決する目的で開発が進められているfaBrickationは、3Dモデルをレゴのブロックと特殊な3Dパーツとに変換して、プリント、組み立て、変更を短時間に行えるようにする、オープンソース化を前提としたプロジェクトだ。私はプロジェクトリーダーのStefanie Muellerに会い、faBrickationの利点と応用について話を聞いた。
– Anna Kaziunas France
faBrickationとは何か、どのように使うのかを教えてください。
faBrickationは、3Dプリントを使った高速プロトタイピングをスピードアップさせるための新しいアプローチです。鍵となるアイデアは、高解像度を必要とする主要なパーツだけをプリントして、あとは普通にあるブロック玩具を使うという点にあります。私たちの場合はレゴを使いました。たとえば、ヘッドマウントディスプレイの本体を作ったときは、光の通り道を正確にすることが最重要課題でした。
faBrickatorでは、ユーザーが、レンズのマウントを「高解像度」にして、あとで3Dプリントするように指定できます。するとfaBrickatorは、そのパーツを3Dプリント用に書き出し、その他の部分をレゴで組み立てる方法を提示します。その結果、faBrickatedのヘッドマウントディスプレイは、全体を3Dプリントした場合の14.30時間に対して、67分で作れました。イテレーションでは、変更箇所だけをプリントすれば済むので、さらに効果を発揮します。たとえば、もっと着け心地のヘッドピースが欲しいと思えば、それだけをプリントして、レゴのブロックと入れ替えればいいんです。
ヘッドマウントディスプレイをfaBrickatorで作る
完成したfaBrickatorのヘッドマウントディスプレイ。
あなた自身と、チームのことを聞かせてください。
私はハッソ・プラットナー・インスティテュートのHuman Computer Interaction Labの博士課程に在籍しています。アドバイザーのPatrick Baudischと共同で開発しています。たくさんの学部生や院生たちと密に共同作業ができるので、とてもラッキーな環境です。その中には、プロジェクトの共同開発者であるTobias Mohr、Kerstin Guenther、Johannes Frohnhofenも含まれています。彼らは、私たちのアイデアを実際のソフトウェアやハードウェアプロトタイプに実体化する手助けをしてくれています。このプロジェクトには、非常に多くの工学系学生が関わってくれるので、とても幸せに思っています。
faBrickatorを作ろうと思ったきっかけは?
3Dプリンターは大変に優れたラピッドプロトタイピングツールですが、遅いという欠点もあります(たとえば写真のヘッドマウントディスプレイ全体をプリントしようとすると14時間かかる)。スピードは大変に重要です。一晩でプリントできると言っても、それでは1日1回しかリテレーションできません。そのため、プロトタイプを洗練するために必要な標準的なリテレーションの回数から計算すると、1週間は軽く超えてしまいます。実際のデザイン作業には1日もかからないとしてもです。結果として、現在の一般的デザインワークフローの中では、3Dプリントがボトルネックになっているのです。
3Dプリントする必要のあるカスタムパーツだけを選択する。
経験豊富なデザイナーは、製造技術と既存の物をうまく取り混ぜてこの問題に対処しています。ただしそれを行うには、かなりの想像力と経験が必要とされます。そこで私たちは、どの部分を3Dプリントして、どこをレゴで作るかをデザイナーに指定してもらうという方法で、この問題を解決しようと考えました。リテレーションには大変に向いています。もっとも、実際に人に見せるときなど、部分的に「レゴ化(LEGOFY)」されたオブジェクトは、いずれ全体を3Dプリントしなければならないときが来るのですが。
こうしたデザインや製造方法の可能性は?
faBrickationのメインターゲットは、外的な条件に左右されるハードウェアのプロトタイプを行うデザイナーです。外的な条件とは、顧客の需要の変化とか機能の変更の要求などです。これには、さらなるイテレーションが何度も必要になります。そうした状況では、faBrickatorは大幅な時間の節約ができます。faBrickatorは最初のプロトタイプですでに時間を短縮していますが、その後に続く部分的なイテレーションでは、さらに時間を節約できます。全体をプリントし直すことなく、変更部分だけをプリントすればいいからです。一晩かけてプリントする必要がないので、1日にいくつものイテレーションが可能です。
概念実証:コイン投石機、石けんホルダー、ヘッドマウントディスプレイ
faBrickatorの限界は?
faBrickatorは、動くオブジェクトに適しています。一定の形状があり、その中の限られた部分だけが動くような、特定の動作を目的としたオブジェクトです(石けんホルダーやコイン投石機を見てください)。ひとつの機能をいろいろな形で組み込めるため、faBrickatorでは、いちばん早く作れる方法を選ぶことができます。そこがfaBrickatorのもっとも大きな利点です。しかしこれは、アート作品や装飾品など、全体的な形状が問題となる場合にはあまりメリットがありません。
私もレゴ化してみたいです。どうしたらfaBrickatorが使えますか?
今あるのは、ビデオの撮影に使ったごく初期のアルファバージョンだけでです。現在は、5月に開かれるCHIカンファレンスでデモができるように、faBrickationシステムの仕上げにかかっています。同時に、『faBrickation: 組み立てキット、ブロック玩具を併用する動くオブジェクトのための高速3Dプリント』という論文のプレゼンテーションを行います。このカンファレンスの後に、GitHubでオープンソースソフトウェアとして公開します。
– Anna Kaziunas France and Stefanie Mueller
[原文]