Electronics

2014.04.28

TIのSensorTagがiBeacon対応に

Text by kanai

The SensorTag is a Bluetooth Low Energy development kit targeted at iOS developers.
SensorTagはiOSデベロッパー向けのBluetooth LE開発キットだ。

TI SensorTagの記事(英語)は前にも書いたが、これはBluetoothアクセサリーのプロトタイピングを行うスマートフォン用アクセサリーの開発者の生活を、うんと楽にしてくれるハードウェアだ。今でこそ、MetaWearのような類似の、より柔軟性の高いボードが現れるようになったが、SensorTagはその元祖であり、とくに価格面で非常にパワフルなハードだ。SensorTagには、赤外線温度センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、湿度センサー、圧力センサー、磁気センサーという6つのMEMSセンサーが搭載されている。すべてのセンサーは、SensorTagアプリから、または自分で書いたコードから、Bluetooth LEを通して個別にコントロールできる。

だが、TIはこれで満足しているわけではない。今回、TIは、SensorTagのiBeaconへの対応と、SensorTagが使っているものと同じCC2541チップを利用した他のTIリファレンスデザインへのiBeacon機能の対応を発表した。さらに、CC2541の低価格版でビーコンとブロードキャストに最適化した新しいCC2543にも対応する。

iBeacon とは何か?

iBeaconは、現実世界のコンテキストをスマートホンのアプリに追加する技術だ。Bluetooth LEを中心に、一部Bluetooth 4.0規格を採り入れ、屋内のナビゲーションを実現する。iBeaconはiOS 7に統合され、Core LocationPasskitという2つのフレームワークに組み込むことで屋内マイクロロケーションとジオフェンシングを実現する。

iBeaconはビーコンの識別に次の3つの属性を使う。

  • UUID — 企業ごとに一意な属性。企業(またはグループ)が発するすべてのビーコンに同一のUUIDが割り当てられる。
  • Major — 関連するビーコンのセットを識別するための属性。たとえば、小売店で使用する場合は、ひとつの店舗に同じMajor値が与えられる。
  • Minor — その場所の特定のビーコンを識別するための属性。

これらが組み合わさって、ひとつの地域に関連付けられた一意のビーコン識別子が構成される。ただし、iBeaconは実際には位置ではなく距離を見ている。iPhone(今はAndroidスマートフォンにも対応しているが)は、iBeaconのある場所に近づいたり、そこから離れたりしたときにアプリにアラートを出す。iBeaconまでの距離をレポートすることもできる。ただ、距離の算定はiBeaconに近づくほど正確になる。これには、信号の強度と電波の干渉という2つの要素が関係している。電波の強さは信頼できるが、干渉は信頼できない。しかもそれは時間とともに変化する。そのため、ビーコンを使って一定の距離に近づいたことをアプリに知らせる分には信頼できるが、正確な距離を求めることは難しい。

SensorTagのiBeacon

今回の発表があっても、SensorTagは普通に使えるが、新しいSensorTagアプリを使ってiBeaconとして設定することも可能だ。tagのボタンをどれかひとつ押せば、それはiBeaconモードになる。

デフォルトのポーリングタイム(100ms)で使用した場合、SensorTagのバッテリーはビーコンモードで2〜3カ月持つ。もっと遅いポーリングタイム(SensorTagアプリで変更可能)で動作できるアプリケーションならば、少なくとも理論上は1年ほど持つことになり、バッテリー寿命はほとんど問題ではなくなる。

基本的なセキュリティ機能もある。UUID、Major、Minorでビーコンの特性を設定するためにはPINコードが必要になる。これは、無線で設定ができるiBeaconには最低限のセキュリティだ。それがあっても、今年の初めにEstimoteビーコンを見たときにも明かだったが、UUID、Major、Minorというビーコンの一意の識別子となるiBeaconの信号は周囲にブロードキャストされるものであり、簡単に模倣できてしまうので、iBeaconsは何にでも適しているというわけではない

The new SensorTag location app running on the iPad showing your location.
iPadで自分の位置がわかる新しいSensorTagのポジショニングアプリ。

新しいファームウエアといっしょに、iPhoneとiPad用の新しいポジショニングアプリも登場した。このアプリは、任意のフロア図をアップロードして、SensorTagをその仮想空間に“配置”することで、実質的に屋内ポジショニングシステムが作れる。そして、SensorTagに近づくと特定のURLが開くように設定できる。

iBeacon技術を使った新しいSensorTagロケーションアプリは、App Storeからダウンロードできる(iPhone、iPad、iPod touch用)。フロア図をアップロードしてSensorTagを配置すれば、簡単に屋内ポジショニングシステムが作れる。このアプリは、SensorTagにある程度以上近づくとフィードバックを送り、SensorTagに十分に近づいたときにユーザーが指定したURLを表示させることができる。

私は、今日の発表に先だって、SensorTagの開発者、Jarle Boeに話を聞いた。BoeもTIも、iBeacon技術を小売店向けだけに限定するつもりはないようだ。

私たちは、あらゆるタイプのBluetooth LE製品に(iBeaconが)組み込まれているのを見てきました。もともとターゲットとしていた小売店やレストランだけでなく、アラームシステムや照明などにも使われています。自分の位置を利用して電話の使い方を変えるアイデアには可能性があります。 — Jarle Boe(TI)

新しくなったSensorTagsは、TI storeで、25ドルで買える。すでにSensorTagを持っている人は、新しいSensorTagアプリを使って、iBeacon対応にファームウェアを更新できる。

– Alasdair Allan

(日本語の情報:CC2541 SensorTag 開発キット

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