Electronics

2016.03.04

Eben Upton(Raspberry Pi財団創設者)に聞いたRaspberry Pi 3

Text by Alasdair AllanTranslated by kanai

私たちは、Raspberry Pi財団創設者のEben Uptonに会い、Raspberry Pi 3、Model Bについて、それがRaspberry Piプラットフォーム、Raspberry Piの競争相手、この4年間で成長してきた巨大なコミュニティの未来になにをもたらすのかを聞いてみた。

「今日は私たちの4回目の誕生日です。私たちは800万ユニットを販売しました。ここに 新しいRaspberry Piを紹介します」 — Eben Upton(Raspberry Pi財団創設者)

Raspberry Pi 3は、財団としては初の64ビットプロセッサーを搭載したボードで、Wi-FiとBluetoothを内蔵した初のボードでもある。価格は35ドル。Raspberry Pi 2と同じ値段だ。

Raspbianの未来

The Raspberry Pi 3, Model B

財団は今でも、ひとつの統一されたRaspbianコードベースを出荷している。これはすべてのRaspberry Piプラットフォームで使えるものだ。つまり彼らは、新しい64ビットのプロセッサーを、「単に高速な32ビットコア」と考えているということだ。今すぐに64ビット版のRaspbianを作れば儲かりそうなところだが、Uptonは下位互換性が保たれないことで生じる不利益のほうを重視している。だからといって、それが無駄になるわけではない。

「これは64ビットコアですが、最初は32ビットコードばかりを走らせていました。今でもRaspbianを走らせています。これは私たちのARMv6オペレーティングシステムです。64ビット化することの恩恵はいろいろありますが、なかでも(Raspberry Pi で使える)オペレーティングシステムの幅が広がることでしょう」 — Eben Upton

Raspberry Pi財団の教育的な使命を忘れている人も多いだろう。すでに800万台も普及しているRaspberry Piとの下位互換性も重要だ。学校の教室でコンピューターを扱うとき、すべての学習素材が一晩で時代遅れになってしまうようでは困る。

「……私たちは営利を求めていません。子どもたちにプログラミングを教えることが目的なのです」 — Eben Upton

しかし、学校の外の我々もRaspberry Pi 3の64ビットの能力を使えないというわけではないが、財団がそれを提供してくれることを期待してはいけない。Raspberry PiにはすでにAndroidポートがある。むしろ、最新のAndroidディストリビューションの完全なポートを期待するべきだろう。個人的には、Google Summer of Codeあたりで出てこないだろうか。誰か、どうだろう?

デスクトップに置き換え可能

Raspberry-Pi-3-Booting-small

新しいRaspberry Piは、Raspberry Pi 2の50パーセント高速で、オリジナルのRaspberry Piの10倍の速さを誇る。

「この 50〜60パーセントによって、私たちはある一線を越えました。より信頼性の高いPCの代替機となるのです」 — Eben Upton

私が見るかぎりでは、この高速化によって、新しいRaspberry Piは一線を越え、デスクトップコンピューターとして使えるようになったと思う。少なくとも、ほとんどのユーザーが日常使う上では問題ない。Pi 3のBluetooth機能によって、すでに一般的になったBluetoothキーボードとマウスも使えるようになる。

Ethernetに関する疑問

大きな不満のひとつに、Raspberry PiへのEthernetの実装方法がある。LAN9154を使って、EthernetのトラフィックはUSBバスを通るようになっている。これは新型になっても変わらなかった。だがUptonは何度も繰り返し話しているが、問題視はしていないという。

「100メガビットのインターフェイスで下りが480メガビット。なぜそれで困るのかがわかりません」 — Eben Upton

ということなので、ギガビットEthernetを期待しているのなら、802.11n無線を使ったほうがいい。コンピューターも進化している。最近のApple MacBookを使っている人なら、Ethernetポートなど使っていないはずだ。それに慣れる必要があるかもしれない。Raspberry PiがギガビットEthernetに対応する日は遠そうだからだ。

IoTのためのRaspberry Pi

RaspPi3-101

Raspberry Piは、IoTのためのハブに使われることが多くなってきている。

「Raspberry PiをIoTのハブとして使う人がもっと増えることを期待しています。ここにあるRaspberry Piが、有線のEthernetかWi-Fiでネットワークにつながれば、(普通なら)BLEセンサーのクラウドに囲まれることになります」— Eben Upton

少なくともほとんどの人の場合、電源ケーブルはあってもネットワークの回線が来ていないことが多い。だから、Wi-FiとBluetooth(特にBluetooth LE)の追加は、Raspberry Piというプラットフォームを、よりIoTにとって使いやすいものにしてくれる。

「私が(ソフトウェアエンジニアとして)ほんとうに驚いたのは、(Raspberry Pi)の用途でエキサイティングなのは、フィジカルコンピューティング(ハッキング)プロジェクトだということでした。子どもたちが、既存のIoTタイプのプロジェクトを好むことを、私たちは知っていました。接続性を高めることが、想像以上に価値のあることだとも気がついていました」 — Eben Upton

このチップセットから見るに、Raspberry Piはアクセスポイントとして、またクライアントモードとして同時に行えるはずだ。言い換えれば、無線ネットワークに接続してインターネットにつなげられるのと同時に、センサーのクラウドを構成する別のネットワークのアクセスポイントにもなるということだ。どちらも、ファイヤーウォールでセンサーネットワークを、コンピューター、ゲームマシン、人間のオリジナルのネットワークとをしっかりと切り離すことができる。

寿命?

Raspberry Pi 3の登場で、他のRaspberry Piが手に入らなくなるのではないかと心配する人もいるだろう。とくにオリジナルのRaspberry Pi Model Bが心配だ。

「止めることはありません。Raspberry Pi Model Bが欲しいという人がいるかぎり、私たちは作りつづけます。しかし、みんながModel Bをいつまで欲しがってくれるか、正直なところ、私にはわかりません」— Eben Upton

生産は止めないとのことだが、Raspberry Pi財団は、もう使わないようにと促すことはあり得る。

「Pi 2 Model Bは生産を続けますが、価格は変わりません。なので、急速にPi 3への移行が進むだろうと考えています」 — Eben Upton

Model B+が25ドルで販売されている今、長い目で見ると、Raspberry Pi Model B+は、人々がRaspberry Pi 3に移行する中で、より新しいRaspberry Pi 2を無用の産物にしてしまいそうだ。

Raspberry Pi 3 の供給問題

IMG_6951

ウェールズの工場のRaspberry Piの生産能力は、Raspberry Pi 3にシフトしている。これはここ数週間の傾向だ。それは数カ月先まで続くだろう。

Uptonは、Raspberry Pi 3には、Raspberry Pi Zeroで人々を悩ませているような供給の問題はないと考えているが、パイプラインが強力になっているので、起きたとしても一時的なものだという。

「工場は1週間に10万台を生産できます。需要には十分に応えられます」— Eben Upton

だが、いまだにRaspberry Pi Zeroが届くのを待っている人は、もう少し待たされることを覚悟すべきだろう。Pi Zeroをなんとかぎりぎり作れたとしても、今月と来月ぐらいまでは5ドルコンピューターのために割く力はないはずだ。

さらに新型ボード

財団は何も話してはいないが、我々は今日の発表にともなって、あと2つの新しいボードが間もなく登場するということを知った。

「Raspberry Pi 3 Model AとRaspberry Pi Compute Module 3です」 — Eben Upton

Raspberry Pi Model A+は、現在20ドルで売られている。Raspberry Pi 3 Model Aが現れても、それが25ドルだとしても、その価格は変わらないだろう。いずれにせよ、Model Aは、Ethernetを搭載していないぶん、伝統的にModel Bよりも安いことになっているが、IoTの製品を作る人たちの人気を、今日発表されたModel Bよりも多く獲得することになるはずだ。

今年、カメラモジュールも登場する。来月か再来月だ。公式な発表はないが、今のカメラモジュールのベースになっているOV5647はもう使われなくなる。生産が続けられるように、財団は現行のセンサーをできるだけ多く仕入れているというが、いずれそれも底を突く。

その先はどうなるのだろう?v彼らが約束していることとは別に、よく見れば道の先に面白いヒントが落ちている。

「USB 3.0に期待しています。周辺機器、とくにディスクドライブやネットワーク・インターフェイスのような広帯域を必要とするものを追加する場合の柔軟なソリューションになるからです。そして、SATAなどは必要なくなります」— James Adams(Raspberry Piハードウェアエンジニアリングディレクター)

しかし、Raspberry Pi 4にはUSB 3.0が搭載されるであろうが、今の時点で考えるならば、Raspberry Pi 3はRaspberry Pi 2よりも長い人生を送ることになるだろう。Raspberry Pi 2の期間は1年だったが、2年、いや3年はあるかもしれない。だから、気長に考えるのがよい。

原文