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2016.12.06

高等教育を刺激するティンカリングと問題メイキング

Text by Jay MargalusTranslated by kanai

DePaul大学のデザイン学部では、私の同僚、LeAnne Wagnerと私とで、Designing for Physical Technologyという新しいプログラムに取り組んでいる。こんな考え方だ。

フィジカルコンピューティング・システムは、いろいろなところで応用されはじめている。より安全な自動車や、より便利な家電品、それにリモコンのヘリコプターなど高度でインタラクティブなオモチャも登場している。センサーネットワークは、駐車場のどこが空いているかを教えてくれるし、アーティストはその技術を使って、見る人を取り込む物理的環境を作れるようになった。フィジカル技術に興味を持つ個人は、DIYやDIWO(Do It With Others)のコミュニティを形成し、「Make:」などのメディアがそれを後押ししている。

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メイキング、ティンカリング、ハッキングの側から探っていこうというプログラムは、ほんの10年ほど前にもなかった。しかし今や、アメリカ全国の大学に広がっている。DePaul以外にも、シカゴ美術大学のDesigning for Emerging Technologyプログラム、カーネギーメロン大学のPhysical Computingなどが行われている。さらにNation of Makers White Houseサミットでは、最初のセッションから、小さな研究所から小規模な美術大学まで、教育機関がメイカースペースを開設してメイキングを行おうとしていることがわかった。

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なぜ DePaul のような大学がフィジカルテクノロジー・プログラムを行うのか?

そこには、現在のMakerムーブメントを後押しする形で高等教育の世界に起こった3つの大きな変化が関係している。1)問題解決から「問題作り」への焦点の移行。2)ティンカリングやメイキングは、構造主義者の学習方法と同じ価値があるとわかった。3)コンピューター的思考の教育を従来のデザイン、物理、アート、映画などのプログラムに採り入れるようになった。

問題を作る

数カ月前、シカゴのSouthland Mini Maker Faireで、30年間小学校の教師をやっているという女性に会った。そして私たちが詰め込み型の教育の失敗について数分間話し合ったあと、彼女は、最近の子どもたちはテストの問題を解くのは得意になってきたと教えてくれた。それとは反対に、Maker Faireでは、人々は記憶テストで高得点を取るのではなく、問題の掘り出しに興奮している。

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大学のレベルになると、私たちは入学してくる学生たちに同じ課題を与えている。「問題の答をどうしたら最速で得られるか」から「解決する価値のある問題とは何か、その問題をどうやって探し出すか」へと考え方をシフトするかだ。後者に辿り着く道は限られている。それにはものを作ることが大いに助けになる。

『The Storm of Creativity』のなかでKyna Leskiが書いているように、「問題作り」は直感に頼るもので、それには関係のないものを放り出し、他分野の研究から新しいアイデアや経験を引き出すという居心地の悪いことを積極的にやらなければならない。私のメイカースペース、Spacelabでは、いつもそれが見られる。メンバーは互いに励まし合いながら個人の興味を追求しているが、ときには一緒になって、そうした不確実な宇宙で協力し合っている。メイカースペースは、自分の専門分野での居心地を悪くさせるよう仕向けて、さまざまな分野の物事を結びつける特別なタイプの直感を通して創造性や問題作りを促すのに必要な場所なのだ。

直感は、実際に行動に入る前に本人にその創造力を知らせるものだ。それは、ひとつの方向に自分を引きつける重力を持つ大きなものに飲み込まれたときに起きる。直感は、情報を与えるが、実例や目的や方向を示さない。そんな直感に従って行うのがティンカリングだ。

高等教育が、口で教えるよりも、施設で教えるようになると、よりMaker的な考え方が表れてくる。学生たちは、自分が得意とする能力、知識、技術の居心地のいい分野を離れるよう刺激され、自分で答を見つけるように仕向けられる。

ティンカリングとメイキングに価値がある

創造的なプロセスを追求する中で、Makerとメイカースペースは、ティンカリングやハッキングという活動を好む。これは伝統的には学問の世界の手法であり、その他の分野では自己言及とか無目的な追求とされてきたものだ。たとえば、『Escaping the Sandbox』の中でJenkinsとBogostはこう言っている。「広い応用の世界からそれ自身を分離することで、インスピレーションが生まれる」と。彼らは、プロの活動へと卒業することは「おそらく『Maker文化』とは相容れないこと」だと結論づけている。

私が知っているMakerたちは、メイキングが自己言及以外に何の目的もないという意見には反対している。そして新しい考え方を提言している。メイキングとは、創造的なプロセスに関わったときに私たちのとる行動の大きなセットの一部であるということだ。高等教育はこの考え方を中心に据えている。イリノイ大学の新しいデザインセンター、Project Prospectus(基本的にはメイカースペース)は、「学生がアイデアを探索し、そこでの活動……没頭、デザイン、メイキング、実践をとおしてスキルを習得する場所」と表現されている。報告書には次のように書かれている。

Design Centerは、キャンパスコミュニティの招集、話し合い、質問、思考、刺激を受けること、夢、概念化、発明、創造、イノベーションが収斂する地点だ。Design Centerは人々に協力させ、デザイン的解決につながる意味深い発見、理解、格闘に没頭できるところであり、その結果をキャンパス、コミュニティ、そして世界のリソースと接続する。この巨大なネットワークに組み込まれる形で、Design Centerは、教育と社会的目的と適合性の発見に施設として関わるイリノイの誘導灯だ。

言い換えれば、没頭とドメイン間の知識の共有と、さらに重要な、作ることを通した活動により、学生たちは新しい知識を創造し、それによって次図空を新しい発見に導くのだ。

ティンカリングは体を使った学習であり、学習を手で触れるものにする。『Tinkering as a Mode of Knowledge Production』の中でJohn Seely Brownは、このことについて触れている。「新しいことをどんどん学びたいと(子どもたちに)思わせるようにするには、(中略)子どもが知識で遊べる方法を見つけることだ。(中略)知られていないことも存在すると信じながら、ものをいじくることで新しい知識を作り出せると信じさせる」のだと。ものの仕組みを知りたい場合の最初の答はティンカリングだ。そしてティンカリングを行っていると、自分を表現するための媒体やものをより理解できるようになる。さらに、ティンカリングは、失敗から学び、問題を発見することを、じつに滑らかに教えてくれる。

Makerにとってティンカリングは、他の人の直感を辿る行為だ。その主題に没頭し、具体化という探検を行う。この探求は、ときとしてアート、デザイン、教育、さらには商業の世界で面白い結果を生み出すこともある。高等教育は、あるレベルに達すると、その価値に気づくようになる。物理の時間に、音波を水や炎で可視化する「物理の音楽」を教える私の友人であり ジョリエット短大のAndrew Morrionのクラスもそうだし、我々のDePaul大学のハードウェアデザインの基本クラスで学生たちにコーディングを勉強してソフトウェアで物理的な表現を行うことを奨励しているのもそうだ。手を動かして行動することを学生たちに教えるために、こうしたクラスが作られた。

原文