Electronics

2011.09.02

何回繰り返すのか?

Text by kanai


この夏、私のクラスで行う新しいプロジェクトを開発していたとき、新しい設計が定まるまでに何度も何度も作り直すという、いつもの問題を抱えることとなった。私が知る限りでは、最初から完璧に出来上がるものはひとつもない。これは、生徒や初心者が学んでおくべき重要な問題だ。プログラミングの世界ではこれを反復型開発と呼び、エンジニアはこれを適切な設計プロセスとして認めている。どちらも科学的方法論に共通する。大抵の問題は、ダクトテープと結束バンドで応急処置ができるが、きちんと修理したいと思えば、問題点を分析して、適切な対処策を練る必要がある。携帯電話などのデバイスを私たちは使い慣れているが、それらは箱から出したときから、ずーっと安定して働き続けてくれるのが普通だ。私たちがそうしたデバイスを初めて手にしたときは、すでに開発のサイクルからずいぶん先に進んでいる。
まず時間をかけて完璧な設計を完成させ、作る前にすべての手順をきっちり決めておく人もいれば、とにかく作り始める人もいる。それでも完璧なものは作れない。せいぜい、自分の設計に使えるもの、使えないものの情報が得られる程度だ。そして、使えないとわかったものをはぎ取ることで、いちばんいい方向性が見えてくるのだ。

私が開発したプロジェクトに携帯電話ホルダがある。私がこれに求めた性能は、携帯電話を見やすい角度にしっかりと保持してくれること、自転車のハンドルバーに固定できること、MakerBotでプリントできることだ。開発は、紙袋の切れ端に簡単なスケッチを描くことから始まった。その紙切れは、SketchUpで実際にモデリングする時間ができるまで、私のポケットの中で転がっていた。またしばらくしてから、やっとプリントできた。そのときは、絶対にぴったりなものは作れないという確信があった。そして案の定、ダメだった。開口部が狭すぎて携帯電話が入らなかったのだ。そのサイズや形をちょっと手直しする間に、私は新しい技術や道具について学ぶことができた。新バージョンはうまくはまった。しかし、まだちょっときつすぎる。私は、将来の参考にするために、失敗作を含めて携帯電話スタンドのすべてのバージョンを保存しておくことにした。
幸い、コンピュータでの設計過程とCNCでの製造過程は、最初から作り直さなくても、途中でちょっといじるだけで変更が利く。自分はこの繰り替えしを、最終的な設計に落ち着くまでの間、3~6回行っていたことがわかった。

携帯電話のケースを縫うときも、手縫いでもミシン縫いでも、私は似たようなプロセスを辿っていることがわかった。これらのポーチも、設計が落ち着くまでに何度も縫い直している感じがする。どれも使えるのだが、設計を変更したり、機能を追加したり、別の方法で仕上げてみるといったことができるために、完成したそれぞれのポーチはユニークな作品になった。洗濯機のノブを新しく作ったときも、6つほどのバージョンを作った。
工学的設計過程を導入するには、設計、製作、試験、新しい機能のテスト、変更が必要な箇所の特定、変更を加えて新しいバージョンを作るといった工程を繰り返すための忍耐と一貫性が重要になる。生徒にとって、このサイクルで設計を行うことは、いろいろと気がつく点が多く、自信もつくが、優れた設計やインターフェイスを見慣れた人は落ち込むことでもある。
もしあなたが教師で、またはより完成度の高い設計を人に教える立場の人なら、最初のものより洗練された優れた設計に到達するまで根気よく続けさせるに、どんな工夫をしてる? 生徒たちの意欲を高めるための特別な情報やツールを使ってる? 新しい技術を教えるときに、どのような方法で、どんなプロジェクトを使えばもっとも効率的にできるだろう。プロジェクトの数々の試行錯誤の結果を、どのような形で記録していけばよいだろう。いつでもすぐに引き出せるように、わかりやすい名前を付けて、ひとつの場所にファイルを分類して保存している人がいる。製作の過程を記録するのに、写真やスクリーンショットを使う人も多い。ノートブックは昔からMakerやアーティストや科学者やエンジニアが使ってきた伝統の記録方法だが、設計を学ぶ教室では、どの方法がもっとも効率的なのだろうか?
– Chris Connors
訳者から:自分がひとつのプロジェクトを何回やり直すかって、数えたことない。この人で6回というのは、かなり勇気づけられる。やっぱり必要なことなんだ。最後の問いかけに対して、英語版には教える立場の人たちから多くのコメントがついている。ある人は、プロジェクトの記録をつけるのに SpringpadDropbox が便利だと教えている。また、ワークショップを開いている人は、失敗しても落ち込まない心構えを教えているという。またその人は中学の美術の教師から「ヘマは美しくなる」という考え方を教わったという。自分が予期しなかった結果が悪いこととは限らない、という考えだ。何度もやり直すことは、失敗を自分のものとして取り込むことでもあるんだよね。
原文