Electronics

2011.08.15

AutodeskがInstructablesを買収:Makerにとって何を意味するのか

Text by kanai

Pt 101410
AutodeskのInstructables買収は、先週最大のニュースだった。この記事を書くにあたって、ボクは数日間考えた。Autodeskはインターネット最大のDIYコミュニティに食いついた。リスクは大きいが、その見返りはもっと大きいかもしれない。たしかに、Autodeskはプロユーザのビジネスを拡大させる術は心得ている。しかし、一般のMakerに対してはどうなんだろう。今回は、そこについて論じてみたい。Autodeskのinstructables買収はMakerにとってどんな意味があるのか。

まずは広告と有料アカウントとステップの表示方法について

Instructablesは広告に支えられていた。だからたくさん広告が出てくる。スポンサー主催のコンテストもあった。しかしそれは買収前の話だ。広告少なめですべての「ステップ」を見るためにはPDFをダウンロードしなければならず、それには有料アカウントが必要になる(月額1.95ドルより)。これは広告収入が減少し始めた2008年から2009年に始まったシステムで、スタッフの給料をまかなうためのものだった。これには批判が殺到した。Instructablesは半年で終わるだろうと言う人もいた。しかし現実は逆だった。Instructablesはさらに成長したのだ。ボクがこの話を冒頭にしたことにはワケがある。以上のことはAutodeskに買収される前の話。「広告を増やす」とか「収入拡大を目指す」なんてことは、普通は大企業に買収された後にやることだからだ。
Pt 101399
Instructablesにはまだ目立った変化は見られない。広告は、今より減らしてもいいような気がするけど。
Instructablissは、Instructablesからダウンロードしたページを、すべて1つのページにまとめて見せてくれるというサイトだ。ボクも何度か見たことがある。ここでも、すべてを見るためにはログインが必要になる。ボクのログイン情報が別のサイトに送られていないかなど、ハッキリとわからない部分があるので、ボクは利用していない。それより、Instructablesはたっぷりと予算が使えるのだから、本家のインターフェイスが改善されることを期待したい。
多くの人がそうしていると思うが、ボクも広告ブロッカーを使っている。仕事で使うことも多いので、ボクはInstructablesの有料メンバーなんだけど、いつも感じるのは、WordPressみたいにダウンロードして自分のサーバーから見せられるバージョンのInstructablesが欲しいということだ。自分のプロジェクトの「インストラクション」を自分のサイトに作れるパッケージがあれば喜んで買いたい。今すぐには実現しないだろうけど、これについてはあとでゆっくり話そう。どんなものでも、課金や広告は嫌われる。Make本誌に広告が入っていること、Make本誌の購読が有料であること、Maker Faireの入場が有料であることを嫌がる人も大勢いる。
また、一部の「エキスパート」には、簡単で単純な、彼らの言葉によると「just plain wrong」(洒落にもならない間違い)なプロジェクトを嫌う人がいる。念のため言っておくが、これもAutodeskによる買収の前の話だ。すべてのプロジェクトが素晴らしいというわけではない。なかにはパッとしないプロジェクトがあって当然だ。もしボクが10歳だったら、エキスパートたちが顔をしかめるようなプロジェクトをアップしていたと思う。だけど、これだけ多くの人が参加しているサイトなんだから、ごく自然なことだ。Instructablesでは、よりよいプロジェクトの掲載を促してサイトの質を高めようと教育的内容のコンテンツを出すようにもなった。これも、Autodesk前の話。
ボクはこの話を、時間をかけてしていきたいと思う。ボクがここで主張していること(広告のこと、有料アカウントのこと、すべてのステップを見せろということ)と同じ内容のコメントを受けたくないからだ。Revit(Autodeskの建築設計ソフトウェア)とAutoCADとMicroStation(Bentley SystemsのCADソフト)の話もしかり。ここでボクが考えたいのは、今回の買収がMakerとAutodeskにどんな影響を与えるかという点だ。つまりは将来の話だ。今後、Instructablesにこうなってほしいという具体的なアイデアがあれば、Instructablesの要望受付サイトで発言してほしい。では、Makeの話を続けよう。これがMakerにどんな影響を与えるのか。

Autodesk の収益には関係ない

Adsk-1Q11-Quarterly-By-Business-Segment-E1274414756329
Instructablesは、Autodeskにしてみれば、ほんの雨のひと滴程度のものみたいだ(2010年度の財政状況)。Autodeskの2010年度の収益は17億ドル(地域ごとの割合:アメリカ=38%、ヨーロッパ=39%、アジア太平洋=23%)。Instrucablesの収益がどれほどかは知らないけど、この業界では広告料金は年間数百万ドルで、そのほとんどがネット広告(Google AdSense、有料会員登録、直接的な広告料)であることはみんなも知ってるとおりだから、Autodeskの大きな収入源にはなり得ない。

Instructablesのメンバーはウェブトラフィックも関係ない

Pt 101401
Instructablesには約200万人のメンバーがいて、毎月5000万ビューを記録している。トラフィックとしてはかなり美味しい。しかし、Autodeskには広告に支えられているサイトはひとつもない。広告営業チームすらない。さらに、Autodeskは、広告料やCPMの値下げ競争のためにInstructablesを買ったわけではない。またAutodeskはHuffington PostやGawker(どちらもブログメディア)になりたいわけでもない。いったいAutodeskは何を考えているのだろう。

  • Autodeskには世界に1000万人以上のユーザがいる。
  • 800,000の企業がAutodeskのソフトを使っている。
  • 1200万人のデザイナーの卵が訓練を受けている。
  • Autodeskのソフトは世界で5万校以上の教育機関で使われている。
  • 毎年200万人以上の学生がAutodesk製品で教育を受けている。
  • DWF Viewerのダウンロード数は170万にのぼる。

しかし、それらのユーザ(とソフト)を取り巻くコミュニティがない。Instructablesにはそれがある(詳しくは後述)。

Autodesk は自分が何を買ったのかわかっているのだろうか?

AutodeskのCEO、Carl BassがWiredのビジネスカンファレンスに出席した際に、オープンソースハードウェアメーカー、DIY DronesのChris Andersonがインタビューをした。ChrisはWiredの編集長でもある。ビデオの完全版はこちら。このビデオを全部見ると、CarlがMakerの世界について語っている部分が出てくる。
Bassは、カンファレンス後のWired.comのインタビューでも、こう話している。「私たちは、テクノロジーが消費者の中から生まれて、ビジネスに成長していく傾向に気がついた」(詳しくはこちら
何かの中のひとつを作れるのか? 何かの中の多くを作れるのか? どうやって? どのツールを使って? どのように「始める」のか? 現実から画像をキャプチャして、そこから素早く実体を作るにはどうすればよいか? Carlは、Chrisの写真を何枚か撮影して、ボール紙をレーザーカットして彼の頭を作って見せた。すべてはAutodeskが発表したフリーソフトでできる。
どんなデジカメも3Dスキャナにしてしまうという考えのようだ。今や世の中全体がそっちに向いている。InstructablesやThingiverseのサイトを見ると、現実にそれがわかる。Autodeskもそのゲームに加わらなければ、競争力を失い、彼らのお試しツールセットも注目されなくなる。「デザインの歴史は、他人のアイデアの上に作り上げられてきた」とCarlは話している。そして「何かを作っていたいと思っている人たちの信じられないようなコミュニティがある」という。

Autodesk Project Photoflyは無料ダウンロードできる。「ごく普通のコンパクトデジカメで現実の完成図をキャプチャして、いろいろな目的(修復、高速エネルギー分析、アドオン設計、歴史保存、ゲーム開発、視覚効果、単なる遊びなどなど)に使えます。先進のコンピュータ視覚化テクノロジ、Project Photoflyが実現しました」ギャラリーはこちら
つまり、Autodeskは何を買ったのかをちゃんとわかっている。これはボクの想像だけど、彼はMakerなんだ。Chris Andersonと同じように、彼も副業を始めたということだ。もし、あそこにCarl Bassがいなくて、こうした話をしてくれなかったとしたら、ここへ出てきて何を考えているのかを話せ、とボクは叫んでいただろう。

なぜAutodeskは一声でInstructablesを買ったのか。

Instructablesコミュニティのブログの引用がある。ちょっと意外だったのは、ここの文章に対するコメントも、技術系プレスの反応もなかったことだ。ちょっと抜き出そう。

Instructablesは、123D、SketchBook、Homestyler、Pixlrを開発したチームのコミュニティの一部となります。これは、あらゆる分野の創造的な人々に、クリエイティブなツール、発想、サービスを提供するものとなります。

Pt 101403
Instructablesの指導的チームは、Autodeskの人間がああしろこうしろと指図しに乗り込んでくるのを、おとなしく待っていたわけではない。実際はその逆だった。彼らは、123D、SketchBook、Homestyler、Pixlrに魔法をかけようとしたのだ。InstructablesのCEO、Eric Wilhelmは、現在、Autodeskのコミュニティ担当の取締役になっている。広報資料にあるように、Instructablesブランドはそのまま残り、このサイトをよりよくするための予算を充てるということだ。Autodesk製品の説明書代わりに使おうという魂胆ではない。上の写真はInstructablesを運営している人たちだ。屋内のクライミングウォール、エルフの耳、3本の腕の赤ちゃん。それらはAutodeskからもたらされようとしているDNAだ。これからどうなるのだろう。妙なことになりそうだ。
しかし、これはAutodeskの大きな賭けなのだ。彼らは、彼らの無料ツール(その他のツールも)を使って、何百万人もの人々が何かを作ってくれることを願っている。AutodeskはWhat(ソフトウェア)からHow and Why(作って共有する)の企業に生まれ変わろうとしてる。それがAutodeskに何をもたらすのか? 巨万の富だ。そしてその方向へ進むためには、Instructablesでそれを行っているチームを買収する必要があったのだ。彼らは新しいツールをどんどん出したい。我々にも早い反応を期待する。そして、我々がフリーソフトから卒業するか、「ビット」(3Dプリンタ)で作った「イット」に金を払う必要が出てきたころに、何かを売ろうというのだろう。Autodeskは、Makerや物作りのヒーローたちを応援したいと考えている。Instructablesはそれをやっている。Makeもやっている。それはつまり、どの企業も欲しがっているものだが、情熱的なコミュニティだ。

Autodeskの未来はたくさんのフリーソフト

おそらくAutodeskは、彼らのツールの機能を小分けしたり、ウェブソフト化してくるだろう。彼らには、それを試すための、金のかからない方法がたくさんある。どうしてわかるのかって? 数週間前にAutodeskが発表したこれを見てほしい。
Pt 101404
Autodesk 123D public beta

123Dは、フリーのソリッドモデリングプログラムです。世界中のデザイナーやエンジニアが使っているものと同じAutodeskの技術を元に作られています。使い方が難しいだろうって? そんなことはありません。Autodesk 123Dには、単純な形を元に、複雑で詳細なモデルへと変形させていく賢いツールがいくつも搭載されています。タダのものが嫌いという方はいないでしょう。無料のモデルもたくさん揃っています。これを叩き台にするもよし、そのまま使うもよし、ただいじくり回すだけでもかまいません。これらの無料コンテンツは、このソフトの検索ボックスから直接探すことができます。123Dサイトの「Get Content」セクションからも入手できます。123Dサイトは、製作活動の中心的な役割を果たします。そこには、あなたのための個人的な製作オプションが揃ってます。また、ツールの使い方やモデリングの方法を教えてくれる仲間、さらにはあなたのデザインを実物に仕上げてくれるパートナーたちとのコミュニケーションの中心にもなります。

無料のアプリをダウンロードして、なにか作って、サービスパートナーで3Dプリントしてもらう。ここに欠けているのは、みんなで物の作り方を考え、アイデアを共有し、ハウツーを公開し、結果を共有し、3Dデータから新しい物を作り出すといった、Instructablesのような巨大なコミュニティとの連帯だ。
Autodeskはプロとの仕事のしかたをよく知っている。それは確かだ。しかし、物作りの初心者や急成長するホビイスト市場を含む、アマチュアとの仕事のしかたはわからない。だからInstructablesを買収したのだ。
Autodeskが売り込みたいと考えている新しいツールの周辺に、どんなコミュニティがあるのか、少し調べてみた。それらは方々に散らばっていて、まとまりがなく、あまり活発でもない。少なくともInstructablesのような盛り上がりはない。その中で、Instructables からきたチームが注目しそうなコミュニティを少しだけ紹介しよう。
Elephant-Plastic.Jpg3748Ebc8-F53F-4159-9306-4F3Af5Dda78Flarge
123D(上)こうしたツールの周りにはInstructables的なコミュニティができるのは自然なことだ。


Mzl.Efvlukgd.480X480-75
SketchBookボクも自分のiPadにこれを入れている。いいソフトだ。Flickrで作品をシェアできる。現在ここには約2000人のメンバがいる。コミュニティ/ブログサイトはここ、http://www.sketchbooknews.com/。しかし、じつに見つけにくいところにある。PDF how-tosもある。しかしステップごとの解説はなく、のめり込ませるような魅力がない。


Pt 101405

Homestyler──「インテリアデザインをリアルに表現できる住宅デザインソフトウェアです。ドラッグ・アンド・ドロップで簡単に使えて、ブランド商品のモデルも揃っています。次の住宅用インテリアデザインの仕事は、ぜひ、Autodesk Homestylerの3D環境で行ってください。無料です*。完全なウェブベースで、すぐにインターネットでアクセスできます。*Autodesk Homestylerは無料のオンラインサービスです。Autodesk製住宅デザインソフトウェアへのアクセスを提供します」
共有もサポートもコミュニティパーツも、どれもボクには空虚に見える


Pt 101406
Pixlr ──「Pixlrはオンラインのクラウドベースの画像ツールやユーティリティを集めたものです。現在、このサイトには、Pixlr Editor、Pixlr Express、Pixlr-o-maticという3つのアプリケーションがあります。これらはFlashで作られているため、ご使用になるためにはFlashプラグインが必要です。しかし、98%のパソコンにはすでにFlashプラグインがインストールされているため、通常ならそのままでお使いになれるはずです。また、画面取込ツール、Pixlr Grabberとワンクリックで写真を共有できるimm.io. PixlrもAutodeskの製品群の一部として用意されています。Autodeskは革新的デザインソフトウェアとサービスの世界をリードします」
どこのハウツーサイトでも、作り方の説明を書くときに、オンラインの手軽な画像エディタは必要だ。Autodeskが提供するすべてのツールを、この方向に持って行こうとしているのだろう。Pixlrは、ボクがこれまで見てきた中で最高に強力なFlashサイトだ。ミニPhotoshopが完全にオンラインになったという感じ。しかし、つい最近まで、ほかのサイトでこれが利用されているのを見たり聞いたりしたことがなかった。


とにかく、ボクが考えるに、Autodeskは販売しているツールの小さなサブセットを無料で提供して、何が起きるかを見ているのだろう。彼らの資産には、Instructablesのような、大勢の人間を惹きつける魅力に欠くものあがる。

Yahoo が Flickr を買収したときのこと

Flickryahoo
ちょっと脇道にそれる。Instructablesの買収について考えていたとき、広告で支えられていて、有料アカウントがあり、そても流行っていたサイトは他になかったかを探してみた。それに当てはまるものとして唯一思い浮かんだのがFlickrだった。大勢の人が自分のコンテンツをアップして利用している(ボクもFlickrでハウツーを作っている)。そしてこれも大手企業に買収された。しかしYahoo!の場合、Flickr買収は、GoogleやMicrosoftなど多くの企業が領地拡大のためにできるだけ多くの企業を買収しようとする中での、攻撃的または防衛的な争奪戦のひとつだった。Yahoo!はカメラメーカーでもないし、Adobeのような画像ソフトのメーカーでもない。検索業であり広告業だ。ボクが覚えているかぎり、Yahoo!のCEOは一度だって画像共有の未来について語ったことがない。Flickrは稼働率が上がり、より多くのログイン経路ができたが、それだけだ。中心となっていたチームは買収後すぐにFlickrを去ってしまった。テック業界では、Yahoo!は失敗したと思われていた。
Yahoo!はFlickrからのDNAは受け付けず、他の資産の改善には役立てなかった。deliciousなどはまったく活用されず、統合もされていない。今や黄昏ている。そこでボクは言いたい。Autodeskは、Yahoo!から「してないけないこと」を学んでほしいのだ。Yahoo!は、Flickrにほとんど手を付けていないのは立派なことだ。しかし、FlickrはYahoo!を変えられなかった。それは本当に残念なことだ。

Maker にとってこれが何を意味するか?

ボクは時間をかけて、Autodeskが何をやろうとしているのか、少なくとも何がしたいのかを理解しようとしてみた。それぞれのサイトに関して技術的な詳細を示す広報発表もないし、非公式なコメントも見あたらない。「Instructablesのメンバーに高価なプロ用のAutodeskソフトを売ってもらいたいんだ」と言ってしまえばそれまでだ。ボクが本当にやりたかったのは、InstructablesのDNAを彼らはどう活かそうとしているかについて、自分の意見をまとめておくことだった。だけどボクのことなんてどうでもいい。問題は、Makerにとって、世界最大のDIYコミュニティであるInstructablesのメンバーにとって、これが何を意味するかだ。それは、いくつかある。
Makerのコミュニティの価値は高い。だから人々は互いに刺激し合い、その巨大なコミュニティを育てようとしているのだ。ツールを作っている企業は、そこでどんな役割を果たすべきかを考えなければならない。Facebookのファンページで「いいね」をするのとはワケが違う。Makerコミュニティの価値は高まった。AutodeskがInstructablesのようなサイトを買収すると、すべてのMakerコミュニティの価値が上がり、企業、ツールメーカー、その他すべての人にとって面白いものになる。Instructablesのようなサイトを運営している人は、今や価値が高い。Instructablesなどに優れたハウツーを数多く提供している人は、今まで以上に価値が高くなっている。
数年前、ボクはHack-a-Dayを立ち上げて、その後、Makeに移った。ブログネットワークのHack-a-Dayの一部はAOLに買収されたからだ。AOLに言われたんだ。彼らは「ハック」という言葉を一掃したいのだと。そして2011年、Autodeskは「ハック」を喜んで受け入れている。
今後は、「Makerムーブメントの産業化」という言葉を耳にすることが多くなるだろう。ここで、Chris Anderson(DIY Drones)の話を引用したい。

AutodeskによるInstructablesの買収は、止まることのないMakerムーブメントの産業化のなかの、さらに大きなニュースとなった。今、目に見えてきたのは、複数の「作る流れ」の実質的な統合だ。オーサリングツールに始まって、デザインハウス、出力サービス、コミュニティ、3Dプリンタと、すべては新しい消費者やMakerサイドのビジネスを狙っている。
そうした動きの実例を、2つの主要プレイヤーの製品で見てみよう。これには、最近買収したものや投資したものが含まれる。

  • 3D Systems:Alibra(オーサリング)、Freedom of Creation(デザイン)、3Dproparts(出力サービス)、RapMan 3Dプリンタ。大きなコミュニティはまだできていない。
  • Autodesk:123D(オーサリング)、Ponoko/Techshop(出力サービス)、Instructables(コミュニティ)。MayaとAliasはハリウッドやゲームの世界での収益構造を確立しているので、デザイン関係では強力。まだ3Dプリンタの会社は買収していない(Makerbot を買収したらどうなるだろうと考えると面白い)。

この他にも、PTCとDassaultが出番を待っている。どちらもプロ用デザインとエンジニアリングのためのツールを作っているが、一般消費者向けの世界にも動き始めている(たとえばPTCは無料のCleo Elementsオーサリングツールを発表したばかりだ。Dassaultは業界のリーダー的存在のSolidworksを持っているが、一般向けの無料オプションはまだない)。

大企業が一般消費者と Maker の世界に価値を認め始めた。これらの企業が成功するためには、もっと我々のようになる必要がある。別の方法ではダメだ。以前ボクは、大企業はArduinoパイの一かけを欲しがっているという記事を書いた(リンク先は日本語)。TIもMicroChipもMicrosoftも、その他の企業も、オープンソースハードウェアを発表し、オープンソースツールを提供し、価値を生み出し、人々に価値を生み出させることが求められる。Arduinoキラーを作りたければ、少なくともArduinoが提供しているものを提供しなければならない。いろいろあるが、いちばん重要なのは100%オープンソースということだ。Makerからすれば、Autodeskなどの企業がMakerムーブメントに加わりたいと思うなら、もっとオープンな製品を出す必要がある。それを我々が使うことで、我々から価値を回収できる。
Makerにとって、この買収は、Maker/DIY 市場区分の成長と活性化を示すものだ。我々はみな、この市場機会を作り上げ育て上げてきたことから、Instructablesの成功に少なからず貢献していると言える。今やAutodeskはMakerコミュニティの一員となった。これは驚くべきことだ。巨大企業が、我々がやっていることの価値を認めたのだから。Autodeskがここでうまくやれたら、他の競争相手も、この巨大なMakerコミュニティと仲良くやっていかざるを得なくなる。これは我々みんなにとって、良いことだろう。より優れた(オープンツール)、よりオープンなライセンス、より多くの共有。なぜって、彼らはそうしなければならないからだ。そして多くの人がそれを望んでいるからだ。
Makerのために、他の企業はもっといろいろなことをしてくれる。Autodeskの競争相手も気づくだろう。今に、我々をサポートしたくなる。Google SketchUp(まだGoogleはこれを大切に思っているとしたら)とSolidWorksは、今どうしたらいいのか、どこを買収すべきかを思案中だろう。MakerBotか、Thingiverseか? CAD市場の向こうにあるサービスを買収したら、きっと話題になるだろう。PonokoとTechShopはAutodeskのサービスサイドのパートナーになっているが、これも他の出力サービス業者にとっては衝撃だったかもしれない。これから市場が再編成されて、新しいパートナー関係が生まれてくるだろう。最後には、もっと多くの企業がMakerを巡って競い合うことになる。
Makerにはこうした買収や競争を嫌う人もいる。そういう人たちはAutodeskが嫌いだろう。というか、独立系のサイトだけしか支持しないかもしれない。それがなんであれ、自分でハウツー共有サイトを立ち上げる人も出てくるだろう。これは良いことだ。これによって、企業はさらなる洗練を求められる。そして、Instructablesよりも大規模で優れたサービスが現れることは確実だ。今はハウツーサイトが少ない。まだまだ参入の余地がある。Makerにとっては、これは喜ばしいことだ。ボクは今でも、標準化されたXML形式でハウツーを吐き出せるハウツーサイトを作りたいと思ってる。それに一歩近づいた感じだ。
Pt 101407
もっと多くのプレイヤーが参加する。iFixitの連中は、AutodeskがInstructablesを買収したニュースに震えたことだろう。iFixitの価値は急上昇した。iFixitのバックエンドを使っている、Make: Projectsは、コンテンツサイトというだけでなく、今よりさらに充実したコミュニティサイトに昇格させることもできる。Make: Projects発信のプロジェクトが、もっとたくさんMakeに掲載されるようになったらいいね。そして広告主は、ハウツーサイトにより多くの広告料を払うようになる。その可能性は高い。
Pt 101408
ハウツーが最終的には標準化される。今より多くのハウツーサイトや学習サイトが競争するようになると、Makerは自分のプロジェクトのハウツーを好きなサイトに出せたらいいと思うようになる。現在はそれができない。Wikiはテキストなら可能だ。Flickrは写真なら可能だ。しかし、ハウツーサイトに標準化された形式がない。どのハウツーも「ハウツーをエクスポート」をクリックすれば別のハウツーサイトにアップできたり、「ハウツーをインポート」で別のサイトのハウツーのすべてのステップを写真やらなにやら、すべてを秩序だった形で読み込んだりといった風にはなっていない。ボクは今でもWikiを使ってHTMLで自分のチュートリアルを書いている。それは、早々に標準形式ができるだろうと考えてのことだ。それに、世界はどんどんモバイル化が進んでいる。インターネット用の標準形式ができれば、タブレットでも携帯電話でも表示できるようになる。だから、Makerのために、ハウツーのポータブル化に力が注がれるのではないかな。iFixitの連中は、今それをがんばっている。詳しいことは、oManual を見てほしい。

今度はそっちの番だ。あなたにとってどんな意味がある?

自分はMakerだと思ってる? Instructablesにプロジェクトをアップしたことはある? ボクたちは何年もかけてMakerサイトをいっぱい育ててきた。プロジェクトを公開したり(それはほんの一部だけど)、サイトが流行って変化していくのを見つめてきた。そして今、Instructablesは大企業の一部となった。Makerの世界は、Autodeskの動向に注目している。彼らの行動は、良かれ悪しかれ、これからの規範になる。これがあなたにとって、どんな意味を持つのだろう。
最後に、もうひとつ引用してボクの記事を終わらせたい。Tim Carmody(下にスクロールするとGoogle+のコメントを見ることができる)の言葉だ。

片方で、私たちはハードウェアを作るためのツールが使いやすくなり、入手しやすくなり、より民主的になった。もう片方では、より幅広い人たちが使うようになることで企業は潤い、より大きな魚を惹きつけられるようになる。とても魅力的なことだ。ソフトウェアのコーディングやパーソナルコンピュータが引き起こした革命と同じようなことが、また起ころうとしている。

ほんの数十年間で、コンピュータ革命がボクたちにもたらしたものを考えてみよう。20年後、ボクたちMakerはどんなことができるようになっているだろうか。ツールメーカーが、物作りのためのより優れた、より使いやすいツールの開発にしのぎを削る未来を考えてみよう。AutodeskがInstructablesを買収したことが、Makerに何をもたらすか。ボクたちみんなにとって、物作りの環境がますます良くなるということだ。
– Phillip Torrone
原文