Fabrication

2011.11.14

Mitch Altmanのエジプトハッカー旅行

Text by kanai

カイロで開かれたMaker Faire Africaを訪れたMitch Altmanのレポートだ。彼には大切な使命があった。ハッカースペースを普及させることだ。 – Gareth
maker faire africaに開設されたスリーデイ・ハッカースペース
10月14日金曜日にカイロから帰ってきた。片付けですごく疲れたけど、まだあの余韻が熱く心に残っている。今回の旅のいちばんの目的は、カイロで開かれたMaker Faire Africaで3日間だけのハッカースペースを開設することだった。ご想像のとおり、エジプトで過ごした時間は本当にエキサイティングだった。「自由革命」によって多くの人たちが希望に燃えていた。だけど、まだ軍隊が力を持って国を仕切ろうとしていたのも確かだ。
この旅で、我々はエジプトにハッカースペースを開設する手助けをしようと考えていた。それがアフリカ全土に広がることも視野に入れている。これを提案したのはBilal Ghalibだった。彼は今年のはじめに行ったアメリカ政府との交渉に落胆し、(アメリカ政府からの予算に期待するのをやめて)自分の力でやることを、そして彼の抑えがたい情熱を、エジプトの人たちと直接分かち合うことを決めたのだ。それを実現させるために、彼はGEMSI(Global Entrepreneurship and Maker Space Initiative:国際的起業およびMakerスペース構想)を立ち上げた。そして自然の成り行きとして、世界でハッカースペースの開設を手助けしてきた私に声がかかったというわけだ。

GEMSIのロゴ(Lee Devito提供)
Maker Faire Africaは、寛大かつ積極的に私たちのプロジェクトに出資してくれた。さらに、Kickstarterのキャンペーンでも多大な支援をもらった。186人の後援者(ほとんど見ず知らずの人たちだ)から、合計で8,169ドルもの資金が集まり、国際的なハッカースペース拡大運動で喜びと希望を届けることができた。この資金は有効に使わせてもらった。
空港に到着した私たちを、カイロ・ハッカースペースの2人の中心的出資者であるTarekとDeyaaが出迎えてくれた。彼らはそれから2日間(ほとんど寝ずに)、最新のThing-O-Matic 3Dキットを組み立てることになった。これはMakerBot Industriesが寛大にも私に持たせてくれたものだ。

MakerBotを組み立てるTarekとDayee。
Maker Faire Africaでの3日間だけのハッカースペースは大成功だった。これを開設した最大の目的は、みんなで大好きなことを追求して実行できるコミュニティを持つことの素晴らしさや意義を、人々にわかってもらうためだ。彼らのエネルギーはすごかった。私は、3日間ぶっ続けのワークショップで300人ほどにハンダ付けの方法を教えた(ひとりでね。ほとんど寝ずに)。キットやハンダごての購入にはKickstarterの資金を使わせてもらった。
Manalはエンジニアの仕事をやめて、今は自分で作ったバッグや服を売っている。同じような仕事ができるように人にも裁縫を教えている。3日間のハッカースペースでも、彼女は講師を務めてくれた。

中央のManal(青いスカーフ)を囲むスカーフの絵付け教室の参加者たち。
カイロ・ハッカースペースでのThing-O-Maticの組み立ては、Faire最終日に間に合い、大人気となった。そこで、カイロ・ハッカースペースの最年少メンバー、Marwanが、自分でプリントした笛を吹いてみせた。

Marwanが、MakerBot Industriesから寄付された Thing-O-Maticで笛をプリントしているところ。

プリントできた笛をMarwanが吹いてみせた。
カイロ・ハッカースペースでは、Evil Mad Scientist Labsが寄付してくれたEgg-Botも組み立てられた。卵に絵をプリントするというのが、最高に受けた(どうしてみんな朝食に固ゆで卵ばかり注文するのかと、ホテルの人は不思議に思ったろうね)。

Evil Mad Scientist Labsが寄付してくれたEgg-Botプリンタで卵に絵をプリント。
manalはegg-botでいくつかプリントをした。手描きのものもある。
3日間のハッカースペースは熱狂的だった。みんなが楽しんでくれた。もちろん、Faire全体には、もっと多くの素晴らしい展示が溢れていた。地元の人気バンドの演奏、アート、大量のLED、太陽エネルギー関連、混雑する街中での新しい駐車方式、革新的なエレクトロニクス、子どもに科学を楽しく教える方法などなど。
結果として、カイロ・ハッカースペースには大勢の熱狂的なメンバーが集まり、エジプト初のハッカースペースを支援していくことになった。そして大勢の人に、サンフランシスコを訪れたときに使えるよう、Noisebridgeの鍵も渡された。

全員にNoisebridgeの鍵が渡された。
Maker Faire Africaの前にも、多くの人たちがエジプトでがんばってきていた。カイロには、少なくともひとつの共有スペースがあったし、アレクサンドリアには、少なくともひとつの起業支援団体があった。そして、少なくともひとつのハッカースペースがカイロに誕生する。また、Startup Weekendがアレクサンドリアカイロで開かれたこともある。でも、そうした人々はこれまで互いに交流がなくバラバラに活動していた。それが今、ひとつになったのだ!
私たちは、ハッカースペースのミートアップをカイロで2回、アレクサンドリアで1回、エニヤで1回の計4回開催した。そこでは、ただ集まったみんなに火を点けてやりさえすればよかった。あとは自分からどんどん走り出した。彼らはハッカースペースを立ち上げ、参加して、社会が敷いた線路を漫然と歩くのではなく、自分で生きる道を切り拓くことに目覚めていった。現在エジプトでは、4つの都市でハッカースペースが準備を進めている。共有スペースや起業支援団体などは、もっと誕生することだろう。私たちが滞在中に、第1回、Open Source Dayの計画が立てられた。こうした支援ネットワークを利用して生計を立てる道を探るようになると、地域経済も活性化して、多くの人が潤うことになる。

エニヤで開かれたハッカースペース・ミートアップ。

カイロで開かれたハッカースペース・ミートアップ。
ひとつ伝えておきたいことがある。エジプトには長いハッキングの歴史があるということだ。手に入るものを、最大限に活用しているのだ。その精神は、街中に溢れているコンピュータ横町や露店を見ればわかる。古いマザーボード、サウンドカード、モニタ、プリンタなどを修理して売っている。ほうぼうの露店では、ハンダごてを握った人やJTAGプログラマたちが携帯電話や固定電話の修理を行っていた。

カイロのコンピュータ街にあったマザーボードの修理店。

カイロのコンピュータ街で見たノートパソコンの修理屋。

固定電話を修理しているカイロの露店。彼らは1969年からこの仕事をしているという。

カイロで見た携帯電話修理屋の露店。
エジプトの食べ物についても書いておこう。うまい! それに安い! 私はベジタリアンなのだが、これまでに聞いたこともない料理に一目惚れしてしまった。「コシャリ」だ。ライス、マカロニ、レンズ豆、茶色に炒めたタマネギが重ねられている。これに、トマトガーリックソース、辛いソース、ガーリックレモンソースなどをかけて食べる。どこへ言っても量が多くてめちゃくちゃ美味しい料理が食べられるのだ。なんとすべて50セント!

コシャリ。見た目よりずっと美味しい。
滞在中の2週間は大忙しだった(満足な睡眠も取れなかった)が、1日だけ観光する時間がとれた。

ギザにて、MitchとBilal。Mitchはピラミッドを攻略。
私のカイロ旅行の写真は、私の Flickr feedで見られます。
– Mitch Altman
訳者から:Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)とは、創造的な起業を目指す人たちを連携させて支援する企画。今年も11月18日から3日間、スタートアップウィークエンド東京が開かれる。
原文