2011.11.11
Zero to Maker:CNC教室を終えて
ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。- Gareth
前回は、手描きのスケッチの意外な利点と、それが物作りの最良の入口であることを主張した。だが、それはコンピュータを使ったツールの高い利便性をすべて否定するものではない。昨晩も、TechShopのShopBot教室で、コンピュータ式ツールの素晴らしさを再認識させられたところだ。
写真提供:Seth Quest
ShopBot教室は、ずっと先の話のように思ってた。それは私の目標であり、楽しみにしていたものだ。私はこの実践教室のほかに、ソフトウェアの勉強をして準備していた。TechShopにはAutodeskの環境が整っている。そしてすべての教室(Autodesk入門、Autodesk Inventor、Autodesk Assemblies)は、TechShopのメンバーなら無料で受けられる。また、初歩のCNC教室もいくつかある。コンピュータラボで行われるCNC入門、CAD to CAMなどだ。これらの略語が何を意味するのか、私にはさっぱりわからなかったが、またそれは何に使うものなのかも知らなかったが、TechShopチームの全員が口を揃えて、Zero to Makerの旅には欠かせないものだと教えてくれた。そしてそれは、彼らの言うとおりだった。
これを読まれている方のなかには、ゼロから始めた人もいるだろう(私のようにね)。だから、この略語について説明しておこう。
CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計):設計を支援するソフトウェア。私はAutodeskの製品を使っているが、製品や部品や建築など、設計を行うためのソフト全般のことをCADと総称する。アナログの描画や製図と比較したときの利点は計り知れない。前回のZero to MakerでChristianも話していたが、クライアントの注文で最後の最後に手直しができるのも利点のひとつだ。
CNC(Computer Numerical Control:コンピュータ数値制御):コンピュータとプログラムによって制御されるドリル、旋盤、フライス盤といった工作機械の総称。レーザーカッターや3DプリンタもCNCマシンに数えられる。
CAM(Computer-Aided Manufacturing:コンピュータ支援製造):CNCマシンを制御するソフトウェアの総称。CAMはCADで設計したデータをCNCマシンへ送る橋渡し役だ。つまり、設計を機械が理解できるプログラムに翻訳する。TechShopのCAD to CAM教室ではVCarve ProとCut3Dを扱う。
あなたがもし私と同レベルなら、これらの言葉も、これを学ぶ教室も、まだまだ手の届かない高度なものだと思うかもしれない。Autodeskの教室を何回か受講したころは、これらのツールを使えるようになるのはずっと先の話だと考えていた。しかし、ShopBot教室を受講したあとは、私はそれらにぐっと近づいた感じがした。CNCマシンの学習曲線は、木工用や金工用の昔ながらの工作技術を学ぶときとはまるで違って、いくつかの基本さえ覚えれば、可能性のドアを開けることができるのだ。
ShopBot教室の講師は、CNC入門、CAD to CAMクラスでもお世話になったCarter Stokumだった。この威圧的な機械の操作をどうしても(初めて)習わなければならないというときは、気さくでリラックスしていて、見るからにその機械に精通している雰囲気を漂わせるCarterこそ最良の先生だ。彼は、これまでに私が参加した彼の教室とまったく同じようにShopBot教室が始まった。まず、彼は早口なので、わかりにくいときはゆっくり話すよう注意してほしいというお願いと、各受講生の経験や目標をわかり合うための自己紹介だ。以上の手続きを終えると、さっそく授業開始。前の教室で終わったところからだ。マシンを見て回って、ドリルビットをセットする。ここまではソフトウェアの教室で習ったとおりだ。こうした作業のビデオを見て説明を聞いていたので、恐怖心はなかった。
やがて魔法が起きた。CNCマシンが部品を削り出す様子を一度見れば、その機械がなぜ重要なのかがすぐに理解できる。Makerムーブメントが急速に広がっているワケや、TechShopで作業すると特別な人間になったような気になれるワケもわかる。それは、こうした工作機械が、ものすごいことをやってのける最新式であるという理由だけではない。私のようなまったくの初心者でも、効果的に利用でき、いろいろなものを……そう、なんでも作ることができるからだ! コストのことが気になるなら、ほんの数百ドルの会費を払ってTechShopの会員になるか、なんならDIY CNCという手もある。そこには決まったルールなどない。
教室が終わって出てくると、TechShopのCEO、Mark Hatchが入口近くのテーブルに向かって座っていた。Markとはそれまでに何度か会っていたが、私が多くを学んだことについて、どうしても彼に話しておきたいと思った。私は、自分が受けた大いなる啓示のことを彼に説明した。このようなツールが使えるようになったことの意味が、より大きな絵として、なんとなく見えてきたことだ。彼はうなずき微笑んだだけだったが、私が言いたかったことは十分に理解してくれたはずだ。彼は、そんな人たち長年にわたって数多く見守ってきている。そして、まさに私が世話になっているこうした活動に、多大な投資をしてきた。TechShopにはたくさんの工作機械が整備されている。この15年間で、工作機械の価格は劇的に下がってきた。それぞれのTechShopには75万ドル相当の設備が置かれているそうだが、1995年当時の価格はどんなだったろうか(私にはまったく見当がつかない。わかる人がいたらコメントに書いてほしい)。
このZero to Makerでは、これまでない感謝の気持ちと興奮を覚えている。それは、私が体験してきたことに対してではなく、MakeやTechShopがしていることに対してだ。Adafruitなどのサイトが行っていることだ。そのほか、いろいろな工具が使えるようになる手段を提供してくれる人たちに対してだ。私には、これが新しいスキルを習得することよりも、ずっと面白いと思える。ここは未来への最前列だ。来るべき分散型の、個人製造の時代へのガイドツアーだ。これまでも楽しかったが、その意味を本当には理解していなかった。今の私は、目の前に見えているものが、よくわかっている。
これまでの話はこちら:Zero to Makerの旅
訳者から:「前回の記事の Christian」とは、コメントを書いてくれた Christian Restifo のこと。彼が務める会社には、古くは1880年代の製図が残されているという。木目なども大変に細かく手描きされていて、文字もレーザプリンタで印字したように正確に揃っているという。そんな昔の人の技術には圧倒されるものの、デジタルも、描き終えた後でも簡単に修正できるので非常に便利だと言っている。
– David Lang
[原文]