2016.07.25
オラに元気をわけてくれ! スポーツ+IoTの意外とイイ関係
オラに元気をわけてくれ! 私がマラソンしながらいつも思うのはそんな気持ちです。それを可能にしたのが、スポーツ+IoTかもしれません。そして、私が今年(2016年)春の東北風土マラソンで作りたかったのは、そんな思いをこめた「元気玉」でした。(Ktrips 吉田 顕一)
私、吉田顕一は、普段は東京の金融機関で働く普通のサラリーマンですが、年に2、3回マラソン大会に出たり、トライアスロンをやったりと、スポーツ好きです。また、昨今のIoTブーム、子どもプログラミング教育などと相まって(ただの流行り物好きですね)、1年ほど前から小学生の子ども2人とArduinoやRaspberry Piなどで個人的に遊んでいました。
そんな時、毎年4月に宮城県登米市で行っている東北風土マラソンが、本当に走りながらやるハッカソンをやっていたり、仮装、コスプレ推奨ということを聞き、出場することにしました。この大会は東北復興のためのチャリティーマラソンなので、私も何かIoTを使って、面白く、みんなが笑顔になれるもの、そして自分も元気がもらえるものができないか、と考えました。私は普段から自転車通勤しているのですが、自転車に乗っている時に突然思いついて、すぐラフスケッチしたのが、この元気玉。スポーツとIoTって全然関係ないと思われがちですが、こういう体を動かしている時にアイデアって湧いてくるものですよね。
そんなマラソンの元気玉とは、沿道のみならず離れたネット上からの応援に応じて、元気の大きさを表す風船のようなものが実際膨らんで、自分にも東北の方々にも元気を届けられる、そんなアイデアです。みんなから何かをちょっとずつシェアしてもらって、ネットと現実世界がつながる、これぞ真のIoT!?
そして調子に乗って、更に膨らませた妄想は:
・まず、沿道でハイタッチしてもらうたびに元気がもらえて、ランナーの頭につけた風船が膨らむ。
・TwitterやInstagramで、#GenkiTohokuとハッシュタグが付いたマラソン写真をあげ、それをリツイートやシェアしてもらったら、うれしくなって元気がもらえて、また風船が膨らむ。
・東北風土マラソン名物のエイドごとの地元名産品を食べたら(写真を撮ってアップしたら)、風船が膨らむ。それにいいねしてもらえたら、また膨らむ。
・そして元気をもらって走っている姿と、その元気を表す風船が膨らむ状況を、360度カメラなどで撮影し、リアルタイムでシェアする。
おそらく真面目なスポーツとIoTとは、速度やGPS、心拍センサーなどのデータを使って、より速く、効率的に練習、レースなどを進められるようなものかもしれません。ただ、こういったバカらしくも、元気がもらいたいランナーと応援する方々を、物理的にもネット的にもつなげるIoTがあってもいいのではないでしょうか? 第一、走りながら、インターネット経由で風船が膨らむ、なんて誰もやっていないし、作っていないので、やりがいもあります。
この妄想を実現させるために、デバイスとしては何を使ってもよかったのですが、ほどよい大きさと、いつでもiPhoneでロジックを変更できるソニーの「MESH」を使いました。
使ったものの一覧はこちらです。
・MESH Moveタグ(ハイタッチのカウント用)
・MESH GPIOタグと電流拡張ボード(インフレーター操作用)
・電池式インフレーター
・浮き輪と各種風船、それをつなぐチューブ
・カメラ棒付きバックパック
・ソニー小型アクションカメラとリコーTheta S
・iPhone
実際、元気玉(浮き輪)を膨らませている動画は下になります。
マラソンの練習をしながら、元気玉の作成は大変でしたが、本当に辛かったのはその前夜です。マラソンとIoTは両方とも、根気よくやらなければいけない、地味ながら達成した時の爽快感は格別、など共通点は多いのですが、唯一違うのは前日夜の過ごし方です。マラソンは、1週間前には練習を切り上げて、前日夜はゆっくり寝て体力を温存するのが普通です。しかしIoTは前日夜が勝負。たいてい文化祭前日のように、改善、最終調整、壊れる、直す、動かなくなる、割り切る、などを経るため、精神的にも体力的にも前日がピークです。今回はMESHを選んだおかげで、ロジックの調整、ネットとの連携、変更が、iPhoneだけで直前までできたのですが、それが功を奏したのか、苦難を産んだのかは分かりません。前日は会場近くでテント泊だったので、夜中のキャンプ場で風船を膨らませるインフレーターの音が鳴り響き、夜空の星がきれいだったのが忘れられません。
さて、大会当日がやってきました。
まずは大会が運営するコスチューム大賞に申し込むも、「世界初IoTランナー! インターネット元気玉で世界から元気を届けます!」というふれ込みがよく分かってもらえず、仮装としては何か出来の悪い食いだおれ人形状態に。まだまだ、IoTという言葉と、マラソンというスポーツの場での組み合わせの認知度が低かったですね。
それでもレースがスタートすると、友達がリツイートやシェアをしてくれて、だんだん風船と浮き輪が膨らみます。ただ風が強く、幾つかの風船、浮き輪が飛んでいってしまったり、接続が切れたりと、トラブル続きでした。そんな時もiPhone上でMESHのロジックを修正して対応したりと、図らずも「走りながら作る」IoTが実践できてしまいましたね。私自身は、ウィーンと背中のインフレーターが動いて浮き輪が膨らむたびに、ああ誰かが見ていてくれる、がんばらねば、と奮起できました。また、360度カメラを体の前に固定して撮りながら走ったので、それが目立ったのか、たくさんのランナーの方が注目してくれました。普段はなかなか難しい、走っているランナーと一緒に自撮りできたのがうれしかったです。その時の360度画像の一覧はこちらです。
沿道では、面白がって写真を撮ってくれる人がいたり、おばあちゃんたちに風船つけて大変ねえ、とそれなりに人気でした。まさかインターネットにつながって、風船が膨らんでいるとは……、分からなかったかもしれませんねえ。その時のビデオなどはこちらにまとまっています。当日の模様、カウント数、写真、ツイートなどはこちらに自動配信しました。
結局、300以上のシェア、リツイート、ハイタッチなどをもらって、風船をつけたままゴール! 少しでも沿道の、そしてネット上の皆さんに、元気をシェアできたのではないかと信じています。
終わってみると、スポーツ+IoTという点で、一瞬で色々なことが進んでいく場での機能性や耐久性など反省点も多数ありました。また一発で分かるような面白さ、走っている中での分かり易さなど、まだまだ改良が必要だと痛感しました。
とりあえずは(自称)IoTマラソン・ランナーになれたということで、今後は、トライアスロンなどに使えるIoT自転車にもチャレンジしていきたいです。トライアスロンの自転車パートでは、ハンドル前に水分補給のボトルを付けるのですが、そこをハックしたものを現在作っています。元気玉と同様に、応援のあるたびにそのボトルから水が噴射されて、口を開けておけば水分補給、又は暑さと疲れでボウッとしている時に叱咤激励してくれる機能。友達と一緒にレースに出ている時に、今、誰がどの辺りにいるのかというのをLEDでわかりやすく表示する機能など、IoT自転車の「iBike」を作りたいと思っています。今年夏の大会までには間に合わせて、ぜひ皆さんからお水を浴びせかけてもらいたいです。また、来年3月の東京マラソンでも、バージョンアップした参加型IoTランナーをやりたいと思っていますので、ご期待を。
実は、ここで紹介した機器などは全て、SonyのMESHを使っており、それを簡単に作るためのレシピ本「MESHBOOK」を電子書籍として発売しています。スポーツ関係だけでなく、家の中を便利にするものからロボットまで、幅広い作品の作り方を載せていますので、ご興味のある方は是非ご一読よろしくお願いします。
このように、スポーツとIoTは、やる人はもとより、応援など一緒に盛り上がって楽しんでもらうのがキモです。こちらに、世界初のIoTアスリートのためのIoThlete(アィォスリート)ページをFacebookに開設しています。
IoTレースの予定、参加者(今のところ私だけですが)、IoTガジェットの作成工程、応援者のための情報を随時更新しています。もちろん一緒にやってくれるアィォスリートも増えて欲しいですが、こんなバカらしいことやって欲しいというアイデア、一緒になってリアルタイムで盛り上がってくれる応援者など、大募集中ですので、ぜひいいね! してもらって、わいわい盛り上がっていきましょう。
ここで紹介したマラソンでの元気玉、及びiBikeを、Maker Faire Tokyoでのプレゼンテーション(8/7(日)16:30−16:50)、デモでご披露したいと思いますので、ぜひ8/6(土)、7(日)は東京ビッグサイトでのMaker Faire Tokyoに足を運んでもらって、スポーツ+IoTの新たな世界に足を踏み入れてはいかがでしょうか?
電子書籍は:http://ktri.ps/Kbooks
スポーツ、IoTなどのビデオは:http://ktri.ps/Ktube