Fabrication

2012.02.22

FreeD:フリーハンドのCNC彫刻マシン

Text by kanai


木彫をやったことのある人なら、その難しさをよく知っているはずだ。頭の中のアイデア、形のイメージを物理的な形状に変換するのはたやすいことではない。しかし、自分の手で、または手持ちの工具を使って、意のままに生の素材を加工できる技術は、誰でも欲しいところ。
FreeD(MIT Media Lab Responsive Environments GroupAmit Zoran、Joe Paradisoが開発)は、手で持って使うデジタル制御式の彫刻マシンだ。手に持って自由に動かすことができるが、常にコンピュータがその動きをモニタしていて、コントロールするようになっている。しかし、コンピュータがコントロールするのは、マシンが3Dモデルに近づいたときにだけで、3Dモデルデータに従って位置の制御を行うのだ。マシンは、チップの回転速度と軸の前後移動の制御だけを行う。それ以外は、どこからどう削るといった判断は完全にユーザの自由だ。

高度なCADソフトウエア、チュートリアルや3Dモデルデータの無料公開、Makerによる巨大なオンラインコミュニティなどによって、私たちは、ほとんどあらゆるもののCADモデルを作ったり手に入れたり、いじったりができる。デジタル処理によって、そのモデルを作らせることもできる。これに対してFreeDは、CAD環境の中で作ってしまうのではなく、素材に直に触れながら、仮想モデルを自分の解釈によって作り上げる自由を与えてくれるものだ。だから、一般的に公開されているデザインを使っても、自分だけのオリジナル作品にできるというわけだ。

昔ながらの技の世界では、職人の工具を扱う技術や創造的な判断が、そのまま作品の仕上がりに反映される。製作過程での素材とのやりとりが形になるのだ。FreeDを使うことで、デジタル製造でありながら、それと同じことが実現できる。同じCADモデルを使っても、人それぞれの作り方が反映されて、個性ある仕上がりになるというわけだ。
– Jie Qi
原文