Fabrication

2012.11.02

第1回 3D Printshow London 2012

Text by kanai


英語版編集者注:先週、ロンドンで3日間にわたり、大規模な3D Printshow 2012が開かれ、成長を続ける3Dプリント関連の最新にして最高の人と物が集まった。そのなかで、Printrbotの創設者、Brook Drummも自社製品の展示を行っていたが、彼は次のレポートと写真を送ってくれた。ありがとう、Brook!
ほんの数年前まで、3Dプリンターは、世界中に点在する優れたハッカーのエリートグループによって実現される情報通のギークの夢だった。イギリスでは、オープンソース3Dプリントの父、Adrian Bowyerが RepRap(replicating rapid prototyper)を生み、世界に公開した。そして3Dプリントのムーブメントは、大学の研究室から、ゆっくりと、ガレージやハッカースペースや、さらにはキッチンのテーブルの上に移ってきた。
世界中のMakerたちはこの流行に飛びつき、自分のプリンターを自宅で作るようになった。Makerbotは、早期から拡大する人々の関心を受けて、プリンターキットを、ギークにも、ギークでない人たちにも公平に売り出した。MAKE magazineをはじめとする技術系のメディアは、無数の人たちに向けてこの動きを書き立てた。そして近年では、Maker Faireが世界最大の3Dプリンターの品評会の場となった。
この爆発的な関心の高まりは、Kickstarterキャンペーンに火を付け、膨大な数の新興企業が生まれた。3Dプリントはビッグなビジネスになりつつある。
先週末、10月19日から21日にかけてロンドンで開かれた3D Printshowにおいて、3Dプリントは世界を巡って故郷に凱旋したのだ。3Dプリントはまだ若年期にあるが、ここ数年は大きくなった。この新しくて奇妙な世界に特化されたこのショーは、3Dプリント業界が一般消費者市場への道を拓いた証でもある。
会場を歩くと、多種多様な出展者が、ソフトウェア、ハードウェア、サービス、アート、ファッション、音楽、ビジネス、デザイン、建築、医療、家の装飾など、3Dプリントが進出した市場のあらゆる年代の人々に話し掛けていた。この広がりは、この業界がまだ若く、考えつくあらゆるものを壁に投げつけて、その吸着性を見ているという事実を示すものでもある。
ファッションは確実なテーマだった。パリのファッションショーとロックコンサートと3Dプリントによるフューチャー・パンクな展示とを大胆に融合させたハイライトイベントを催していた。本格的なファッションモデルたちが、ボタンやネックレスやブレスレットといった精細な3Dプリントによるアクセサリーに加え、3Dプリントによる奇抜な靴や、クリンゴンのバトルアックスにも似たパースや、明らかにレイア姫のタトウィーンでの有名なシーンの影響を受けた胸当てや、アミダラ姫も嫉妬するような髪飾りで着飾っていた (著者の覚え書き:このギークな例えで私の性別と年齢がバレる。そう表現したい気持ちはわかるが、もっと控えめに書こう)。

プリントとプリンター

プリンターの展示に関しては、当然のことながら、いつもの疑問がついてまわる。どれがいちばんクールなものをプリントできるか? しかしそこに面白い競争が始まっていた。答は、すごくすごくすごく高いプリンターだ。Objet、3D Systems、Autodeskといった業界の「ビッグボーイ」たちは、3Dプリンターでできる最高の作例を大量に展示していた。ただしそれができるのは、a) 金に糸目を付けない場合で、b) プロのモデラーとデザイナーが時間をかけて集中して作業した場合だ。本当に素晴らしい出来映えだった。
それより若いプリンターメーカーも、小型ながら高性能なプリンターでしっかりと立っていた。彼らは高解像度で高速で低価格帯の新型プリンターを展示していた。MakerBotのReplicator 2は、プロであり消費者でもある人たちの市場に手を伸ばしてきた。また、3D Systemsのような巨大企業も一般家庭向け市場に降りてきた。領地の奪い合いは激しい。根性の座った会社は、すでに自分の居場所を宣言して照準を定め始めている。ここでは、勝者はひとりだけではない。
一歩ひいてこの光景を眺めると、明かなカテゴリーが形成されつつあることがわかる。大半のエネルギーと報道と出展者は、プリンター、プリント、3Dスキャンサービス、プリントサービスといった大きなビジネスに目を向けている。これも重要なカテゴリーではあるが、MAKEの読者なら、価格と入手のしやすさを改善しようと地道に進歩を続ける一般家庭向けの製品のほうに興味があるだろう。

どれを買うべきか?

3D Printshowでは、一般家庭向けプリンターもしっかりと展示されていた。価格帯は、MakerBot Replicator 2の2,199ドル、Ultimakerの1,910ドルから、Printrbot Jr. の399ドルといった具合だ。RepRap Mendelの派生品を販売する企業が、その中間を埋めている。これらのプリンターはみな、ABSやPLAなどの熱可塑性樹脂を使う熱溶解積層法式(FDM)だ。 このグループの他には、樹脂ベースのステレオライトグラフィー方式(SL)のFormlabsがある。価格はKickstarterで2,999ドルだ。どう考えても一般家庭向けの価格ではないが、その解像度は3Dプリンター市場において十分に魅力的だ。
SLかFDMかの選択は簡単だ。解像度が最大の目的ならば、Formlabsが最高のプロトタイピングマシンだ。ただし、使用する樹脂は1リットルあたり149ドルと高価であることを覚えておかなければならない。また、プリントしたパーツは清掃をする必要がある。構造の強度が重要ならば、ABSを使用するFDMがベストだ。材料も1キロあたり48ドルと安い。価格とプリントの解像度と強度以外には、サイズ、移動性、自分で作りたいかどうか、という選択のポイントがある。

未来はここにある

会場を訪れた人々の反応や会話から判断するに、3Dプリントの時代はすでに始まっている。しかし、世間一般では、まだ3Dプリンターは認知されておらず、それで何ができるかが知られていない。明日は何ができるようになるのか。来年パリで開かれる3D Printshowではどうなっているかは誰にもわからない。しかし、すでに3Dプリンターを持っているMakerや企業は、このテクノロジーを最大限に活用しようとしている。ほんの一握りの人たちが、すでに未来に暮らしているのだ。
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– Brook Drumm(Printrbot)
12月13日に、Make: Ultimate Guide to 3D Printingが発売されます(米国にて)。巷には膨大な量の情報や選択肢が溢れているけれど、自分にぴったりな3Dプリンターをどう選べばいいのか。そこをMAKEがお助けします。私たちは16種類の3Dプリンターを編集部に運び込み、MAKEの編集者とその分野の識者を集めて週末を費やしての戦いを繰り広げ、驚きの体験を書とめ、過酷なテストを敢行しました。この特集号には、あなたが求める情報が明解に書かれています。
この世界の状況をさらにわかりやすくするために、あなたに最適なプリンターの選び方、プリンターを手に入れたあとの使い方、ソフトウェアの選択方法、プリンターを使わずに3Dプリントする方法なども伝授しています。最高にクールで便利なプリントのギャラリー、素材の詳細なリスト、スキャンに関する情報なども満載です。

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