MAKEの人間として、ハロウィンはMakerのお祭りだと思う。みんなが店では売ってないアイデア満載で楽しくて独創的なコスチュームを作るからね。では、ハロウィンの反対の日はいつだろう。ボクは「ブラックフライデー」(アメリカのクリスマス商戦が始まる11月の第四金曜日)だと思う。
何かを作る工具を買いに行くのは別として、感謝際が終わったあとのショッピングモールには強欲な消費主義が満ちあふれる。大勢の買い物客が、「買え買え買え」というドラムのビートに合わせて行進する。立ち止まって「なぜ?」と聞く人はいない。
不平はこのくらいにしておこう。パタゴニアとiFixitは、そんな心を失った浪費や消費主義をなんとかしようと手を組んだ。この2つの企業は共同で、パタゴニア製衣服の無料修理ガイドのシリーズを発行することになったのだ(もちろんパタゴニア製品のみが対象)。ブラックフライデーには、パタゴニアのショップに立ち寄って、古いパタゴニア製品の修理を相談できる。おまけに、New Belgium Brewery製のパタゴニア・カリフォルニア・ルートビアの試供品ももらえる。
しかし、洋服メーカーが、古いものを捨てて新しいものを買うように勧めるのならわかるが、修理を始めるなんてちょっと変だ。
「必要のないものまで買わせようというビジネスモデルには、私も疑問を持っています」と語るのは、パタゴニアの広報、Nellie Cohen。「無制限な消費と欲望と成長の上にたつ世界は長続きしません。というより、満足が得られません。ブラックフライデーには、私たちはお客様にギアの修理をお勧めします。その古い服を着て歩いた旅のこと、それと共に過ごした素朴で豊かな自然の中での生活を讃えてほしいのです。ひとつのものが長持ちするのは、うれしいことです。ずっと役に立ってくれるわけですから。これから5年、10年、20年と長持ちする製品の価値について、みなさんに考えてもらいたいのです」
そんなこと言いながら、やっぱり他の店と同じように、ブラックフライデーに客を呼び込みたいだけだろう、と考える皮肉屋さんもいるだろう。しかし実際はその逆で、うれしいことに、品物を修理して寿命を延ばすことで余計なものを買わないようにとパタゴニアは勧めているのだ。
「私たちは、何世代も受け継いで使える最上品質の服を作ろうと努力しています。ずっと使い続けていただくために、修理できるようにすることが大切なのです」とCohenは言っている。
iFixitがそれを支えている。Cohenはそれを、「インターネット上で最高の修理ガイド」だと言っていた。
「私たちの使命は、世界中の人たちに、あらゆつものの修理方法を教えることです」とiFixitのCEO、Kyle Wiens。「私たちは、新しいものを買うという考え方に売り飛ばされてしまったのです」
Makerなら、何かを作ることと直すことは、そう違わないということがわかる。それらはコインの裏表だ。
iFixitのコミュニティはテクノロジーやガジェットに寄っているが、Wiensによれば、彼らのユーザーフォーラムでもっとも多く常に聞かれる質問が、破れたジーンズのツギの当て方なのだという。これまでiFixitには、その質問に答えられる知識がなかった。だが、ネバダ州リノのパタゴニアの修理工場を見学したiFixitは、裁縫を習い始めた。そこから、彼らのパートナーシップが生まれたのだ。
「裁縫は失われた技術だ」と彼は言う。「ジェネレーションギャップがある」と。
しかし、ウェアラブルエレクトロニクスやソフトサーキットの人気が高まるにつれて、裁縫や服を直す技術の価値が見直されてくると彼は見ている。
「そこから、非常に多くのことにつながります」と彼は言う。
それに、服を直す技術を学んで、自分好みに服を改造できるようになれば、かなりうれしい。
「時間をかけて、自分のズボンのジッパーを直せば、もうそのズボンは捨てられなくなるでしょう」
パタゴニアとiFixitの提携をきっかけに、パタゴニアは『Worn Wear』(着古した服)というミニドキュメンタリーを発表した。美しい作品だ。破れた服にツギを当て、古着を買い、新しいものを買わないことがクールだと訴えているように思える。これが使い捨て文化への挑戦でなかったら、なんなんだろう。
– Stett Holbrook
訳者から:ここで『Worn Wear』の日本語字幕入りムービーが見られます。
[原文]