Electronics

2014.01.24

Bmore3D:バルチモアのユニークな3Dプリント・スキャン屋さん

Text by kanai

Bmore3Dは、当初、クリスマスシーズンだけの3Dプリントと3Dスキャンと3Dモデリングのためのポップアップショップとしてスタートした。船のレストランとして有名なCaptain Jamesの近く、カントン地区とフェルスポイント地区に挟まれたインナーハーバー地区にある。この店は、Custom 3D StuffのTodd Blatt、Direct DimensionsのMichael Raphael、ShapeShot、Baltimorean Graham Stewart、バンクーバーのTinkerine Studioの共同で設立された。我々の専門知識と3D業界のつながりを活かして、一般のお客さんか先端技術に精通した人たちまでが同じように楽しめる、非常に充実した、エキサイティングな場所を作ることができた。

IMG_4803IMG_4724

ここの目玉は、改良型のShapeShot 3Dフォトブースだ。ニューヨークのMakerBotショップに置かれているものと同じもの(そのポータブル版が去年の3DEAに出展された)だが、バックエンドを作り変えている。私たちは、それが開発されたボルチモアに持ち帰り、いくつかの新しい機能を追加した。人の顔をフルカラーでキャプチャーするだけでなく、Shapeways APIと統合できるようになっている。つまり、ブースで、現在のところ8種類の作品を自動生成し、それをShapewaysに送ってプリントできるのだ。作品の種類には、フルカラー3Dセルフィー(自分撮り写真)、フルカラー・ボブルヘッド、自分の頭のマグカップ、陶器の頭のマグカップ、小さな頭部像、銀のブレスレットがある。すべて自動的に生成される。このシステムでは過去のデータにも対応している。2012年11月から2013年10月までの間にMakerBotショップの3Dフォトブースでスキャンしたデータなら、上記の作品が作れるのだ。ShapeShot.comにアクセスして、メールアドレスとパスワードでログインすれば、これらをプリントして郵送させることができる。実物をご覧に入れよう。

1457705_553471744727089_2099176312_nbustdoggie

Bmore3Dは、3D技術で何ができるかを一般の人たちに知ってもらうことを第一の目的としている。3Dデータは、単にプラスティックでプリントするだけでなく、もっといろいろな活用法があることを知ってもらいたいのだ。また、地元のアーティストたちの、金属や陶器やナイロンなどを使った3Dプリント作品も展示している。正面のショーウィンドウにはDitto+を置いて、それがプリントする様子が見られるようになっている。他のショップではあまり大きく扱われないスキャンにも、私たちは力を入れている。ArtecやFaro Armのようなハイエンドのスキャナーに加えて、Asus xtion pro、123D Catch、Sense、Digitizerといった、より一般的で安価なスキャナーも揃えているのが特徴だ。私は、妹とそのフィアンセをArtecでスキャンして、ウェディングケーキに乗せる2人の高解像度の人形をプリントした。5月の結婚式で披露する予定だ。

私たちはTinkerine StudioのDitto+をデモしているが、何台か販売もした。正面のウィンドウに置かれたDitto+とLittoは、1カ月間ずっとプリントし続けている。

私たちは、他の方法では作れない、実体のある製品をお客さんに提供している。それはカスタマイズも可能だ。みんなは、意味のあるクリスマスプレゼントとして、喜んで買ってくれた。Bmore3Dの商品の多くは、他の方法では作り得ないものだ。捻ったり曲がったり、いかにも3Dプリントらしいつながり方をしていたりする。これらのギフト製品は、もともとメリーランド出身のアーティストたちによるものだ。ツーソン大学プロダクトデザイン科の数人の卒業生が最初の製品を持ち込んできた。Megan Dattoriaの動く指輪は多くの人を驚かせた。Josh Demonteは2つの素晴らしい花瓶を持ってきてくれた。Trish Dobsonは、3Dプリントした原型からレジンで作ったコスチューム用の角をすべて持ち込んでくれた。彼女はShapewaysを利用してSLSナイロンで角をプリントし、それをペイントしてシールしてシリコンの型を作り、カラフルなレジンのホーンを作っている。

922549_560223017385295_2056542203_o1475872_552684458139151_1254851804_n

店を開いてから、素晴らしいことが起こり始めた。数人の人がやって来て、自分たちで3Dプリントした製品があるので、店に置いてほしいと言ってきたのだ。Tony Karpの奥さんが美しいフルカラーのプリントを持って店にやって来た。私たちは、それを置くために棚を増やした。Jessica Searfinoはイヤリングを持ってきた。Aminimal Studioは指輪とイヤリングとネックレスを送ってきた。Frozen Lava CasesのDarius McCoyは16歳の高校生だが、彼が作ったボルチモアをテーマにしたiPhone 5用ケースも店で販売している。Jason Bakutisは店のためにカラスを作ってくれた。Ryan Kittlesonは、ボルチモアの象徴であるカニとムクドリモドキを作ってくれた。Direct Dimensionsがネズミをスキャンしてくれて、これでボルチモアを代表する動物たちがすべて揃った。

1483350_10100530778437703_926112623_nlava

vesselsBmore3D Storefidgetaminimal

ボルチモアに縁の深い製品を作り続ける一環として、私は店の一角に、ウォルターズ美術館のコレクションに関連する製品を置くコーナーを設けた。去年のArt Bytesハッカソンで、私はウォルターズ美術館の彫刻を10点ほど3Dスキャンした。そのなかのいくつかを使って、Meshmixerでクリスマスオーナメントにした。過去に作ったものを再利用したり、他の人たちが作ったものをインターネットで共有して、それを新しいものに作り変えられるというのは、とても面白い。元は単なる彫刻なのだが、今それがオーナメントになった。来月、Art Bytes IIがボルチモアで開催される。私はすでに参加申し込みをした。

また、過去のプロジェクトから3Dプリントしたボルチモアの有名人の像も飾っている。下の写真は、このほど引退した、かの有名な52番レイ・ルイスと、98 Rockのラジオパーソナリティー、Ameliaの像だ。これらを見ると感慨深い。どちらも10年前の作品だからだ。

52amelia

毎週日曜日にはセミナーを開いている。そこでは、3Dプリント、3Dスキャン、3Dモデリングの専門家がトークを行い、彼らの経験や、過去の作品や、どのように一般の人たちを巻き込むかについて、話を聞かせてくれる。これは、彼ら自身にとって、とても重要なことだと私は考えている。3D産業が誕生してすでに何年も経過し、この地元にも豊富な知識を持つ専門家がたくさんいることを自覚できるからだ。それによって私たちは誤解を解消し、人々に作りたいという気持ちを起こさせることに貢献できた。

workshopIMG_4853

私自身のCustom 3D Stuffプロジェクトの展示もできた。金属で3Dプリントしたアクセサリーに、去年の夏にKickstarterキャンペーンを行ったGoogle Glassのためのアクセサリー、GlassKapシリーズだ。このプロジェクトは、3Dプリント技術によって、従来の製造方法では存在し得なかった製品が作れることを証明するものとして、よく使っている。ときには、大きな市場に売り込みをかけて、射出成型にかかったコストを取り戻す必要もある。GlassKapのような小規模なプロジェクトでも、ある程度の資金を投入して大きく出なければ、わずかな数しか生産できなかった。

glasskaps

この店のもうひとつのクールな商品が、ホログラムだ。通常、ホログラムは、レーザーで物体をトレースして、そのデータを使ってレーザーをコントロールしてホログラムを作る。私たちは、そんなホログラムをデジタルファイルから作ってしまうという業者と手を組むことができた。ShapeShotブースのスキャンデータを使い、人の顔のホログラムを作るのだ。驚くべきことに、そのホログラムには、カラーデータや3D情報も含まれているのだ。インターネットではわからないし、そう簡単にオンラインで共有できる性質のものでもないので、店に来て、実際に見てもらうしかない。なんとかビデオ(下)に撮影してみたが、それでも本当のところは伝わらない。このホログラムは、The Genius of Connecticutという、高さ5メートルの彫刻を3Dスキャンして作ったものだ。

VID_20131128_004612

お客さんが3DプリントサービスのMixeeLabsを使って自分でアクセサリーをデザインできるワークスペースも作った。子どもでも、MixeeLabsのMixeeMeアプリや、VirtoxのQuark Jewelryアプリや、Molecule Creatorを使って、遊びながらアクセサリーをデザインして、インターネットでプリントを注文すれば、出来上がったものが家に届く。

mixee

地元のアーティスト、Cody Wrightが、私たちといっしょに下のイラストをデザインしてくれた。これは私たちのTシャツにも使われている。

shirt

ここへは、すぐにプリントできる.stlファイルを準備してくる人もいれば、未完成のファイルを持ってくる人もいる。そんな人たちには、私たちがお手伝いをして、3Dプリンターに送れるようにファイルをクリーンアップしてあげたりもする。開店した週末には、Greg Smithという発明家がやってきた。彼は医療用機器のプロトタイプを開発中だったのだが、そのケースの背面パネルを作りたいと言ってきた。装置を上下から包み込む部分はうまくできていたのだが、問題はプラグやコネクターを通す部分だった。ドリルで穴を開けるというのが彼ができる最良の解決策だったのだが、それでは彼が目指す仕上がりの品質にはならない。そこで私はサイズを測り、その場でプリント可能な背面パネルのモデリングをしてあげた。

greg2

私たちは何度か繰り返してデザインを洗練させていった。そして、Gregにさらに4つをプリントして持たせてやった。その結果に彼はよほど驚いたようで、1週間後、彼はまた店に来て、3Dプリンターを1台買っていった。誰かに刺激を与えてMakerにするというのは、本当にうれしいことだ!

Baltimore SunJewish TimesにもBmore3Dの記事が掲載されているので、よかったら読んでほしい。当初は、昨年の暮れで店を閉じる計画だったのだが、12月の売り上げが好調だったのを受けて、あと1カ月は継続しようということになった。その後どうなるかわからないが、ここを支えてくれた人たちは、ずっとこの街にいるし、私たちのコミュニティの重要なメンバーでいてくれる。みんなも、やってみたらどうだろうか。

http://www.bmore3d.com
2150 Boston Street, Baltimore MD. 21231

– Todd Blatt

原文