2014.03.31
Project Tango:GoogleのMaker向け3Dスキャナー付き電話
今、私は Tango を手にしている。数日前にこれが発表されてからは、こいつがこの10日間で最高にホットなガジェットだ。
私にとって、これは魔法に近かった。2003年にTrimbleに買収されたMENSIチームの一員として、90年代(前世紀だぞ、若者たちよ!)から3Dスキャンに関わってきた私は、そのころから家庭で使える3Dスキャン装置を夢見ていた。Xbox 360に接続して使うMicrosoft Kinectは家庭用3Dスキャナーの主流となり、何百万台も売れた(そのうちいくつかはハックされた)。そして今、Googleにいる我らの友人たちが、ポケットサイズの、実用的な、3Dスキャナフォンという新しいツールを開発してくれたのだ。そのGoogleのProject Tangoが現実となって、今ここにある。
箱の中には下のようなものが入っている。白い紙の箱、電話機、2つの充電器とケーブル(ひとつはMacにつなげるUSB3、もうひとつはUSB 2.0 – 10Wだ)、それに、クイックスタート説明書。
Project Tangoの箱の中身
USB 3.0コネクター
USB 2.0コネクター
SDKサイトを開くと、プロジェクトのプロジェクト名が現れる(そう、Project Tangoには、Peanutというもうひとつの名前があるのだ。これはプロトタイプの2番目のバージョンに関係している。最初のプロトタイプは、そのサイトのビデオの58秒あたりで見られる)。
—
PEA·NUT / ˈpēnət / 名詞
1. モバイルコンピューターの視覚を永遠に変えるモバイルデバイス。
2. 南アメリカの畑で取れる美味しい種。
—
どっちの定義も素晴らしい。最初の定義はかなり野心的だが、使ってみてその意味がわかった。ユニットのスイッチを入れればすぐに遊べる。OSの一部としてDepthViewerアプリがあり、立ち上げると、リアルタイムで電話機のセンサーによる深度画像が見られるようになる。
Cameraアプリを立ち上げると、電話機に付いている4つのカメラと深度センサーすべてを使って撮影ができる。これはPrimeSenseが開発したものだ。
カメラ1
カメラ — 自分撮り用
カメラ3
カメラ4 — 深度センサー
カメラ1と4の合成
Play StoreのPeanut専用コーナーでは、いくつかのデモアプリがダウンロードできる。なかでも、Tango Pointcloud、Tango AR UFO、Tango Sparse MapperはUnityエンジンで作られている。その他のCube Mover、Forest(これはMoto XのWindy Dayアプリを思わせる)、Interior、Bike Exploder、PlyLoader、Tango Mapper、Depth ScanはJavaベースだ。これらのデモアプリを使えば、拡張現実やトラッキングやマッピング、それに電話機のスキャン性能のテストなどが行える。
コーディングを行えば、もっと突っ込んだ使い方ができる。SDKのウェブページはよくできていてわかりやすい。Android、Unity、またはJavaの開発に慣れていれば、すぐに理解できるようになるだろう。私はこのユニットを記念すべき40歳の誕生日の週末に手にした。だから少し時間的余裕があったのだが、ほんの数時間でテストアプリができてしまった。コアの機能へのアクセスは非常にシンプルで、初めてのコーディングから、独自プログラムの実装が簡単に行える。
Tango SDKのウェブページ
ところで、白状するが、私が最初にTangoで行ったことは、自分撮りだ。手を伸ばした姿勢で音量を下げるボタンと電源ボタンを同時に押すのは容易ではなく、3回目にしてやっと自分だとわかるもが撮れた次第だ。
初めて Tango で撮った自分の顔
写真アプリで赤外線カメラをアクティブにできることを知ったのは、すぐのことだった。なので、2つめの自分撮りはもっと面白いものとなった。エレン・デジェネレスのアカデミー賞の自分撮りほどではないが、これもある意味、歴史的な写真であるには違いない。
2回目のTango自分撮り
そしてついに、Tangoを動詞として使う新しいトレンドが始まるのだ。私の息子、Gaetanも「タンゴられ」た。
タンゴられた!
もちろん、これだけセンサーが付いていて、CPUも3Dキャプチャーや表示を行うとなれば、電池のなくなり方は早い。しかし、これはまだ2番目のプロトタイプなのだ。メインストリームとなる製品として発売されるまでには(または、Glassのように、別のExplorerプログラムの一部として登場するかもしれないが)、まだ何カ月もある。こうした問題を解決する時間は十分にある。私が驚いたのは、最初のプロトタイプ(それは単なるコンセプトの実証機だった)から、完全なAndroid端末へ進化した速さだ。この調子なら、第3のプロトタイプではさらに驚かせてくれそうだ。
この数年間、私はラッキーなことに、新型Trimble TX8などの、非常に面白い3Dスキャナーをいくつも使える立場にあった。おかげで、私は自分の家の内部と外側をミリ単位で精密にスキャンすることができた。そこで私は、Tango Mapperアプリを立ち上げて、家の中のデータをキャプチャーし始めた。
Trimble TX8 3DスキャナーでスキャンしたOmarの家
私は、Tangoでキャプチャーしたポイントクラウドと比較するために、1階のデータセットを分離した。
1階 — Trimble TX8 3D スキャナーのデータ
Tangoでキャプチャーした1階のデータ
Trimble TX8とTangoのデータを結合
緑色の部分は、Tangoも正確にキャプチャーしているが、黄色の部分ではデータが流れている
赤がTango、青がTrimble TX8
思っていたとおり、Tangoは一部の部分ではよくキャプチャーできたが、一部のエリアではデータがずれてしまっていた。センサーの温度、照明の具合、パスの数など、いくつかの要因がキャプチャーに影響を与えていたのは間違いない。こうした最新のテクノロジーの場合、いちばんいい使い方を見つける必要がある(たとえば、ターゲットを追加して同じところを2度スキャンするなど)。さらに、私はユニットから生のデータを取り出した。Googleには、バンドルアジャストメントに基づく高密度なマッピングを行うためのオフラインプロセスがある。これを使えば、データのずれは軽減されるはずだ。しかし、まだそれを試す時間がない。
それでも、今は次なる電話機やタブレットのまさに始まりの時期にある。ひとつのデバイスにいくつものセンサーを統合し、アクセサリーを追加する必要がなくなれば、ゲームからプロ用のものまで、新しい分野のアプリの市場も開ける。拡張現実を使ったゲームは、すでに新しい次元の体験を私たちにもたらしている。ショッピングの方法も大きく変わることだろう。イケアのアプリにTangoでスキャンした部屋のデータを送れば、そこにピッタリの棚が選択でき、オンラインで注文すればイケア・ドローンが届けてくれる……なんてね。
ドローンと言えば、ロボットにTangoを組み込んで、特定の目標に向かって進むときに障害物を避けるようにプログラムすれば、ロボットの視界を簡単に強化できる。
ロボット工学でのTangoの応用の可能性は他にもある。Googleは、3D Robot IrisやYujin RobotのKobukiなどに対応できるようUSBからシリアルへの変換ドライバーも用意している。USB2 OTGを使えばスレーブアクセサリー(ロボット)との接続が可能だ。オプションとしてUSB 3.0ポートで充電もできる(これはとくに、充電ドックに自分からドッキングするKobukiに便利だ)。
今は始まったばかりだ。世界中の頭のいいアプリ開発者やMakerたちがTangoの新しい使い方をどんどん見つけ出すことだろう。自分撮り以外のね。
–
[原文]