Fabrication

2013.04.12

3Dプリンターはどれだけ普及するか

Text by kanai

3D-Printing_Cover_Web_2

今週、私は3人のベンチャー投資家に会って話を聞いた。彼らは3Dプリンター市場について知りたがっていた。3Dプリンターに対するビジネス界の注目が集まる兆しだ(MakerBotは2011年に1000万ドルの投資を受けたが、新たな投資を受けることになるらしい)。

3Dプリントはどれほど大きくなるだろう。どれだけ売れるだろう。100万軒の家に普及するまで、どのくらいの時間がかかるだろう。大勢の人たちに向かって、どれだけの人が3Dプリンターを持っているかと聞いたことがある。手があがったのはほんのわずかだった。3Dプリンターを欲しい人は、と尋ねたら、ほとんど全員が手をあげた。それほどみんなが欲しがっているのだが、3Dプリンターがもっと多くの家庭に、もっと多くの人たちの手に導入されるようになるために必要なこととは、なんだろう。

3Dプリンターの生産がなかなか追いつかないというところを見ると、今、需要は供給を上回っている。しかし、だからと言って、もっと3Dプリンターが売れるとは限らない。3D プリンターのメーカーは、3つの異なる方向へ分かれていくことになるだろう。

  • 買いやすさ
  • 使いやすさ
  • 信頼性

3Dプリンターが、もっと安くなって高機能になっていくのは間違いない。大量に作られればコストも下がる。製造工程も洗練されるだろう。Kickstarterで勢いを得た3Dプリンタープロジェクトの多くは、人為的に低価格を設定している。材料に多くの予算を費やして、実際の賃率を大幅に下げている。彼らにとって、大量生産はひとつの試練だ。同時に、3Dプリンターが日用品になるかとう問題がある。PCのように、基本的に設計が同じで、組み立ても使い方も共通する製品になるのだろうか。

昨年秋に我々が行った3Dプリンターのテストでわかったのは、使い勝手のレベルがまちまちであることだ。それは、箱から出して、セットアップ、使用を開始するまでの手順から、プリンターの接続方法、オブジェクトを製作するソフトウェアのインターフェイス、それをプリンターに送るまでの作業のやりやすさだ。3Dプリンターがオープンになるほど、使い勝手に関するメーカーの工夫がやりづらくなり、使いやすさが犠牲になっていく。

信頼性も、もうひとつの問題だ。たとえば、オフィスやMakerスペースや学校などに設置すれば、経験や忍耐力に差のあるいろいろな人がそれを使うことになる。パーソナルな3Dプリンターが、その重荷に耐えられるだろうか。それとも、各プリンターに「管理者」を指定して、定期的に調整を行って運営を管理しなければならなくなるのか。そうなれば、マシン自体の価格よりも、それを所有するためのコストがずっと高くなってしまう。たしかに、業務用の3Dプリンターは信頼性が高いが、それを購入して運用するためのコストも高い。

それで、今、どれだけの人が3Dプリンターを持っているのだろうか。パーソナル3Dプリンターは、10万台までは売れていないと私は推測する。毎年、2倍ずつ販売数が伸びるとして、100万台に達するまでに5年かかる。毎年3倍としたら、2年半で100万台に達する。

100万人の人に3Dプリンターを買わせるための動機には何があるだろう。便利さが、家電感覚で購入したくなる要因になるだろうか。ドレメルのように、ごく普通の家庭用工具として認められるだろうか。ゲーム機やメディアプレイヤーのような娯楽機器として受け入れられるのだろうか。モデルロケットや模型船舶などのホビイストたちのための特別な機械と認められるのだろうか。

100万台売れた家庭用の機械には、何があるだろう。

コーヒーメーカー エスプレッソマシンは何台売れているのだろうか。コーヒーメーカーに関するエネルギースターの報告書(PDF)によれば、アメリカでの2010年のエスプレッソマシン小売り販売台数は140万台とのことだ。その売り上げは、コーヒーメーカーの市場全体から見れば、ほんの6パーセントに過ぎない。私の両親の世代は、「ミスターコーヒー」がスタンダードだった。自動ドリップ式のマシンだが、これが市場の75パーセントを占めている。一杯ずつ入れるキューリグのようなタイプのマシンは19パーセントだ。同じエネルギースターの報告書には、アメリカ家庭でのエスプレッソマシンの普及率は、2009年で16パーセントと書かれている。

オーブントースター オーブントースターに関するエネルギースターの報告書 (PDF)によれば、2010年、アメリカでは1010万台のオーブントースターが売れている。

ルームランナー 家庭用の健康器具はどうだろう。運動器具製造者協会のTreadmill-Worldの報告によれば、「2010年、およそ5000万台(のルームランナー)が販売された。これはエリプティカルトレーナーの約2倍にあたる」とのことだ。

プリンター 2010年から2011年にかけて、「(インクジェットプリンターの)総売上は1310万台から1156万台に落ち込んだ」と、コンピュータープリンターの市場の死について書かれた ComputerWorld誌の記事は伝えている。若い人たちが印刷物に頼らなくなってきていると指摘している。

私は、ツールというよりオモチャとして3Dプリンターが見られるようになるだろうと感じている。3Dプリンターは楽しい。近い将来、3Dプリンターは、便利というよりクールに、実用的というより遊べる感じに発展すると私は予測する。私が子供だったころのテープレコーダーのようにだ。3Dプリンターで何かを作るということに魅力がある。人々は、ボートやRVや四輪バギーなどといった、それほど便利でも実用的でもないものに多額の金を使いたがる。そうしたものは、みんなが持っているわけではないが、私が考えるよりも多くの人たちが、それを買える経済力がある。

コンピューターのプリンターをコーヒーメーカーと比較することはできる。どちらも高くても大量に売れているものだ。3Dプリンターは、どちらかと言えばエスプレッソマシンだ。普通のものよりも5倍から10倍の価格だ。エスプレッソマシンを買う人は、ドリップ式のコーヒーメーカーとどちらにしようかと悩んだわけではない。スターバックスでいくら使うかという計算はするかもしれないが、問題は価格ではないのだ。もしあなたが3Dプリンターの製造者なら、同時にコーヒーのパックも販売する、一杯ずつ抽出するコーヒーメーカーのスタイルを採用してはどうだろう。マシンを大量に安く販売して、フィラメントで元をとるのだ。

そこで私の結論。3Dプリンターは、ライフスタイル製品として見られるようになるだろう。ジェットスキーやエスプレッソマシンのように、楽しむためのものだ。どう思う? ちょっと保守的な考えだろうか。みんなは、どれくらい早く100万台に達すると思う? 売り上げを伸ばすために必要なものはなんだと思う?

– Dale Dougherty

原文