2015.07.08
Solidカンファレンスから:次なるハードウェアは生物?
O’Reilly Mediaが主催するSolidカンファレンスが、今年もサンフランシスコで開かれた。年に1回開かれる催しで、「ハードウェア、ソフトウェア、モノのインターネット」を題材にしている。それは目からウロコの、情報価値が高い、ときとして論争を呼ぶものでもある。今年の内容をいくつか紹介しよう。
MIT Media Lab所長の伊藤穣一が語る、合成生物学に入れ込む理由
合成生物学
伊藤穣一 MIT Media Lab所長は、遺伝子をコーディングしてバクテリアにプリントすることがすでに可能だと話した。
彼の予測では、生物学にムーアの法則が当てはまりつつあるという。生物工学がインターネットやハードウェア革新の5、6倍のスピードで成長している。実際、20年前ならノーベル賞だって取れたであろう生物学の実験が今ではキッチンでできると彼は言う。彼の言うとおりなら、未来にはハードウェアとソフトウェアと生物学が収斂することになる。
Other Machine Co.のCEO、Danielle Applestoneは、小さなハードウェア製造会社のハッピーなお客さんを紹介した
もうひとつのマシンともうひとつのフライス盤
Danielle ApplestoneがCEOを務めるOther Machine Co.は、デスクトップ・CNCフライス盤、Othermillを作っている会社だ。Makerたちに、市場に出る製品になった気持ちになれと話した。製品とともに個人的なエクスペリエンスを届ける必要があるが、中小のハードウェア製造業にはいくつかの問題が立ちはだかると彼女は言う。
・ハードウェアの世界は厳しい。
・物理的製品のマージンはとてもとても小さい。
・製造業者と契約をすると、2〜3パーセントの利益幅を取られる。
・すべてのハードウェア、ソフトウェア、サービスは、結局は共有化される。
ではなぜ小さな製造業者が生き残れるのか?
パーソナライゼーションと彼女は言う。それが差別化を生む。彼女が上げた例はズボンを買うことだ。みんなが買っているほとんどのズボンは、自分に合わせて作られたものではない。多くの人の要求にだいたい応じられるものを、多くの人にだいたい合うサイズで作られている。しかし、そこから外れる人もいる。人それぞれに合わせられないところが問題であり、またチャンスでもある。なぜ、それぞれの体をスキャンして、ぴったり合った服を作れと客は要求しないのだろうか?
大量生産している企業では、この要求には応えられない。小さな業者なら可能だ。お客さんに合わせてパーソナライジングできるのだ。個人的な要求や必要に応じて作られたものは成功すると彼女は確信している。それは企業の大きさとは関係がない。むしろ、これこそが小さなハードウェア製造業者が生き残る道だと考えている。
なぜDMCAが最悪なのかについて熱っぽく語るCory Doctorow
Electronic Frontier 財団
Cory Doctorow の基調講演は、DMCA (デジタルミレニアム著作権法) の破壊的な自由を阻害する性質についてだった。Electronic Freedom 財団のウェブサイト (Doctorow がアドバイザーを務めている) には、DMCA には、コンピューター化されたデバイスを使うすべての人が知っておくべき2つの重要な条項があると書かれている。
デジタルミレニアム著作権法 (DMCA) には、2000年に施行されて以来論争の元となっている2つの条項があります。「迂回禁止」規定 (著作権法第1201条) は、アクセスコントロールと技術的保護方式の迂回を禁じたものです。「免責」条項 (第512条) は、一定の条件を満たしたサービス提供者を、ユーザーまたはネット上の第三者の不法な行為による金銭的な損害から守るものです。
残念ながら、「私たちのインターネット上の自由を破壊する」企業に金を払うことを完全に回避する方法はないとDoctorowは言う。そこで、対抗措置として、これまでそうした企業に支払った金額の何パーセントかをElectronic Frontier財団や、同様のインターネット擁護団体に寄付してほしいと訴えた。
ポップアップ工場
今回のカンファレンスで面白かったのは、会場にマイクロファクトリーができて、そこでAlikeデバイスを作っていたことだ。このマイクロファクトリーは、デザイナーのMarcelo Coelhoと、Seeed Studios、Formlabs、Proto Labs、ANT Wirelessの協賛で実現した。
ここでは、Solid参加者が腕に付ける光るデバイスを作っていた。これらは、興味の対象が似ている人が隣に来ると緑色に光る。モバイルアプリからの情報を元に反応している。
ケースは、Form 1プリンターの一群で作られていた。
プリント基板にハンダペーストが塗られると、パーツがペーストの上に並べられた
カンファレンスの前にすでに作って用意されていた基板は、ハンダペーストを塗られ、ピックアンドプレースマシンに入れられてパーツが配置される。
ボードはリフローオーブンでリフローハンダ付けされる。
ハンダ付けされた基盤は検査の後、ファームウェアが焼き込まれる。
最後に、ケース、バンド、基板が組み立てられる。
ケースを外した完成品
来年のSolidカンファレンスはサンフランシスコのFort Mason Centerに帰ってくる。4月20日から22日だ。ハードウェア、ソフトウェア、合成生物学の未来に興味のある人は、ぜひ参加してほしい。
[原文]