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2015.11.13

Makeblock:深圳で生まれた21世紀の組み立てブロック

Text by kanai

Photo Credit: Makeblock
写真:Makeblock

Makerムーブメントが中国でブレイクしようとしている。それは7月に開かれたMaker Faire Shenzenを見ればわかる。中国政府もスポンサーについた大きなイベントだった。Maker Faire Shenzenのエグゼクティブプロデューサーを務めたSeeed StudioのKevin Lauは、4つの街から数百名のMakerを集めて、2014年の10倍の規模にイベントを成長させた。

中国の李克強首相は経済の立て直しに力を入れているが、1月に深圳のメイカースペースを訪れた際に、「クリエイティブなアイデアを持つMakerはビジネスを立ち上げるための援助が必要だ」と話した。深圳の副市長も、この好機をとらえて「深圳はMakerの街だ」と述べている。中国政府は、スタートアップやスモールビジネスを支援する、中国のMakerのための起業エコシステムを構築したいと考えている。この新世代の起業家のプロトタイプが、MakeblockのJasen Wangだ。

Wangは、語り口は柔らかいが眼光鋭いエンジニアだ。5年前、修士課程を終えた彼は、ハードウェアの会社を立ち上げようと深圳に来た。2011年、彼は、エレクターを刷新したような組み立てブロックを製造する会社、Makeblockを設立した。そして同社は、深圳に拠点を置くインキュベーター、HAX Acceleratorに、ファーストクラスの企業として認められた。2013年、彼は初めてのKickstarterキャンペーンを行い、18万5000ドルの資金を獲得した。昨年は、Sequoia Capitalから600万ドルの投資を受け、今年は従業員を10人から90人に増やし、製造、ソフトウェア開発、デザインの専門家も雇い入れた。

Makeblock 2

Makeblockは、アルミの支柱、メカニカル部品、エレクトロニクスモジュールで構成され、Arduino互換コントローラーと標準的なセンサーを備えている。「私たちは、オープンソース技術を含む最新技術をたくさん統合させました」とWangは解説する。Makeblockは、音楽ロボットやXYプロッター、さらには3Dプリンターなども組み立てることができる。よくできた製品で、パッケージもカラフルで、価格も手頃だ。

Wangは、Makeblockの新製品、Mbotを興奮気味に見せてくれた。子ども向けの教育用ロボットで、Scratchに似たプログラミング環境でArduino互換ロボットをコントロールする。MbotのKickstarterキャンペーンは5月に終了したが、2500人の支援者から28万5000ドルを集めた。75ドルという価格は「どの子どもにとっても手頃で、ロボティスクとプログラミングの両方が学べる」とWangは話す。Mbotには青とピンクの2色があり、それには賛否両論がある。

Maker Faire Shenzenには、Kickstarterで成功したMakerたちが多く出展していた。出資金を獲得した人たちばかりでなく、すでに製品を販売している人たちもいた。彼らの支援者は、ほとんどが外国人だろう。しかしもっとも印象深かったのは、キャンペーンに成功してから製品を出荷するまでの時間の短さだ。そこには深圳の製造能力が深く関わっている。Wangは、Mbotをキャンペーン終了から1カ月から2カ月で出荷する予定でいた。アメリカなら、運が良くても製品化までに18カ月はかかるところだ。

Makeblock3

Wangによれば、Maker Faire Shenzenで、より多くの中国人がMakerムーブメントに接して、Mbotもたくさん売れたという。「新しいお客さんが大勢できました。それまでMakerという言葉を聞いたこともなかったパートナーが、今ではその意味を理解しているからです。そしてそれが、自分の子どもたちや自分自身にとって重要なことだとわかるようになったからです」

深圳のMaker Weekでは、Makeblockは48時間のロボティクス大会を開いた。テーマは「琴を弾く、チェス、カリグラフィー、絵を描く」というものだ。10チームほどが深圳に集まり、それぞれ必要なMakeblockの部品を持ち込んだ。遠くはユタ州やイタリアから参加したチームもあった。いくつかお絵描きロボットが作られた。水彩画を描くものや、ユニークな方法で絵の具を撒き散らすものもあった。優勝したのは、/dev/nullという名のイタリアのチームだ。作ったのはLight Saber Chessbot。身長約60センチのチェスの駒の形をしたロボットで、レーザーポインターで指し示した場所に動く。参加チームは、みな創意工夫に溢れ、チームワークの良さを見せてくれた。そして、Makeblockはなんでも作れることを実証した。

オリジナルのエレクターセットは、A.C. Gilbertによって開発された。子どもは正しいツールを与えられれば自分で自分を教育する、と彼は信じていた。Gilbertは、20世紀の初めに、ニューヨークで建設が進んでいた超高層ビルの構造材が宙に組み上がっていく様子を見て、それを思いついた。物理的モジュールと電子的モジュールからなるWangのMakeblockも、21世紀に、Makerたちが深圳に大量に持ち込んだものに影響を受けているに違いない。

MakeblockはMakershedで販売されている。

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