2016.02.15
レコードのようにカセットテープをスクラッチする組み合わせ式システム
Makerプロジェクトの中でも、音楽関係のイノベーションが大好きだ。コンピューターやバイオハッキングや天文学といった分野には計り知れないものを感じるが、音楽は、その表現方法が限られているメディアであるために胸を打つのだと思っていた。だがその考えは、Scratchetteによってくつがえされた。
フランス人ミュージシャンのAlexis Malbert(またの名をTAPERTRONIC)は、90年代後半からレコードやCDやテープや電子回路など、さまざまなメディアを使って音楽のハッキングを行い、ヨーロッパ中のアートギャラリーでライブショーを行い、その創造力を披露している。
特に彼が気に入っているのはカセットテープだ。Malbertは自身のウェブサイトでこう話している。「ドイツに1年間住んでいたときのこと、毎晩、工房でテープを巻き戻していたのだけど、そこからScratchetteのアイデアが生まれた(改造プレイヤーを使えばカセットでスクラッチができるぞ)。私はたちまち興奮に包まれた。この考えをぜひとも実現させなければ!」そう思いつき、彼はドレメルを手にし、テープを分解して、面白いものを作った。
それからMalbertは、 Scratchetteをモジュラーサーキットベンディングを施したカセットテープシステムに発展させた。これは単なる音声出力の実験ではない。音を生み出すシステムの実験でもあるのだ。通常、サーキットベンディングはひとまとまりの回路で行うものだが、Malbertはさまざまな効果を生み出すために、組み合わせ式のシステムを開発した。いちばん上のビデオは、80年代のBop-itのコマーシャルの異次元スピンオフのようだが、その音楽はたしかに面白い(ちなみに、歌はフランス語で「私はカセットを交換した」と言っている)。スクラッチの音も、レコードを使ったスクラッチとは異質なものに感じられる。下のデモビデオは短気なロボットを思い起こさせる。
Malbertはこう話している。「今日、アナログはデジタルとの合意に達し、長年の対立の垣根を越えた。好奇心を惹きつけようとするならば、これは、創造に必要なツールの倍増に欠かせないというより、むしろそれを活気づけるものだ。テープには明るい未来がある。ただし、新しい形でだ!」
[原文]