2022.03.08
おとでん通信 #16|オーディオ環境のはじめ方ガイド—フォスター電機さんに聞く
お久しぶりです! おとでん通信は早くも3年目に突入することになりました。
今回はなんと、オーディオブランド、Fostexでおなじみのフォスター電機さんに伺い、インタビューを行ってきました。以前のおとでん通信でセメダインさんやHAKKOさんにインタビューさせてもらったときと同様、DIYの幅を広げるための第一歩を「オーディオ」をテーマにしてお届けしたいと思います!
この前編では、日常でもっと音を楽しむためのtipsや、いまさら聞けない基礎知識をご紹介。後日公開の後編では、メイカーのみなさんに向けた自作スピーカー情報などをお届け予定です!
インタビューは、フォスター電機株式会社マーケティング部の近藤淳一さん、フォステクスカンパニーの乙訓克之さんのお二人にご協力いただきました。
フォスター電機の試聴室でインタビューさせていただきました!
意外と知られていない空間での音作り
家で音楽や映像を鑑賞するとき、みなさんはどんな環境で楽しんでいますか?
近年発売されるスマホやPCは、内蔵スピーカーのクオリティがどんどん上がってきています。ちょっとめんどくさいときや、お風呂に入っているときなんかは、スマホからそのまま音楽を聴いたりする方も多いのではないでしょうか。
ですが、スマホやタブレットでの再生は、空間に音を広げて楽しむためには力不足です。
映像配信の場合、その画質が良いとわかりやすくうれしかったり、DVDよりはBlu-rayをこだわって買う方も多い一方、スピーカーはそこまでこだわりがない…という声もよく聞きます。ヘッドホンやイヤホンを奮発して購入した経験がある方もいるかもしれませんが、スピーカーはどうでしょうか。
もちろんオーディオ好きのみなさんはスピーカーに詳しいと思いますが、そこまでの専門知識はない人が大半です。家電量販店のスピーカー販売エリアはラグジュアリーで足を踏み入れるのにはかなり勇気がいりますよね。
……何が言いたいかというと、スピーカーを使い、空間で音を楽しむのってハードルが高いのです。ヘッドホン・イヤホンは購入すればそれひとつだけで完結しますが、空間で音を楽しむにはアンプやスピーカー、再生機など準備するものや連結するものがたくさんあって、何を買えばいいのかわかりづらいです。(アンプを内蔵している「アクティブスピーカー」であればそれひとつで完結しますが、逆に他の機材をプラスして工夫することができなくなります。下の方に詳しく書いております!)
今回フォスター電機さんに伺った乙女電芸部の部員は比較的音楽好きなほうで、家でのスピーカー環境にはこだわっている方ですが、選択肢が多いので、購入するときはかなり悩みました。ですが……! 一度導入すると、その環境の良さに驚いたことを思い出します。
Bose Smart Soundbar 700とウーファー+ツィーターの環境です
フォスター電機のお二人がおっしゃっていた「ヘッドホン・イヤホンは当たり前だけど、空間の音作りは知られていない」という言葉がとても印象的でした。プロがレコーディングなどで音楽を作る場でも最終的に空間(スピーカー)で音を聴いてどういう音にするか決定されているそうなので、聴く側もスピーカーで聴くほうが作り手のデザインした音を楽しめますよね。
ここ数年で増えたライブ配信や、自宅で映画を楽しむ時間には、スピーカーは不可欠な存在。せっかくいい映像を楽しむなら、いい音もセットで楽しみたいし、推しの声を空間で感じて、「そこにいる」感を味わいたい……。
ヘッドホン・イヤホンをずっと耳につけているとどうしても疲れてきてしまいますし、スピーカーで空間の音作りをすることがおすすめだそうです!
空間でオーディオを楽しむ初心者さんのためのおすすめスピーカー
そこで、フォスター電機のお二人に「まずはここから」的なおすすめのセットを聞いてきました!
おすすめしていただいたのはP802-Sというスピーカー。左右セットで16,500円(税込)とお手頃です。大きさは高さ19.5cm、幅10cm、奥行き13cmとコンパクト。ぬくもりある木目がインテリアにもマッチしそうです。
実際に音を聴いて、その良さに驚きました。音だけ聴いたら、10万円のスピーカーと言われてもわからないかも。いいヘッドホン・イヤホンを買うことを考えると、同等かそれ以上の金額がしてしまうと思うので、思ったよりお得な金額だな〜と感じました。
さらに驚いたのは、音量をかなり絞っても、音の迫力が満点であること。小さな音量でもスカスカにならず、細部までよく聴こえてきます。お二人いわく、「スピーカーは大きい音を出すものだという思い込み」が多くの人の中であるようです。確かに、スピーカー=爆音のイメージがありますが、そうではなく、爆音でも小さい音でもよく聴こえるのがいいスピーカーだということを体感できました。
マンションなどで大きい音を出せない一人暮らしの方や自分の部屋で家族と離れて音を楽しみたい学生さんなどにも、よいスピーカーがあると便利なのかもしれません。
商品ページにはアンプの接続方法も丁寧に動画で解説されていました。初心者に寄り添ってくれている想いが伝わってきます!
※スピーカーに必須のアンプについてはこの記事の終わりの方で私たちからも解説します。
Bluetoothってどうなの? ハイレゾ、ロスレスって何?
少し話題はそれますが、今もっともメジャーな音楽視聴環境といえそうな、スマホ+Bluetoothイヤホン。移動中の音楽の聴き方としては一番お手軽ですよね。さらに家電量販店にはお手頃価格のBluetoothスピーカーも数多く並んでいます。スピーカーと言われて最初に想像するのがBluetoothスピーカー、という人も多いのではないでしょうか。ケーブルのわずらわしさがなく音楽を再生できる無線環境はとても便利。無線しか使ったことがないという若い世代の方も多そうですね。
また、最近Apple MusicやSpotifyなどの音楽配信サービスでは「ロスレス」「ハイレゾ」と表記された曲を見かけます。音質が良さそうに見えますが、Bluetoothの視聴でもその恩恵を受けられるのでしょうか?
そこで、フォスター電機さんにBluetoothを介した音楽視聴環境についてもうかがいました。
まずハイレゾとは、「High-Resolution Audio」の略でサンプリング周波数、量子化ビット数のどちらかがCDスペックよりも高くてもう一方がCDと同スペックの場合、またはどちらもCDスペックよりも高い場合のことを言います。
普通のCDは44.1kHz/16bitですが、ハイレゾ音源では192kHz/24bitなどのものもあります。これはCDの6.5倍の情報量を持つので、より高解像度で高音質で聴けるということです。
そしてロスレスとは、音源を圧縮しないか可逆圧縮方式(元通りに復元できる方式)で圧縮された音源のことです。元のデータがCDであれば、CDクオリティのまま劣化せずに聴けるということで、元がハイレゾ音源であればハイレゾ音質のまま聴けるということですね。
ちなみに、Apple Musicではロスレスは最大48kHz/24bit、ハイレゾロスレスは最大192kHz/24bitで聴くことができるそうです。
ではそれらをBluetoothで聴けるのかということについてですが、簡単に言うとBluetoothは帯域が狭い(一度に転送できるデータが少ない)ので、その帯域内でデータを飛ばすために変換をする過程で音質が劣化してしまうそうです。その変換の方式はiPhoneが勝手に決めたり、ヘッドホン・イヤホン・スピーカーによって異なるとのこと。
一方、Bluetooth以外の無線規格もあります。iPhoneなどiOS環境の「AirPlay」はWi-Fi経由なのでBluetoothよりも帯域が広く、上記のような劣化がないことが特徴。ただし、圧縮自体は避けられないため、ハイレゾ音源を聞くにはやはり圧縮のない有線の必要があるということです。
Bluetoothを介した音を楽しむ環境は、そのお手軽さとトレードオフに、有線に比べると音質が少し劣るということですね。気軽に無線でBGMとして音楽を楽しみたいときはBluetoothで、集中して音楽を聴きたいときは有線でハイレゾを楽しむなど、TPOに応じて使い分けるといいのではないでしょうか。
フォスター電機の近藤さんは、通勤時はBluetoothイヤホンを使用しているそうですが「電車内で無理に高音質を求めるのではなく、聴いていられる音楽を楽しんでいる」とおっしゃっていました。環境やデバイスに応じて音源を選んで楽しむという方法もあるんですね!
ということから、初心者がせっかくお金をかけるのであれば、家の環境=スピーカーが良いのでは、とおっしゃっていました。ちなみに、BluetoothスピーカーもBluetoothイヤホン同様に、データを飛ばす際に生じる音質の劣化は避けられないそうです。
おとでん的 空間で楽しむオーディオ環境のおすすめ
フォスター電機のお二人から学んだのは、
・スピーカーは大きい音だけでなく小さい音も楽しめる
・スピーカーや周辺機器にある程度お金をかけると、QOLが上がる
・ライフスタイルにあった環境がカスタマイズできる
という、スピーカーの楽しさについてでした!
3つめの「ライフスタイルにあった環境がカスタマイズできる」は、スピーカーやアンプ、音源再生機の組み合わせによって可能になります。たとえば一人暮らしから家族ができて引っ越しをしたり、聴く音楽のジャンルや音源の規格が変わったりといった変化があっても、すべて買い直すのではなく、カスタマイズして長い間楽しむことができます。
そこで前編のしめくくりとして、私達がおすすめする「おとでん的 空間で楽しむオーディオ環境」を提案したいと思います。
まず、音を鳴らすのに必要な最低限の構成はこちら。
上で説明したように、このようにアンプの内蔵されていないスピーカーであれば色々とカスタマイズを楽しむことができます。以下の図のようなアンプとスピーカーが一体になっているアクティブスピーカーや、音源再生機まで一体になっているコンパクトステレオシステムだと、カスタマイズを楽しむことができません。「そんなこと言われてもアクティブスピーカーとスピーカーの違いがわからないよ〜」という方は、スピーカーに電源スイッチ、電源コードがあるかを見ましょう。「スピーカー」には電源供給がいらず、スピーカーケーブルでアンプに接続すると機能するためパッシブスピーカーとも呼ばれます。(上の図を参照)「アクティブスピーカー」はアンプが内蔵されているので電源供給が必要で、パワードスピーカーとも呼ばれます。
カスタマイズできない事例1.アクティブスピーカーにはアンプが内蔵されていて電源コードがついています。
カスタマイズできない事例2.昔で言えばラジカセも完全一体型です。
ぜひこれからスピーカーを購入する方はアンプが内蔵されていないスピーカー単体での購入をおすすめします!
おすすめ① 一人暮らしで思う存分推し活を楽しみたい方
一人暮らしの方が、音楽グループやアニメなどの推し活を最大限に楽しめる環境を考えました。ついつい手軽なスマホやタブレット端末で鑑賞している方も多いかもしれませんが、質の高いスピーカーで再生すれば、コンサートに参戦しているかのような盛り上がり間違いなし。推しの声や演奏も鮮明に聴こえます!! 一人きりの空間で思い切り没入感を楽しみましょう。
一人暮らしの場合、ワンルームのアパートなどの場合が多いと思いますので、面積が限られた部屋で楽しめる環境が必要となります。ご近所迷惑にならないよう、音漏れにも注意する必要がありますね。
そこで、配信ライブやBlu-rayをPCで楽しむ方用のおすすめセットを紹介します。Blu-rayの音声フォーマットは数種類ありますが、どれもCD音質を超えるハイレゾです。せっかくBlu-rayを視聴するならハイレゾ対応のアンプとスピーカーで聴きたいですね。
- ハイレゾ対応のUSB接続アンプ(Fostex PC200USB-HRなど)
- ハイレゾ対応の小さめスピーカー(Fostex P802-Sなど)
低音用のウーファーや高音用のツィーターのトッピングでグレードアップを楽しむのはもちろん、スピーカーはその後のライフスタイルの変化でも長く使えます。P802-Sのように小さめのスピーカーなら、家族が増えた場合は寝室やこども部屋用に設置しても良いですね。
おすすめ② 古いCDコンポのスピーカーを活かして、サブスクを楽しみたい方
CDコンポは家にあるけど、サブスクの音楽サービスに接続できないから置物になっている… という方はスピーカーはそのままで、コンポ部分をネットワークレシーバーやCDレシーバーに置き換えるとサブスクも楽しめちゃいます!
ネットワークレシーバーとは、W-iFiやBluetoothでスマホやPCと接続して音源再生できるアンプのことで、CDレシーバーはネットワークレシーバーにCD再生機能を追加したものです。
おすすめはAirPlay対応のネットワークレシーバー。上の方で説明したようにBluetoothよりもAirPlayのほうが無線でもロスレスで送信できます。また、Spotifyなどのサービスに直接アクセスできるレシーバーもあるので、ご利用中のサブスクに合わせて考えると良さそうです!
- CDレシーバー(Pioneer XC-HM86など)
- お持ちのスピーカー
2つの例をおすすめしましたが、ご自身の環境や聴きたい音楽によってカスタマイズは無限大です。ぜひ楽しんでオーディオ環境を整えてみてください。
次回はメイカーの皆さんにぴったりな自作スピーカーについてお話しますので自作も合わせてご検討ください!
おとでんの日常
今回はスピーカーのお話が中心でしたが、通勤中などはAirPods Proを使っています。Apple MusicでDolby Atmosの表示がある曲はAirPods Proで空間オーディオをONに設定すると空間的にまわりから音が聴こえるようになります。自分のまわりに演奏者がいるように感じられて、ボーカルは常に自分の正面にいるように聴こえるので、首を右に振ると左のイヤホンからボーカルの音が大きく聴こえ、左を向くと右のイヤホンからボーカルが聴こえてきます。
普段あまり首を左右にふって音楽を聞くことはないと思うので、それ何が楽しいの?と聞かれるかもしれませんが、最高に楽しいシチュエーションを見つけました!!
それはウインドウショッピングです。AirPods Proをつけながらお店を歩いてみてはじめて気づいたのですが、ウインドウショッピング中ってかなり首を左右に振っているんですよね。自分のまわりをバンドが演奏しながらショッピングを盛り上げてくれるのです! AirPods Proを持っている方はぜひお試しください〜(ちなみに外を歩くときは危ないのでノイズキャンセリングはオフにしましょうね)