Fabrication

2016.03.30

3Dプリントと真空成形で歯科矯正装置を作る

Text by Gareth Branwyn
Translated by kanai

医療での応用が3Dプリンターのキラーアプリになると言われて久しい。過去において、「Make:」でも、健康の増進から救命にいたるまで、一般の人たちが考案した3Dプリントした義手命を救うライフハックなどの驚きのイノベーションを紹介してきた。今度はこのリストに、歯科矯正を加える番だ。すでにAmos Dudleyは、彼自身の八重歯を治すために矯正装置を3Dプリントした。これを彼はチャーミングにも、いかにして自分の顔をオープンソースにしたかというタイトルでブログ記事を書いている。

Amosが八重歯を治すための型を3Dプリントしようと思ったのは、この市販の歯科矯正装置の写真を見てからだ。彼は、その装置に残っていた3Dプリントのレイヤーの跡である筋に注目した。

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いろいろ調べて、その作り方に関する情報がかなり集まった。今は、型を3Dプリントできるようにスキャンして、正確で付け心地がよいようにバキュームフォームで矯正装置が作られてる。彼は自分で作ることを決心した。彼はこう書いている。

では、自分で作るためには何が必要でしょうか? 歯科医矯正ムーブメント、3Dスキャン、歯の型、CADソフト、高解像度3Dプリント、矯正装置の材料、バキュームフォームマシンに関する知識です。私は気がつきました。私はこのすべての知識がある(身につけた)と。私は3Dプリンターを持っていますが、サイズの精度はあまり高くありません。NJITには、Stratasys Dimension 1200esを備えたデジタルファブリケーションラボがあります。それを使えばできるはずです。テストしてみたところ、XY方向の誤差は0.1mm以下であることがわかりました。なんとかいけます。Formlabs Form 2などのステレオリソグラフィー・プリンターなら、XY方向の解像度がより高く精度も高いため、なお適切です。高さ方向の解像度はそれほど問題になりません。移動方向はX方向とY方向で、Z方向はへ動かないからです。このラボにはバキュームフォーミングのマシンもあります。NextEngineレーザースキャナーも数台あります。

彼が最初に行ったのは、安価なアルギン酸パウダーと石膏を使って自分の歯の型を取ることだった。そして、彼の歯の状態がより正確にわかるよう、印象用トレーを3Dプリントした。LI-r(右の側切歯)が前に飛び出していて、CL-r(右の中切歯)が内側に押し込まれ、他の歯と重なっていることがわかる。

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彼のブログ記事には、アルギン酸で歯の型をとってから石膏でキャストするまでの工程が駆け足で書かれている。キャスティングが自在にできるようになった彼は、歯のレーザースキャン(NextEngineを使用)を行い、スキャナーソフトウエアを使って、ゆっくりと歯が矯正できるように一連の装置のSTLファイルを作った。矯正用の型を3Dプリントすると、それをバキュームフォームした。フォームを作ったあと、ドレメルを使って、歯茎に当たらないよう、尖った部分を磨いた。

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これがビフォーとアフターの写真。16週間後の結果だ。

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彼はこんな感想でプロジェクトをまとめている。

私の知る限りでは、私はプラスティックの矯正装置を手作りした最初の人間だ。ブリッジよりもずっと快適だ。歯によくフィットする。最初にできたものを装着したとき、矯正したい歯にだけ圧力が感じられるようになっていると感じられてうれしかった。成功だ! 私はそれを昼夜を問わず16週間装着し続けた。外すのは何かを食べるときだけだ。私は、現在の歯の位置の矯正装置をたくさん作っておこうと考えている。死ぬまでの間、夜間に装着するのだ。たまたま発見したのだが、これは完璧なホワイトニングトレーにもなるということだ。ちょっと削るだけでいい。それに、夜の食いしばり防止装置にもなる。コンパクトなのがいい。

ご想像のとおり、またすべてのDIY医療に言えるのだが、これには大きなリスクが伴う。これはあくまで、非常に思慮深く慎重な人間が行った実験だ。彼はリスクを覚悟している。簡単に行うべきものではない。ある人は、おそらく歯科医だろうと思うが、Amosのサイトにこうコメントしていた。「……とても見事ですが、装置は単にトレーの形をしたアクリルというだけの簡単なものではありません。理解すべきは、一般の歯科にかかっている間、4、5年の間に動いた歯を、矯正の専門家によって4年かけて治すということの意味です。トレーにかかるコストばかりを考えるべきではありません。固定式の矯正装置で行うべきところを、取り外し可能なトレーで代替することのリスクは言うまでもありません。大変に危険です」

では、このトレーのコストはいかほどだろうか? Amosによると、材料にトータルで60ドルほど使ったという(マシンは無料で使えた)。一般的な歯科医で歯の矯正ブリッジを作ってもらうと、3000ドルから8000ドルはする。

Slateより)

原文