Makerコミュニティで旅をしたり記事を書いたりしていると、会話のなかでよく耳にするのが「何も作ってないのだけど、このコミュニティが好きです。どうしたら仲間になれるでしょうか?」という決まり文句だ。そうした声は、大きな人口をかかえるサンマテオなどの大規模なMaker Faireでも、何もないところに建つ工房に押し込められた小さなメイカースペースでも聞かれる。
それらの人々は、ただMakerムーブメントの近くでスキルを習得する時期を待っているわけではない。彼らはずっとムーブメントの中にいて、参加しているにも関わらず、ただ作ろうという気になっていない人たちだ。各地方の主要な人物が「私はMakerではありませんが……」とスピーチを始めるのを何度聞いたことか。
こう聞かれたとき、私は常に決まった返答を用意している。どんなコミュニティでも、組織を運営して仲間の活動を可能にする人が必要だと。Dale Daughertyの新刊『Free to Make』の一節が、Makerでない人たちもコミュニティの中で価値があることをうまく言い表しているので紹介しよう。もっともインパクトのある部分を太字にしてある。
仲間の愛好家を探し出すことの重要性には、もうひとつの意味がある。それは自分を熱中させるためだ。アイデアを実体にするにはエネルギーがいる。もし私がアイデアを思いついたら、そこに個人的なエネルギーを投入して実物を作り上げようとする。最初は自分だけのエネルギーで行うが、理想的には持続性のあるエネルギーがよい。消費するだけでなく、アイデアにエネルギーを作らせるのだ。プロジェクトを開始したすぐのときは、プロジェクトとの相互作用によってエネルギーが返ってくる。そこへ、私のプロジェクトに興味を持った人が現れる。彼らはたとえば、それが便利だとか面白いとかシェアしてくれる。そうして彼らは何かを返してくれる。それが動機となりエネルギーが生じ、作業を進めようという意欲がわく。ここで交換される通貨は熱意だ。はっきりと定義するのは難しいが、それを感じたときに理解できる。
この一文には私に大きな衝撃を与えた。文章を書く人間として、熱意を伝えることが自分の役割だと思ってきた。このコミュニティでの自分の価値は、かならずしも燃える剣を作ることではなく(作ったら面白そうだけど)、熱意を増加させることにある。私のゴールは、他の人たちの作業を進めさせ、Makezine.comや「Make:」誌に掲載されるレベルまで押し上げることにある。そうすれば、さらに他の人から彼らに熱意が送り返される。プロジェクトが途中でぽしゃってしまわないように、そうしたエネルギーが必要なこともある。「熱意」のつながりを作り出すことで、私はプロジェクトを完成させたときと同じ満足感が得られる。
あなたはどうだろう。
・自分では何かを作る時間がないメイカースペースの運営者
・電動工具を使ったことのない編集者
・ハンダ付けに興味のないMaker Faireの主催者
・子どものプロジェクトを助けることで忙しく、自分のプロジェクトができない保護者
・FacebookやTwitterでクールなプロジェクトをシェアしているが、自分では何も作ったことがない人
・その他、いろいろな形で熱意を広げている人
あなたもコミュニティの中で価値を発揮しているのだ。健全なMakerエコノミーを保つために、熱意を広げてほしい。
写真:Andrew Kelly
[原文]