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2018.01.26

DIYツールの先駆け「ミシン」と100年の老舗企業をメイカーに近づけるためのプロジェクトチーム ー ブラザー工業「d-faB」メンバーインタビュー

Text by Yusuke Aoyama

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写真提供:ブラザー工業

本連載では「メイカーとメーカーの新しい関係」に着目し、企業のなかにいるメイカーや、メイカーグループの活動を紹介している。第4回は、ブラザー工業の「d-faB」の皆さんを取材した。

d-faBはMaker Faire Tokyo 2017に出展し、最新鋭ミシンによるデモンストレーションを行っていた。その内容は、来場者自身による手書きイラストを取り込みトートバッグに刺繍したり、ミシンで導電糸を布に回路として縫い付けた「柔らかなガジェット」の展示したりと、デジタルファブリケーションツールとしてのミシンの可能性を披露していた。

実のところd-faBは、社内のメイカーサークルではなく、パーソナル・アンド・ホーム(P&H)事業部という家庭用ミシンを取り扱う事業部の社員を中心としたプロジェクトチームだ。つまり、仕事としてメイカームーブメントにコミットしている。だが、そもそもd-faBが立ち上がったきっかけは、単なる仕事ではなく、それを越えた「メイカー的」な活動から始まったものだった。

メイカームーブメント、ミシン、そしてブラザー工業という企業をつなぐ糸をd-faBのメンバーの川口絵美さん、妹尾高志さん、野々部文浩さん、城戸大輔さん、花房真広さん、杉本雅博さんの話から探っていこう。(文と写真:青山祐輔)

導電糸を知ったことから開かれたミシンの可能性

ブラザー工業のd-faBは、ミシンにフォーカスしたプロジェクトチームだ。12人ほどのメンバーが集まり、Maker Faire Tokyoに出展して最新式のミシンをアピールしたり、Facebookやウェブサイトなどでミシンを使った電子工作のノウハウを公開したりといった活動を行なっている。その活動の中心には、もちろんミシンがある。

d-faBのメンバーの多くは、P&H事業部という家庭用ミシンを扱う部署に所属している。だが、P&Hの所属でなければ、d-faBのメンバーになれないわけではないと川口さんは話す。

「事業部の軸を越えた有志、つまりオールブラザーでやりたい。『d-faB』のBはブラザーのBだから大文字なんです。デジタルファブリケーション・ブラザー。P&H事業部だけの活動じゃなくて、ブラザーの社員だったら誰でも参加できます」(川口さん)

特定の事業部内のプロジェクトながら、他の事業部に所属する社員でも参加可能というのは非常に珍しく、こうした取り組みはブラザーでも初めてのことだという。もちろん、参加したい社員は、自分の担当業務の調整や所属部署との交渉を自ら行なう必要があるなど、ハードルは決して低くはない。

そもそものd-faBの設立のきっかけまでさかのぼろう。

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インタビューに参加したd-faBのメンバー。奥側左から花房さん、城戸さん、野々部さん、手前側は左から妹尾さん、川口さん、杉本さん

それは「電気を通す糸がブラザーのミシンで縫えない」という相談が持ち込まれたところから始まった。導電糸と聞くと、ガジェット好きな人間なら「スマホ用のタッチ操作できる手袋に使われているアレでしょ」とか、弊誌読者なら「”テクノ手芸”とかのあれね」と、すぐに思い浮かべることができるかもしれない。しかし、ほんの数年前では、ミシンをよく知るブラザー工業の社員であっても、導電糸のことを知る人間は少なかった。ましてや、ミシンで導電糸を縫うなんて予想外も良いところだ。

だが、その予想外が、いきなり海の向こうからやってきた。

「杉本はシアトルに駐在しているんですが、2年ほど前にあるベンチャー企業から『導電糸をブラザーのミシンで縫いたいんだけど、上手く縫えない』という相談を受けました。そこで杉本が、以前同じ部署だった城戸に相談し、私にも声をかけて、城戸が妹尾を誘い、という感じで今日この場にいるコアメンバーが集まりました」(川口さん)

杉本さんはシアトルに駐在し、ソフトウェアエンジニアとして大手企業とのソフトウェア開発に関する調整業務や新規ビジネス開拓などを担当していた。渡米前は城戸さんと同じ部署に所属しており、その気軽さもあって帰国時に「ミシンで困っていることあるから城戸君教えてよ」と、軽い感じで声をかけたのだという。

それを聞いた城戸さんも、まず感じたのが「面白そう」というものだった。

「面白そう、というところが一番大きかった。ミシンって言うと服を作ったり、キルトを縫ったりというのが今までのメインなんですけど、(導電糸を使うと)今までのミシンとはまったく違う世界のものが作れる」(城戸さん)

また、入社以来、十数年にわたりミシンの開発たずさわっていた野々部さんは、自社のミシンで使えない糸があるということを知ったとき「非常に悔しい」という思いを抱いたという。

「まず導電糸というものをわかってなかったのが悔しい。それに、世の中にこういうニーズというか、縫いたい人がいるのだから、ミシンメーカーとしてはなんとかしてあげたいという思いがありますね」(野々部さん)

こうして集まったメンバーたちが、業務ではないところで自主的に導電糸について調べはじめた。とは言っても、2年前では導電糸の使い方についてまとまった資料はほとんどなく、そこで手に入るかぎりの導電糸を集めて、実際にミシンで検証していった。ブラザー工業はミシンのリーディングカンパニーだ。d-faBのメンバーにも、ミシンの専門家がいるのだから、自分たちで手を動かせばわかることは多いはず。そうやって、ミシンでの導電糸の扱い方について、体当たりで理解していった。

「電気を通す糸があるということは、なんとなく知っていたのですが、どういう用途なのかまでは理解していなかった。そんな状態からアングラ活動として、みんなで導電糸を買いあさりました。いろいろと調べていくなかで、導電糸にもミシンで使えるものと使えないものがあるとわかってきた」(川口さん)

「ベンチャー企業を実際に訪問して使用シーンに立ち会うことで、導電糸とミシンの間で発生している課題が段々わかってきました」(杉本さん)

「あと、ミシンの基本的な使い方のところで、つまずいていたこともわかりました。ミシンの上糸のかけ方が間違っているといった、我々からすると基本的なことですが、ちょっと使ってみようという人にはわかりにくいところがある、ということに気づかされた」(妹尾さん)

さまざまな導電糸を手に入れ、実際にミシンで縫ってみる。また、同時に相談元にもヒアリングを行ない、そのニーズの奥にあるものを探っていく。そうしたなかで、d-faBは「ミシンで導電糸を縫う」ために必要なノウハウを蓄積していった。そして相談してきたベンチャー企業へとフィードバックした(その一部はinstructableで公開されている)。

そして、それでこの取り組みは終わるはずだった。

だが、後に「d-faB」なるコアメンバーは、この活動を「導電糸をミシンで縫う」ことのリサーチに留めなかった。その先にさらなる「ミシンの可能性」を見出した。そして、どのようにすれば、この取り組みを続けられるのか、またどうすればもっとミシンの可能性を探ることができるのか、2年近くにもわたる模索の日々が始まった。

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導電糸で作った光るキルトのクリスマスツリー

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光るキルトの裏側。ICとLEDを導電糸でつないでいる

ミシンをメイカーのためのツールに、ブラザーをメイカーの身近な会社に

お客様からの相談から始まったものとは言え、もともとミシンで導電糸を扱うことはまったく考えられていなかった。そのため通常なら「サポート外」という対応で終わっていたかもしれない。だが、後にd-faBのコアメンバーとなった面々は、そうした対応を良しとしなかった。なぜ、d-faBのメンバーは、2年にもわたり「アングラ活動」に取り組んだのか。

その理由を川口さんは語る。

「(導電糸の話を聞いて)これって新しいミシンの使い方だと思った。ブラザーは『デジタルをアナログに、アナログをデジタルにコンバージョン(変換)する』ことこそが事業だと思っていた」

「私自身は新規事業担当で、特定の事業のしばりがない。だから『オールブラザー』で考えたときに、ミシンやプリンターとかがひとつにつながって、新しい事業の広がりみたいなものがあるんじゃないかって考えたんです」(川口さん)

ミシンとブラザーの新しい可能性。それこそが、d-fabのメンバーに共通するテーマになったのだ。

多くのファブラボやメイカースペースに並んでいるツールというと、3Dプリンタやレーザーカッターを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、実のところ、家庭用のものから工業用のものまで、メイカースペースにはかなりの割合でミシンが置いてある。だが、こうした施設を頻繁に利用していても、ミシンの存在に気がついていなかったという人もいるだろう。筆者も正直なところ、MakeまたはMakerのためのツールと問われた時に、即座にミシンを挙げられる自信はあまりない。

だが、かつての日本では多くの家庭にミシンがあり、裁縫は趣味というより家事の一環と捉えられていた。ミシンは、まごうことなき日常生活におけるDIYのためのツールだったのだ。ただし、ミシンを巡る現在の状況は、難しいところにある。2009年実施の総務省全国消費実態調査では、2人以上の世帯でのミシンの所有率は65.6%となっているが、世帯主の年齢が30代だと52.9%、30歳未満だと29.0%にまで下がる。

年号がまだ昭和だったころ、子どもの進学などの準備のためにはミシンは必需品だったが、今となってはこうした「手仕事」から遠ざかりがちなのは、多くの人が実感しているだろう。だが、ファブスペースが身近にあり、かつそこに高機能だが簡単に操作できる新型ミシンがあれば、先の目的のために利用する人は少なくないはずだ。それこそ、潜在的なニーズは3Dプリンタやレーザーカッターよりも多いかもしれないくらいに。

つまり、ミシンはDIYの道具としてのすでに多くの実績を持ちながら、一方でメイカーのための道具としての認知が不十分というアンビバレントな状況にあるのだ。そこに風穴を開けたい、というのがd-faBの目的のひとつだ。

では、それをどうやって現実のものとするか。そのひとつが、ミシン×導電糸のノウハウの共有だ。d-faBでは、自社のミシンで導電糸をクリエイティブコモンズのもとで公開している。そこでは「ミシンで使える導電糸の選定ガイド」という基礎的なところから、「導電糸と布で作るユニバーサル基板」、さらにはLilyPad Arduinoと組み合わせた「光るキルト」の作り方という高度な応用まである。

「テクノ手芸部さんでも(LilyPad Arduinoと導電糸を)使われているんですけど、全部手縫いなんですね。私たちはミシンメーカーなので『やっぱりミシンで縫いたいよね』と思って。それにミシンで導電糸を使った作例がほとんどなかった」

「導電糸を知っていてウェアラブルに興味があって何かやりたいんだけど、なにをどうやったらいいのかわからないんだよね、という人たちもいたんですね。そこで、私たちで実際にサンプルを作ってみたんです」

「このサンプルをいろんな人に見せたら『こんなん作れるんだ』って喜んでもらえた。だから、ミシンと導電糸でこういうことができるんだ、というのをもっと知ってもらえればと思って、記事を投稿した」(川口さん)

これらの記事や制作物を見てストレートに感じるのは、「ミシン×導電糸」のクリエイティビティへの可能性だ。「柔らかく自在に折り曲げられる基板」というだけで、電子工作好きの人間ならワクワクしてくるはず。そして、これらの技術の応用は、ウェアラブルという領域に止まらないだろう。

3Dプリンターによって、モデリングデータさえ用意できれば、複雑な部品を誰でも出力することができる。同じように、データをインプットすれば、ミシンが自動的に回路を縫い取り、柔らかでウェアラブルなガジェットを作り出せる。そうすれば、すぐにでもミシンはメイカーに近しいツールになるはずだ。

「自分たちでモノを作る人たちの近くというか、一緒にやっていく企業として認知されたいというのが、最終的に僕らの望むもの。でも、そういう認知はまだ全然なくて、まず最初はメイカーのための道具としてミシンというものが『そういえばあるね』と思ってもらえるところが出発点だと思ってます。そのためにMaker Faireだったり、ウェブだったりとかで、作り方を一生懸命公開していくことで、メイカーの人たちに仲間の会社なんだって思ってもらえたらいい」(花房さん)

2年を掛けて、ようやく仕事として認められ、Maker Faire Tokyoに出展するまでになったd-faB。その目的は、ミシンの新たな可能性を探ることだ。だが、単に「ミシン×導電糸」のノウハウを広めるだけなら、d-faBはサークル活動やアングラ活動のままでもよかったのかもしれない。だが、あえてd-faBを仕事にしようとしたのには、もうひとつ大きな目標がある。

ブラザーとミシン100年の歴史のターニングポイント

d-faBは2年間のアングラ活動を経て、2017年にP&H事業部のプロジェクトとして認められた。その過程には多くの紆余曲折があったと城戸さんは振り返る。

「ここまでの活動にするのには、本当に非常に大変な道のりがありました。事業化に向けて、最初にメンバーで作ったプレゼンは見事に玉砕しました。単に顧客から要望があったというだけでは、やっぱり会社としてもすぐには認められないんですね。そういった経緯を経て、メンバーで学びながら今の活動になっていった」(城戸さん)

また、メンバーの間でもグループとして何を目指していくのか、ゴールのイメージがそれぞれ違っていたという。例えば妹尾さんは、あくまでもミシンが中心で「ボクはミシン以外のことにあまり興味がない(笑)」と語る。

「今の仕事は、ミシンというドメインのなかで新しい商品企画を考えることです。今のお客さんのことを考える一方で、新しいお客さんのことも考えたい。そのために、d-faBを使ってやろうという気持ちで参加しています」(妹尾さん)

妹尾さんはそれほどミシンが好きがために、一方では現状の家庭用ミシンのマーケティングには、腹落ちしないものを感じていた。そして、同じくP&H事業部でミシン開発を手がけてきた野々部さんは、今こそミシンとブラザーにとって変化のタイミングだと感じていた。

「ブラザー工業は100年以上続いている会社で、ミシン事業も100年やってます。そのほとんどにおいて、おそらく女性をターゲットにしてきたと思うんですね。でも、メイカーだとか、クラフトだとか、ウェアラブルとかに目を向けると、男性にもターゲットが向くんじゃないか。これは100年やってきた中で、すごく革命的なターニングポイントのひとつになるんじゃないかということに気づいた」(野々部さん)

そして、シアトルに駐在している杉本さんは、自社の大企業であるがゆえの問題に対して、いらだちみたいなものがあったと素直に告白する。

「シアトルにいると、いろんな小さなスタートアップの会社が、ものすごい勢いでどんどん色んなモノを作っているのに刺激を受けるんです。マイクロソフトを辞めた人が自分で会社を立ち上げて、日本企業なら2年くらいかかるようなものを半年くらいでバーンと作っている」(杉本さん)

そうした環境に身を置くが故に「自分も何かできないか」という気持ちをいだき、その「何か」を探し続けていた。こうしたメンバーひとりひとりの思いをどうやってまとめるか。アングラ活動がd-faBになるまでの2年間は、その方向性の模索でもあった。

「みんなで活動するのは楽しいし、お客様が困ってることを解決したいというモチベーションは同じなんですけど、その先のゴールのイメージがいろいろ違っていた。会社の事業としてなかなか認められないし、それぞれ自分の仕事もあるので、土日に私の家に集まって、みんなあーだこーだとやっていた。それが2年かけて、ようやくみんなの方向性があってきた」(川口さん)

大きなゴールとして「ミシンとブラザーの新しい可能性」というビジョンを見据えれば、その手前にいくつもマイルストーンが生まれる。そこにメンバーひとりひとりのモチベーションを載せることで、一緒にやっていくことができるというわけだ。川口さんは「それに気づくまで2年くらいかかった(笑)」と苦笑いする。

そして、正式にプロジェクトとしてスタートするのにあたり、改めて花房さんがリーダーに立ち、城戸さんが補佐するという体勢でスタートした。実のところ、アングラ活動時代は、前述の通り皆の方向が揃っていなかったこともあり、明確なリーダーは置いていなかった。川口さんもあくまでもドライバー役という位置付けだ。

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Maker Faire Tokyo 2017の会場でデモに使用したトートバッグ。d-faBのロゴなどのプリントはブラザー製の布用プリンターで行なった

そして花房さんはリーダーとしてだけでなく、ブラザーの社員としてd-faBの活動を長い目で見ている。

「僕は高校生の頃からLinuxを使っていたんです。それで、21世紀のイノベーションの中心は企業じゃないということが、社会人になってよくわかってた。僕は新規事業の企画を考えることが仕事です。つまり自社の考えたものを商品化しようっていうことですが、僕は最終的にはそういう製品開発サイクルに未来は無いと思っている。こういうと会社に怒られるかもしれないけど(笑)。でも、いかにしてユーザーイノベーションを取り込めるのかっていうのが、実は長期的な目標です」(花房さん)

つまり、ブラザーをオープンイノベーションの会社に変革するというのが、花房さんにとってのd-faBのゴール。そのためには、「オールブラザー」の視点で、いろいろと変えていくべきことがある。例えば、会社とユーザーとの距離もそのひとつ。

「ミシンの開発をずっとやっていて、お客さんとの距離が非常に遠い。ユーザーさんの声がどうやって伝わってくるかというと、ミシンの販売店から各国の販売会社、販売会社から本社の営業、商品企画、そして開発と、間にいくつもフィルターが入って来る。だから『これを開発してください』と言われるんですけど、実際にユーザーが何をしたくてそういう要望が来たのか、なかなかわからないところがある」(野々部さん)

もちろん、こうした仕組みは、大量の顧客からの要望を整理し、閲覧しやすくするというメリットがある。だが、こうした仕組みからは「ミシンで導電糸を縫いたい」というリクエストが、開発にまで届かなかった可能性がある。

「ユーザーの声を全部聞くわけにはもちろんいかない。とはいえ、導電糸だけじゃないですけど、色んな使い方をするお客さんが出てきたなかで、小さな声ってなかなか伝わってこない」(野々部さん)

特に、メイカーからのリクエストは、細かで個別具体的なニーズであることが多く、マスプロダクトとして反映することは難しい。そこで必要になってくるのが、オープンで互助的なコミュニティだ。

「将来的にはメイカーの方々が、お互いに『こうすればいいんだよ』って教えあるようなコミュニティになればいい」(川口)

そのためには、ブラザーがメイカーと近くいる必要がある。それこそがd-faBの直近のマイルストーンであり、Maker Faireへの参加やウェブでの情報共有をしていく理由だ。そして、そのマイルストーンを刻んでいく過程では、メイカーとの関係が深まり、またd-faBのメンバー自身もメイカーへと成長して行くのだろう。

「オールブラザー」での変化への取り組み。その端緒は、すでにMaker Faireで見ることができた。Maker Faire Tokyo 2017でのブースで行なっていた、トートバッグへの手書きイラストを刺繍するというデモ。このトートバッグにはd-faBのロゴがあらかじめプリントされていたが、これはブラザーの布用プリンターで行なったもの。

「この印刷も社内の別の事業部の布用プリンターを借りて作った。P&H事業部だとミシンだけですけど、ブラザー全体だと印刷もできるし、刺繍もできるし、他にもいろんなものがある」(花房さん)

つまり、このトートバッグこそ「オールブラザー×メイカー」の象徴というわけだ。例えば、こんな風に誰でも自由にトートバッグをデザインし作れる環境。それがd-faBのゴールが実現したら訪れる世界なのかもしれない。