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2018.08.13

Maker Faire Tokyo 2018レポート #5:ヤングメイカーの襲来

Text by Takako Ouchi

今年のMaker Faire Tokyoを振り返ってみると、大人だけではなく、小中学生から高校生、大学生まで、若い出展者が目立った。もちろん、これまでも若い出展者はいたが、今回は非常に層が厚った。ヤングメイカー(学生出展)の襲来を振り返っておこう。

SAKURA Tempesta
SAKURA Tempesta

おいしいローストビーフが食べたい

N高等学校のブースからは、改野由尚さんの「ローストビーフメーカー」を紹介したい。IH クッキングヒーターの温度を取得し、温度はクラウドに常時送信され、一定以上の温度になればスイッチを切る。こうして低音調理に適した温度を維持する一方で、ローストビーフ調理に必要な時間を計測。Twilio APIを経由しスマートフォンに電話がかかってくるという仕様だ。温度管理の部分をArduinoで制御、ネットワーク部分はRaspberry PIを使っている。

ローストビーフメーカー
ローストビーフメーカー

温度管理やデバイスとのやりとりをArduinoで制御
温度管理やデバイスとのやりとりをArduinoで制御

もともとは「デジットハッカソン2018」(アイデアソン5/19-20、ハッカソン6/9)に参加した際に作り始めたもの。今回、iOS用のアプリも開発したが、残念ながら当日までに申請が通らなかった。また、このバージョンのアプリには間に合わなかったが、カウントダウンであったり、ローストビーフが出来上がるまでの時間を楽しめる、待ち時間に楽しめるミニゲームであったり、機能を入れる予定だという。もともと、自身がローストビーフを作るのが好きで、その時間をもっと楽しむことができたらと考えたのが、このデバイスを作ったきっかけ。お肉の低温調理は時間がかかる。その経験があって出てきたアイデアだった。ちなみに、N高等学校のブースは特にサークルというくくりではなく、作りたい人、作っている人がそれぞれの作品を持って集まっていた。

未踏ジュニアの見守りフォトスタンド

未踏ジュニア: U-17未踏プロジェクト(17歳以下の小中高生および高専生を対象としたミニ未踏)からの出展もあった。2017年度の未踏ジュニアスーパークリエータに認定された矢野礼伊さんの「見守りフォトスタンド」だ。

見守りフォトスタンド
見守りフォトスタンド

離れて暮らす家族の玄関に設置し、音声やセルフィーでコミュニケーションが取れるデバイス。デバイスにはカメラと人感センサ、超音波センサなど各種センサが搭載され、人が通っただけで撮影されるので、見守りが必要な場合など、外出時、帰宅時などの姿を確認することができる。タッチパネル操作で録音、セルフィーも可能。再生もタッチパネルで再生したい項目を選択するだけ。父方の家、母方の家など複数台を接続でき、送信先は選べる。

矢野さん。このアイデアはもともと離れて暮らす祖父を心配して考えたものだ
矢野さん。このアイデアはもともと離れて暮らす祖父を心配して考えたものだ

実は、たまたま筆者は昨年秋に行われた未踏ジュニア2017の成果報告会を聴講していたのだが、その時点でもプロトタイプは完成し、祖父宅、祖母宅に設置し動作を検証していた。

動作テストの様子(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)
動作テストの様子(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)

動作テストの様子2(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)
動作テストの様子2(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)

システム全体像(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)
システム全体像(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)

次の課題としてあげていたもの(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)
次の課題としてあげていたもの(2017年10月の報告会における見守りフォトスタンド発表資料より)

今回の展示では、そのとき次に目指す形として示していた野望が見事に搭載されていた。未踏ジュニアスーパークリエータ、おそるべしである。なお、2018年度の未踏ジュニアもすでに始まっている。

ロボコンに挑戦する”普通科”の高校生たち

ロボコンというと、日本ではNHK主催の「NHKロボコン」「高専ロボコン」が有名だが、Maker Faire Tokyo Team 6909 SAKURA Tempestaが挑戦しているのは、アメリカ発祥の国際ロボコン「FIRST Robotics Competition」(以下、FRC)。Maker Faire Tokyoでは、2018年のFRCアジア大会に出場したロボットを出展。ブロックを持ち上げる、動くというデモを行った。

SAKURA Tempesta
SAKURA Tempesta(Maker Faire Tokyo出場のロボ)

高校生がロボコンを目指すというとNHKロボコンを連想するが、高校生の部は普通科の高校生は対象になっていない。彼らが目指すのは国際ロボコンRFCは、世界各国、各地の高校生が対象のロボティクスチャレンジだ。きっかけは、留学先でFRCのことを知ったリーダーが帰国後、FRC出場を目指し仲間を集めたことから。千葉県を中心に複数の学校から、中学生や高校生が集まっている。20人弱のメンバーで、現在、千葉工業大学の富山研究室を活動の中心にしている。2018年3月にハワイで行われたFRCアジア大会に出場し、ルーキーチームとして入賞。4月の世界大会(デトロイト)に進んだ。そこでの成績は67チーム中54位。

キューブを持ち上げる様子(2018年のRFCのタスク遂行に必要な動作)
キューブを持ち上げる様子(2018年のRFCのタスク遂行に必要な動作)

今回のMaker Faire Tokyo出展はFRCの認知度を広めること、自分たちの活動を知ってもらうことだという。1つの学校の部活動ではなく、複数の学校からというのはかなり珍しい。メンバーのつながりで広がっていったそうだが、資金集め、広報活動などにあたるメンバーもおり、エンジニアだけの集団ではない。それぞれのスキルを活かし、今後の活動を続けていくとのこと。ここで紹介した以外にも本当に多くのヤングメイカーが登場したMaker Faire Tokyo 2018。彼らの次の展開も期待だ。