Fabrication

2019.02.25

マイクロミリング:小さなCNCプロジェクトのコツを伝授

Text by Winston Moy
Translated by kanai

家具、壁掛け、オリジナルの看板などは、CNCを使ったプロジェクトとしてお馴染みのものだが、小さなものに目を向けると、そこには新たな可能性の世界が広がってくる。とは言え、微小なパーツを機械加工しようとすれば、そこにしかない数々の問題に直面することになる。小さな材はCNCに固定することすら難しく、通常のクランプが使えないところでの工夫と創造の力が必要となる。さらに、誤差を小さくしようとすれば、材とツールの正しい組み合わせがますます重要になる。

材の保持

材の保持は、CNC加工の成功の必須条件だ。しかし、小さな材の加工となると、しっかり保持することが難しくなる。Z方向の空きを大きく取れない場合には、背の低いバイスが欠かせない。それなら、材の表面がバイスに埋まってしまわない。ただし、材が不規則な形をしていたり、側面も全体に削りたい場合には、別の方法を考える。


背の低いバイスを使って製作した真鍮の焼印

平らで面積の大きな材の場合は接着剤が便利だ。ブランクのプリント基板、プラスティック、合板などには両面テープをよく使う。

小さな材をテーブルに固定するときは、固定用ワックスやホットグルーが使える。テーブル表面に溶かして塗布し、その中に材を押し付け、冷えて固まるまで押さえておく。この方法のメリットは、エンドツールで材を貫通させてしまっても、ツールにネバネバがこびり付かないことだ。ワックスもホットグルーも冷えると粘着性がなくなるからだ。


ワックスでスポイルボードに固定したアルミ材。タブの必要がないということは、余計なクリーンアップの作業も不要ということだ

表面が湾曲していたり、不規則な形をした材には、「ソフトジョウ」という固定具を自作して使う。クランプの挟む部分を、材の形状にぴったり合う形に作るので、大変に具合がいい。


材の形状に合わせて削り出したソフトジョウ。円形にも対応できる

スポイルボードに浅いくぼみを作って材をはめ込み固定する方法もある。


SpaceXのドローンシップのバッジの形からヒントを得て作ったコースター

小さなプロジェクトは、いろいろな材を試せるいい機会にもなる。鉄以外でいちばんよく使われるのがアルミだ。しかし、アルミにもいろいろ種類がある。合金や調質の具合によって、加工のしやすさが劇的に変わる。純粋なアルミは比較的柔らかく、顕微鏡レベルでは粘土のように振る舞う。それに、エンドミルによく詰まる。

おもに強度を高めるために亜鉛を混ぜた7075アルミは硬度が高く、純粋なアルミに比べてすっきりと削れる。機械加工の世界では「削り屑ができる」と表現されている。もう少し安価だが、やや柔らかく、それでいてCNC加工に向いているものに6061アルミがある。おもにマグネシウムとシリコンを混ぜた合金で、汎用グレードのアルミとされている。不適切な合金を使うと、再現のない頭痛に悩まされることになるから、購入の前によく調べておこう。McMaster-Carrのウェブサイトはよく参考になる。

プラスティックの場合は、送り速度とスピンドルの回転数を適切に合わせることが重要になる。一箇所にカッターが長時間止まっていると、木材なら焦げるだけで済むが、プラスティックなら溶けてしまい、エンドミルにへばり付き、プロジェクトが台無しになる。CNCマシンのメーカーの推奨設定に従うか、できれば、ツールの販売店から提供される切削パラメータに従うことだ。

エンドミル

ツールと言えば、エンドミルには種類によって長短があるが、どのような状況でも共通して言えるひとつの真実は、必要最低限の長さのツールを使えということだ。コレットから長く伸びれば伸びるほど、振動のリスクが高まり「チャタリング」が起きやすくなる。

さらに、エンドミルは長くなるほど弱くなる。小さなマシンなら、切削の設定を間違えた場合、エンドミルが折れる前に機械が止まるはずだ。しかし、ミニチュアスケールの機械加工では、エンドミルは最弱リンクとなる。

特別に細かい切削を行いたい場合は、小さくて折れやすいエンドミルの代わりに、「彫刻ビット」を使うとよい。鋭い角や細かい形状を削り出せる。おまけとして、彫刻ビットには面取り用の刃が付いているため、ヤスリで削ったり磨いたりする手間が省ける。

仕上げ

仕上げのパスは、精度を高め表面を仕上げるのに欠かせない。同じパスで切削を繰り返すだけで、最初のパスで振動やその他の物理的要因によりカッターが削りそこなった部分をきれいにできる。初心者向けでも上級者向けでも、CAMソフトに仕上げをさせるもっとも簡単な方法は、設定したツールパスを繰り返させることだ。

ちょっとしたひらめき

以上の知識が、小さなプロジェクトで予想されるさまざまな突発事項に対処する手助けになればと思う。そして、より細かく高精度な作品をCNCで作ってやろうというみなさんの意欲を後押しできればと願っている。

原文