2019.08.08
Maker Faire Tokyo 2019レポート#3|「網膜投影HMD」で未来のインターフェイスを体験する
新しい技術やデバイスを体験できるのもMaker Faireの大きな魅力の1つ。「未来を感じる」と人気だったのが株式会社QDレーザの「網膜投影HMD」だ。
網膜投影HMDでコミュニケーションする
VR以上の可能性があると言われているのがMR(Mixed Reality:複合現実)、そしてAR(Augmented Reality:拡張現実)だ。簡単に言うと、現実に見えている世界に仮想の映像を付加する技術。没入感という点では完全に視界が仮想空間となるVRが勝るが、MR/ARは現実世界を遮らないことから、人間の機能をサポート/拡張する幅広い用途での活用が期待されている。
その中でも、特に、小型化・軽量化が可能な網膜投影型のARグラスは非常に注目されている領域だ。2006年設立のQDレーザは量子ドットレーザ技術を持つベンチャーで、網膜投影型ARグラス「RETISSA Display」を開発、2018年に一般販売を開始している。今回の展示は、自社の持つ網膜投影技術(VISIRIUM Technology)を多くの人に広く体験してもらおうということから企画したという。株式会社アマナ、ソフトバンク株式会社が協力し、未来のコミュニケーションデバイスを形にした。
メガネ型のデバイスに網膜投影ディスプレイがはめ込まれている
目の部分に網膜投影ディスプレイがはめ込まれたメガネ型のデバイスは下に取っ手があり、それで支える形だ。ブースでは、二人一組で未来のコミュニケーションを体験。網膜投影ディスプレイを通して、相手の話した言葉がテキスト化されて目の前に現れる。テキストだけではなく、中身と近いと推測される画像も一緒に表示される。
網膜投影ディスプレイに表示される画面(提供:株式会社アマナ)
当初はクラウド経由で音声認識処理を行う予定だったが、当日会場では、Wi-Fiでうまく動作しなかったため、PC上ですべて処理することになった。そのため、音声認識の精度はあまり出ていないと言う。実際に体験してみると、遅延が気になりはしたが、ギリギリ発話された内容が把握できるという範囲内で、通常の視界に画面が表示される違和感もほとんどない。
SFでこうしたデバイスがよく登場するが、ワクワクした体験だった。この網膜投影ディスプレイは微弱なレーザ光線を用いて網膜上を走査し、映像を投影する。つまり、画像を直接網膜に描画する。CMOSセンサーによる描画のイメージだ。そのため、角膜の異常や変形など前眼部の疾患をうまくカバーできる仕組みとして、医療用にも活用が期待できる。
QDレーザはこのVISIRIUM Technologyを搭載したプロダクトの製品化を目指している。医療用、民生用で進めており、医療用デバイスとしては、カメラと組み合わせて、その映像を網膜に描画することで視界をサポートする。現在、医療機器製造販売承認を申請中とのこと。今回のデモは民生用のプロトタイプを流用したものだと言う。