Electronics

2019.08.09

Maker Faire Tokyo 2019レポート#4|直径約8cm、45×120解像度の球体ディスプレイ「neon」の進化

Text by Takako Ouchi

Maker Faireでは連続出展のブースも多く、作品やプロトタイプの定点観測的な楽しみ方もできる。「今年はこう来たか」あるいは「ここまで精度が出ているのか」と毎年のバージョンアップが楽しめるのだ。その中から「neon」を紹介したい。


球体ディスプレイ

neonは2014年のハッカソンイベント(GUGEN x FlashAir Hackathon)で最優秀賞を受賞したチームが母体となっている。そこから、音楽と同期して発光パターンをコントロールできるボール「スマートジャグリング」の開発。通信用のサーバとしてFlashAirが内蔵したプロトタイプをCEATECや Inter BEEなどの展示会に出展している。

ジャグリングに使えるように独立してボールだけで光をコントロールでき、音楽と同期する。難易度は非常に高い。単純に考えても、LED、バッテリー、制御用マイコン、ボールの動きを取得する加速度センサー、それに音楽と同期するための通信機能が必要だ。より良いものを、と改良を続け、2015年以来、毎年Maker Faireに出展している。


スマートジャグリングの試作

2018年に「球体POV」としてMaker Faireで展示。今回はその改良版として、LEDの解像度や回転の安定性を上げて、高精度な映像表示を目指した。


LEDをハンダ付けした基板が回転することで描画する

制御はスマートフォン/PC側、描画にはM5Stackの基板を取り出して使っている。上部に回転しながら同期信号を送るスリップリングを配置。回転にはマイクロドローンのモーターを使って、軽量化・小型化・省電力を実現している。


球体ディスプレイの中身はこうなっている

回転の軸は下側に1つ。軸を1つにしたことでほぼ360度に近い角度で描画ができるようになっている。軸の素材は耐久性が必要なためスチールに。ベアリングを2つ入れることで、摩擦抵抗をおさえている。LEDは2mm角を45個配置。通常は面のところにつけるが、フチ側に付けている。


フチ側に付けたLED

今回のデモではドットが残った表示になっているが、なめらかな連続線の描画で絵を表示したりもできるとのこと。ただ、こうなると高精度な球体ディスプレイであって、当初の目標であったジャグリングと離れていってしまう気がする。実は、2018年の球体POVから2つの方向の進化を考えていると言う。今回紹介した高解像度化に向けた改良がその1つ。もう1つが、もっと手軽に投げられるボールを目指すという方向だ。赤ちゃん用のプラスチックのおもちゃ。この白いフタの部分を外してLEDを付け、光るボールを実現しようというのだ。


赤ちゃん用のプラスチックのおもちゃ、白い部分が外れる


導電糸でLEDを固定する

どちらのプロトタイプも来年どう進化しているか期待だ。なお、neonブースでは球体ディスプレイのほか、球体キーボードも展示されていた。


キーボードを球状に配置した「球体キーボード」