Electronics

2019.08.13

「たのしいmicro:bitコンテスト2019」Maker Faire Tokyo 2019にて決勝大会が行われました!

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教育用マイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」を使った作品コンテスト「たのしいmicro:bitコンテスト2019」の決勝大会が、8月4日(日)にMaker Faire Tokyo 2019の会場内で行われました。

「micro:bit」の作品コンテストの開催は、昨年に続いて今年で2回目。昨年の「micro:bitでつくってみよう!コンテスト」では7月上旬に受賞者が発表され、Maker Faire Tokyoの会場では表彰式だけが行われましたが、今年は4~6月に作品を募集し、7月上旬に一次審査通過作品を発表。Maker Faire Tokyo 2019の会場に作品を展示して来場者からの投票を募るとともに、集まった皆さんの前で最終プレゼンによる決勝大会も行われるという、来場者参加型のコンテストになりました。決勝大会では、プレゼンの内容や観客の皆さんの反応、作品展示での投票数などを総合して審査が行われ、一次審査を通過した3部門9作品の中から、グランプリ1作品、優秀賞2作品、特別賞6作品の受賞が発表されました。


グランプリ受賞のひかるさん

グランプリを受賞したのは、中学生~18歳未満が対象のYoung Maker部門に応募してくださった、ひかるさんちんあなご。micro:bitで2つのサーボモーターを制御し、1つで砂から顔を出すちんあなごの上下の動きを、もう1つで人の指のようにくねくねとしたちんあなごの曲がる動きを表現した作品です。可変抵抗つまみを操作するたびに、ちんあなごが砂から顔を出したり、くねっと曲がる様子が愛らしいだけでなく、段ボールを使って海の中を模した工作にも温かみが感じられます。それもそのはず。実はこの作品は、ひかるさんが妹さんのために作ったものなのだとか。テレビで見たちんあなごのユニークな姿に興味を持った妹さんを喜ばせたくて、作品のアイデアを思いついたそうです。決勝大会では、その妹さんもアシスタントとしてひかるさんのプレゼンをサポート。作品の評価に加えて兄妹の仲の良さが伝わる素敵なプレゼンも、受賞を後押ししたようです。授賞式では審査員から「機械的なものなのに動物っぽい動きを表現しているところと、妹のために作ったというのも良かった」とのコメントも寄せられました。


優秀賞受賞のNAGIさんチーム

優秀賞は、Young Maker部門のNAGIさんによる狙え!ゴミ箱と、一般部門のtktk360さんによるMICRO:BIT BIRD SHOOTINGの2作品が受賞しました。「狙え!ゴミ箱」は2人組のNAGIさんが、「つまらなくて面倒なゴミ捨てをもっと楽しくしよう」と思いついたもの。micro:bitと360度回転サーボモーターによって動きまわるタイヤ付きのゴミ箱に、見事ゴミが入ればファンファーレが鳴る仕組みで、ゲーム感覚でゴミが捨てられます。作品同様の楽しいプレゼンで、集まった観客の皆さんを笑顔にしたお2人。Maker Faire Tokyo 2019の期間中、スイッチサイエンス社のブースで行われた作品展示でも、抜群のコンビネーションで来場者へ作品のデモを披露されていました。その成果もあってか作品展示での投票数では、ぶっちぎりトップの263票を獲得しました。


同じく優秀賞受賞のtktk360さん

「MICRO:BIT BIRD SHOOTING」は、micro:bitで作った光線銃型コントローラーで、テレビゲームが楽しめるという作品。作者のtktk360さんがまだ小さい娘さんと一緒に遊べるようにと、オリジナルゲームのプログラミングも手がけた力作です。コントローラーはパソコンのマウスとして使えるようになっていて、なんと決勝大会のプレゼンもこのコントローラーを使って行われました。会場の液晶モニタを使ってゲームのデモも披露した本格的なプレゼンに、観客の皆さんからは感嘆の声も。作品展示ではコントローラーのトリガー部分が壊れてしまうトラブルもありましたが、micro:bitのポテンシャルをフルに活かした作品は来場者にも好評価を得ていました。

このほか特別賞は、苦手ななわとびを克服すべく考えたという、ひなたさんさんの「なわとbit なわとび上達マシーン(Kids&Family部門)、お母さんの募金活動に役立ててもらおうと作られたレゴたろうさんの「楽しい募金箱(ピタゴラスイッチ風)(Kids&Family部門)、残念ながら会場にはお越しいただけませんでしたが、来場者の評価も高かったこうえいさんの「点字サポート(Kids&Family部門)、苦手な虫を近づかずに撃退できるアイデアがユニークなseigo2016さんの「殺虫剤遠隔噴霧車(Young Maker部門)、100均ショップで揃うパーツでアートな世界を表現したスピルさんの「マイクロビット制御BOOK型影絵(一般部門)、娘さんとの親子でのプレゼンが微笑ましく楽しかったmoto2gさんの「まほうのしょ Micro:bitでAIモーション認識(一般部門)が受賞しました。

最後に、コンテストの審査員を務めたN高等学校の吉村総一郎先生は、「皆さんすごい技術力を持っていて、選ぶのが本当に心苦しいという状況でした。楽しさの面でもおもしろいプレゼンをしてくださったり、家族や友達と楽しみながら作っているんだなぁということが伝わってきました。どの作品も本当に素晴らしかった。ありがとうございました。」とコメントし、決勝大会を締めくくりました。

今回は来場者に投票してもらうシステムだったこともあって、作者の方と来場者との交流もたくさんあった2日間のブースでの作品展示。また決勝大会ではそれぞれの熱のこもったプレゼンテーションに、集まった観客の皆さんも作者の皆さんと一緒に、コンテストを楽んでいただけた様子でした。ご応募くださった皆さま、Maker Faire Tokyo 2019の会場で作品をご覧いただいた皆さま、投票に参加いただいた皆さま、決勝大会に参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。また来年も、皆さまからのたくさんのご応募を楽しみにしております!

【受賞作品】
●グランプリ(1名)
ちんあなご」作者:ひかるさん
審査講評:機械の動きは無機質になりがちですが、この作品はちんあなご特有の柔軟で特徴的な動きを再現しています。使用している機材も特殊なものを一切使っていないにも関わらず、筒に切り込みを入れるといった工夫やサーボモーターの動きの調整などの試行錯誤により、実際のちんあなごの動きを上手に表現できていました。グランプリ、おめでとうございます!(審査員:株式会社プロキッズ 原正幸)


グランプリの「ちんあなご」


妹さんが一緒に作品をプレゼンテーション

●優秀賞(2名)
MICRO:BIT BIRD SHOOTING」作者:tktk360さん
審査講評:​​Wiiリモコンのセンサーを利用した本作品の銃のデザインやリロードモーション演出の完成度、また、Unityで作られているゲーム、センサーキャリブレーションのための独自アプリケーション群など、技術面や実装量に関してはずば抜けた作品でした。圧巻の一言。正直micro:bitでここまでのデバイスを作れるのかと驚かされた方も多いはず。ぜひ今後一般的な技術として昇華できるよいなと感じます。ここまでmicro:bitを魅力を引き出して頂きありがとうございます。(審査員:N高等学校 吉村総一郎)


完成度の高かった「MICRO:BIT BIRD SHOOTING」

狙え!ゴミ箱」作者:NAGIさん
審査講評:あまり楽しくないゴミ捨てという行為を楽しくすることができる作品です。普通はゴミ箱に捨てる行為が大変なので、効率化したいと感じるところです。しかし、逆転の発想でゴミ箱が逃げるように動くことで捨てにくくなり、逆にゴミ箱を追いかけてまでゴミを捨てたくなるというものです。日常のつまらないことを楽しくするという発想が素晴らしいです。優秀賞、おめでとうございます!(原)


展示エリアで抜群の人気を誇った「狙え!ゴミ箱」

●特別賞(6名)
なわとbit なわとび上達マシーン」作者:ひなたさん
審査講評:なわとびの上達をアシストする作品です。プログラミングを使ってスポーツを支援するというコンセプトはスタンドアロンで動作させられるmicro:bitにぴったりで、私自身共感するものがありました。この作品を使ってみてもまだなわとびは上達していないという話でしたが、どうすれば実際の上達につながるのか、さらに作品をブラッシュアップしていってみるとおもしろそうだなと思いました。(審査員:株式会社スイッチエデュケーション 小室真紀)

楽しい募金箱(ピタゴラスイッチ風)」作者:レゴたろうさん
審査講評:お金を入れるとレールをころころと転がって、お金が落ちるとガラポンを回しておみくじが出てきたり音楽が鳴ったりという、名前の通り楽しい募金箱です。micro:bitと木工工作を組み合わせた、見た目も楽しい力作です。ガラポンは私も作ったことがありますが、1つずつ落ちるように調整するのがすごく難しいんですよね! しっかり作りこんであるのはさすがだと思いました。お母さんのしていた募金活動を楽しくしたいという動機も素敵です。次にどんな作品を作るのかとっても楽しみにしています!(小室)

点字サポート」作者:こうえいさん
審査講評:点字を覚えたり読んだりするときのサポートをしてくれるシステムです。ジェスチャーセンサーを追加するなど技術的なチャレンジが見られる作品です。展示用の説明資料や発表動画もしっかり作りこまれていて素晴らしいと思いました。昨年応募してくださった作品をバージョンアップしたという、作品に対する思い入れの強さも魅力的だと思います。点字サポートのコンセプトで作品をさらに深めるのも素敵ですし、これまでに培った技術力で新たなコンセプトに挑戦するのもおもしろいと思います。次にどんなものを作るのか、とても楽しみにしています!(小室)

殺虫剤遠隔噴霧車」作者:seigo2016 さん
審査講評:自宅の庭に虫が多く現れるため、殺虫剤を作いたいということが発端で生まれたそうです。遠隔から殺虫剤を利用できるとのことで、決勝に選ばれた作品の中では実用性が高い作品です。利用できるスプレー缶も1つのタイプだけでなく、多くのスプレー缶に対応しているとのことです。まだ1匹も虫を倒した実績はないのことですが、実用化するところまで頑張って欲しいところです。(原)

マイクロビット制御BOOK型影絵」作者:スピルさん
審査講評:​​回転灯籠から着想を得た本作品ですが、実際に実物を見せてもらって、蝶が生き生きと動く様に感動しました。BOOK型影絵ということで小さな作品にし、階層を設けることでより表現性を高めているこのアイデアはとても素晴らしいと思います。小型化だったり、BOOK型という特性を生かしたストーリー性の表現、また、音楽との兼ね合いや本自体の装丁など工夫することで、もっとこのアイデアの魅力を引き出せる可能性を感じます。(吉村)

まほうのしょ Micro:bitでAIモーション認識」作者:moto2gさん
審査講評:モーションを機械学習をしたモデルから判別し、好きな“まほう”の音声を流すというアイデア、実際におもちゃとして売れそうなほど素晴らしい内容です。技術力もさることながら、家族で教師データの作成をしているなど楽しんでいる姿が伝わってきました。動かす部分とスピーカーは分離した作品ではありますが、理想的には一体化しているとよいですよね。今後もよりおもしろい作品づくり、技術的なチャレンジに期待しています。(吉村)