Electronics

2019.08.14

Maker Faire Tokyo 2019レポート#5|森とつながる、森の声を聞くプロトタイプデバイス

Text by Takako Ouchi

暑い中の開催だったMaker Faireだが、会場では涼しげな体験ができる作品もあった。森に設置したマイクから森の中の音を聞いたり、音がするほうに向くという鳥の習性を使ったデバイス。株式会社JVCケンウッド・デザインによる「森とつながるセンスウェアプロトタイプ」だ。


音を感知するとその向きに頭を向ける鳥のオブジェ、「Forest Bird」

まず、目を引いていたのは音のする方向に鳥のオブジェが向きを変える「Forest Bird」だ。これは鳥の生態を身近に感じてもらおうと作った作品で、鳥の「音のする方向を向く」という習性を再現させたもの。音声入力処理用のマイクアレイデバイス「ReSpeaker Mic Array v2.0」で音の向きを取得している。基板上に配置されている4つのマイクを使って音の方向を32分割で取得し、モーターで鳥のオブジェを回転させる仕組み。


基板はReSpeaker Mic Array v2.0を使用(提供:株式会社JVCケンウッド・デザイン)


モーターで鳥のオブジェを回転させる(提供:株式会社JVCケンウッド・デザイン)

会場では、クルクルと向きを変える鳥に子どもたちが盛んに手を叩いていた。実際にはここまで近づけない鳥が自分の音に反応して向いてくれるというおもしろさがある。

もう1つの作品が「Forest Echo」、森の音を聞く糸電話だ。これは、JVCケンウッド・デザインがウェブサイトで提供している「Forest Notes」を使ったもの。Forest Notesは全国5箇所(白神山地、飛騨高山、やまなし水源地、諸塚村、馬路村)の森に設置したマイクを通して、24時間、その音声をライブ配信しているサービスだ。このForest Notesの森の声を会場に届けようというものだ。

ちなみに、Forest Notes自体はライブ配信だが、今の季節はセミの声が強すぎるため過去のアーカイブ音源を使った展示となった。音源には、Forest Notesでマイクが配置されている5箇所のうち、白神山地、やまなし水源地、諸塚村の3つを使用。白神山地はキツツキの音、やまなし水源地は水のポチャポチャという音、諸塚村はうぐいすなど朝の森の音が特徴的なことから。


森の音を聞く糸電話「Forest Echo」

等高線を思わせる板を重ねた山の形をした外装の中に円柱形の装置があり、そこから糸電話を通して森の音を聞く。糸電話なので、糸が外装の板にふれると音が伝わらない。体験する側は、「聞く」ために、糸が板にふれないよう、ピンと張って耳に当てることになる。森のアーカイブ音源をただスピーカーで再生するだけではなく、自発的に聞こうとしないと聞こえないインタラクションデザインになっている。「森の音は森からの発信、それを聞く」ということを意識できるように、このデザインにしたそう。また、板を重ねた山の表現には、手を叩くと糸電話からやまびこのように遅れて伝わってくる効果もある。


糸の先から森の音を聞く

JVCケンウッド・デザインは自社ブランドのインターフェイスデザインやプロダクトデザイン、プロモーションデザインを手掛けながら、Forest Notesなどソーシャルな活動を行っている。今年で3年目の出展。Forest Notesで実際に現地に置く機器のメンテナンスなどもデザイナー自身が行っており、地域と関わっている実感も強く、その土地の思いを伝えたいという思いが根底になっているという。