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2020.09.16

おとでん通信 #6|知ってるようで実は知らない接着剤

Text by editor

おとでんになくてはならない道具を毎回紹介していく「おとでんを支えるツールたち」を、今回はドドンと拡大して「知ってるようで実は知らない接着剤特集」としてお送りしたいと思います。

アドバイザーとしてセメダイン株式会社広報の篠原さんをお呼びして、乙女電芸部のメンバーから質問をして、初心者にうれしい接着剤の選び方と、玄人メイカーにも便利なTipsをまとめてみました!

目次

・もう間違わない! 接着剤の選び方
・乙女電芸部おすすめの接着剤たち
・ついやりがち! 接着失敗エピソード
・より上手に、より快適に! 接着剤TIPS

もう間違わない! 接着剤の選び方

万能って難しい? 接着剤は適材適所がキーワード

接着剤が必要な瞬間は突然やってくるもの。でも、ホームセンターに購入しに行って、多種多様な接着剤を前に「どれを買ったら良いの?」と悩んだことがある方も多いはず。セメダインさんによると、接着剤の選び方がわからない人はホームセンターや100円ショップで瞬間接着剤を購入してしまう人が多いようです。でも、瞬間接着剤は万能ではありません! 目的の素材に合わなかったりすることもしばしば。そして、それがトラウマになり接着剤全般を苦手になってしまう人がいるとか。そんな接着剤とのアンハッピーな出会いを防ぐためにも、覚えておいてほしいキーワードは「接着剤は適材適所」です!

乙女電芸部的決定版!接着剤の選び方チャート

接着剤はまず、「素材と接着剤の硬さ」で選びましょう。まず気にしてしまいがちな「瞬間」や「速乾」などの「硬化時間」は、乙女電芸部的には一番後回しです! それでは行ってみましょう。

①つけるものは硬い? 柔らかい?

接着剤は硬化後の硬さによって、硬いプラスチックのように固まる「硬タイプ」と、柔らかいゴムのように固まる「軟タイプ」の大きく2つに分類されます。まずは、これをつけたい素材の硬さによって決めましょう。

1.柔らかいものと柔らかいものを接着する場合は、接着剤も軟タイプがおすすめ。
2.硬いものと硬いものを接着する場合は、接着剤も硬タイプがおすすめ。
3.柔らかいものと硬いものを接着する場合は、柔らかい方を優先して軟タイプがおすすめ。

例えば多用途や布用、ゴム用と記載のある接着剤は軟タイプが多く、ガラス用やエポキシ系と書いてあるものは硬タイプです。セメダインさんのウェブサイトでは、商品ごとにどちらのタイプかが記載されています。

②使用用途は何?

次に考えたいのは、貼ったあとに外で使う予定があるか、洗濯するものか、水回りで使用するかなどです。

・屋外で使うものであれば、耐水性や耐熱性があるもの
・洗濯するものであれば耐水性と耐衝撃性があるもの

など、つけたものがさらされる環境を考えて接着剤を選ぶとよいでしょう。

③仕上がりはどんな感じがいい?

硬化後に色が変わったり、見た目が変わる接着剤もあるので、仕上がりについても考えてみましょう。みなさん一度は学校で使ったことがあるであろう、木工用の接着剤。あれって使うときは白いけど、固まると透明になりますよね。逆に、透明の瞬間接着剤を使ったらまわりが白くなってしまった、なんてこともあるのではないでしょうか。

瞬間接着剤が白くなる、というのは実は失敗例で、揮発した成分が空気中の湿気と反応して硬まり、それが表面に付着して白くなるそうです。なので、作業に自信のない人は最初から硬化しても透明な仕上がりのものを選ぶのがおすすめです。

コンクリートや水回りで使うために、あえて灰色に硬化する商品などもあります。


クリアタイプの接着剤が透明に固まる様子(スーパーXゴールド)

④硬化時間はどのくらい?

まず気にしてしまう、接着剤が固まるまでの時間。これは乙女電芸部的には、一番後回しにしてよいと考えています。

「速乾タイプ」の接着剤はよく売られています。文字通り、速く乾いて固まるという意味。接着剤のパッケージの裏面をみると必ず硬化時間の記載があります(使い方の欄に書いてあることが多いかも)。硬化時間には2段階あって、接着したものが動かなくなるまでの時間と、完全に固まって実用強度になるまでの時間があります。

「そんなの速いほうが絶対いいじゃん!」と思う人もいるかもしれませんが、速く固まってしまうということは、間違ったときの手直しをする暇がなく固まってしまうということ。硬化時間が長めの接着剤であれば、はみ出た部分をゆっくりきれいに拭き取る時間がありますが、速乾タイプだと、はみ出たまま固まってしまう可能性があります。はみ出しだけでなく、細かいパーツの位置を決めるのに時間がかかる場合などにもゆっくり硬化するタイプがおすすめです。

硬化時間の説明はよく読んで、自分の作業スピードと照らし合わせて考えましょう。また、どんな接着剤も、実用強度に達するにはおよそ「24時間」必要です! それも覚えておきましょう。

番外編! 1液タイプ? それとも2液タイプ?

あまりなじみのない人も多いかもしれませんが、接着剤にはスタンダードな1液タイプだけでなく、2つの液を混ぜて使うタイプもあります。

よく接着剤の蓋が少し空いていて、蓋のまわりが全部固まってしまった! なんてことがありますよね。1液タイプは空気中の湿気と反応すると固まるものも多いので、そういったことが起こりますが、2液タイプは混ぜないと硬化が始まらないので、その失敗は起こりにくいです。また、2液を板などの上に出して混ぜて使うので、量の調節がしやすいというメリットもあります。ただし、2液タイプはエポキシ系の接着剤がほとんどなので、硬タイプばかりです。


2液タイプの接着剤を付属のヘラで混ぜている様子

最後に、接着剤は必ず正しい使用法で使うようにしてください! 必ず、メーカーのウェブサイトや、取扱説明書を確認するようにしてくださいね。

乙女電芸部おすすめの接着剤たち

普段細かい工作をすることが多い、私たちのおすすめ接着剤をご紹介します。他に、メイカーのみなさまが普段使っているおすすめ接着剤があれば、ぜひ教えてくださいね!

スーパーXゴールド(軟タイプ):迷った時は、とりあえずコレ!

スーパーXシリーズは本当にいろいろなものに使い勝手がいいです! このゴールドタイプは2分で動かなくなる速乾タイプ。10mLの小さいものも売っているので、試してみたいという人、そんなにたくさん使わないよーという人にもとってもおすすめ。まずはこれ一本をおうちに置いておくといいと思います!

耐衝撃性耐水性耐熱性もばっちりなので屋外でも使えて、洗濯もできちゃうそうです!乙女電芸部的には、フェルトや布など木工用だと染み込んじゃうものに使うのがおすすめです。

ハイグレード模型用(硬タイプ):作品の仕上がり重視なら、コレ!

プロっぽい名前だけど初心者でも安心の使い勝手。透明なのでクリアパーツやアクセサリー用のストーン接着にもおすすめ! 2〜3時間で固定されるゆっくり硬化タイプで、糸引きもなく、硬化前なら水で拭き取りが可能。仕上がりにこだわる作品づくりなどをされている方におすすめの一本! ちなみに、セメダインさんとしても、今推している接着剤だそうです。

エクセルエポ(硬タイプ):電子基板の防水には、コレ!

2液タイプのエポキシ系接着剤です。硬いプラスチックや金属に使えるので、おもちゃの修復などにもぴったり。高透明度で、耐熱性耐水性にもすぐれているので、乙女電芸部では電子基板を防水したいときにエクセルエポで覆ってしまうこともあります! 混ぜ始めてから10分で硬化し始めるので手直しも効くのに、60分で実用強度に達するというのは心強いです。

アクリサンデー接着剤:アクリルなら、コレ!

少しプロ向けですが、工作のシーンでよく登場するアクリルをくっつけるなら、これが一番です。使うときは、きれいな注射器を使って流し込んでくださいね!

木工用多用途:木材どうしなら、コレ!

学生時代、一番最初に出会ったのはこの形!という方も多いかもしれません。木と木を接着するならこれでつけてからビスで留めるのがベストです。しっかり長く乾かせばちゃんと硬化するので、硬化時間を辛抱強く待ちましょう。クランプやクリップ、洗濯バサミをつかって固定して使うのがおすすめ。この黄緑色パッケージの多用途は木材に加えて、片面が金属でも接着できます。水性で手についても洗い流せるので、お子様にもおすすめ。

ついやりがち!接着失敗エピソード

みんなが一度はやってしまう「あるある接着剤失敗エピソード」と、そんな悲しい思いをせずに済む解決策をセメダインさんに聞いてみました!

つい心配で接着剤をぬり過ぎちゃう

しっかり固まってほしい気持ちが先走って、ついたっぷり塗ってしまい、なぜか全然硬化しない……、そんな経験がある方も多いのでは? 実は接着剤の大原則は「接着面に薄く、まんべんなく塗ること!」 多すぎるとなかなか中まで硬化せず、硬化に時間がかかってしまいます。ヘラや木片などの平らなもので薄く伸ばして塗るのがおすすめです。

つい硬化する前に動かしちゃう

硬化の具合が気になって、そーっと触って確認したつもりがついつい接着面を動かしてしまい、接着剤を上塗りするハメに……、実は、接着剤の上塗りは硬化能力を下げる原因になります。接着剤に明記されている硬化時間中はむやみに触らないほうがベター。クランプ、クリップ、洗濯バサミなどで挟み込んて抑えるのは、硬化能力を活かすためにも、うっかり動かしてしまう事故を防ぐのにも効果的です。

また、『「確認のために指で押して動かなくなる(硬化)」と「使えるようになる(実用強度)」は別』というのもポイントです。とにかく硬化時間は守りましょう!

「くっつけやすい形状」と「くっつけにくい形状」

接着強度は接着面積に比例するので、狭い面積同士だとくっつけにくいそうです。細長いものは接着面がどうしても小さくなるので接着が難しいので、どうしても接着剤でつけたい場合は、添え木のようなものを使えば補強できる場合もあるそうです。

メガネのつるやおもちゃのアンテナなどの細いものが折れた場合は、接着剤だけで直すのは難しいです。特にメガネのつるに接着剤をつけてしまうと、くっつかないだけでなく、修理に出した時にその接着剤を取るのにすごく時間がかかってしまうそうなので、応急処置はテープにしましょう!

2液の接着剤が固まらない

上でお話しした2液タイプの接着剤がうまく使えない場合は以下のどちらかが原因の場合が多いそうです。

①1:1で混ぜられていない:2液を円形に出して並べると起きやすいミスです。まっすぐ平行に2液を出すと長さと太さを比べやすいので同量になりやすくおすすめです。


左のように円形で出すと厚みが出てしまいA剤とB剤の量が比べにくいので、右のように平行に出しましょう

②まんべんなく混ぜられていない:付属のヘラではなく、爪楊枝などの細いもので混ぜると起きやすいミスです。付属のヘラがない場合は小さな板や割り箸を平行に使って混ぜるようにしましょう。

くっつけたはずなのに外れちゃう

使用用途と接着剤の特性があっていないと起こりやすいです。選び方の最後で使用用途について書いたので、ここでは接着剤と似た使われ方をするグルーガンとUVレジンについても触れます。

グルーガンはおとでん通信 #2でも紹介したように、ちょっとしたものを固定するにはとても便利でいろいろな素材に使うことができます。ただ、グルーガンで止めたものが夏の屋外でポロっと取れてしまうという話はよく聞きます。グルーガンは熱で溶ける素材なので、熱に弱いのは当たり前。トロトロになるほどは溶けなくても、強度を保てなくなることはよくあります。部屋や車内でも高温になることはあるので夏場に使用するものはグルーガンではなく、熱に強い接着剤を使うのがおすすめです!

また、UVレジンを接着剤代わりに使うのはよくないそうです。乙女電芸部でもたくさんUVレジンを使っていた時期があり、UVライトが手元にあるとどうしても接着用途にも使いたくなってしまう気持ちはわかるのですが、UVレジンはその名の通りUVをあてて硬化するものなので、光が当たらないところは硬化しないのです。UVレジン自体にもそんなに強度はないので、UVレジンでつくったパーツに取り付け金具などを付ける場合は接着剤を使うのがおすすめです。

より上手に、より快適に!接着剤TIPS

スーパーX、瞬間接着剤には「はぁ〜」の息

スーパーXや瞬間接着剤は、空気中の水分がトリガーになって硬化するそうです。ですので、冬場の乾燥する時期は硬化が遅いことも。「はぁ〜」と息を吹きかけると硬化をちょっぴり早められます。ポイントは「ふぅー」ではなく、冬場に冷えた手を温めるような「はぁ〜」という息を広面積に吹きかけることらしいです(笑)

2液の接着剤のヘラをなくしたら、ゼムクリップの出番!

先ほども2液の接着剤のヘラがない場合は、小さい板や割り箸を平行に使うとよいと書きましたが、お話をお聞きした篠原さんのおすすめは、ゼムクリップを開いて使うとのこと! 開く回数によって棒の長さも調整できるし、塗るときは先っぽを使えば細かく接着剤がつけられます。

3Dプリンターの造形物をくっつけたい!

セメダインさんの記事「3Dプリンターの造形物をくっつけよう!」シリーズは3Dプリンターでつくった造形物と接着剤の相性をJIS規格の引張せん断試験で評価するというもの。各造形方法やメーカーによるフィラメントの成分違いなども網羅されているので3Dプリンターを使ってものづくりをしている人は必見です!

https://www.cemedine.co.jp/cemedine_reports/3d.html

番外編 こんな使い方もあり!

古い接着剤を捨てるくらいなら遊んじゃおう!

セメダインCを水に垂らして遊ぼう!

セメダインCに含まれるアルコール成分が水に溶け出して、水に浮いているものにかかるバランスが崩れるため動くんだとか! 自由研究にもなりそうですね。

クリアファイルの上にスーパーXをたらして、24時間待てばチンアナゴのできあがり。デコレーションもかわいいですね! クリアファイルはポリプロピレンという接着剤がつきにくい素材なので、固まったあとはペロンとはがせます。


接着剤は使いこなせると、とっても頼り甲斐があって愛着が出てくるものです! ニューノーマルな社会では頻繁に買い物にいくのではなく、おうちでものづくりをしたり、おうちにあるものを修繕して使うことが大事になるのでは、と乙女電芸部では考えています。みなさんもものづくりの相棒にぜひ接着剤を取り入れてみてはいかがでしょうか。