Fabrication

2014.03.18

農業の未来はオープンソースで開かれる

Text by kanai

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足こぎ式の堆肥粉砕器を披露するFarm Hack。World Maker Faire New Yorkにて。

農家はイノベーターだ。機械いじりが大好きな彼らを表すには、この表現がピッタリだ。彼らは、サーバーファームが立ち上がり、クラウドコンピューティングが普及するずっと前から、複雑な機械をハックし、新しい技術を開発していた。1994年からアメリカの農家は人工衛星を使って農業を管理するようになっているが、我々のイメージは、いまだに錆びついた古いトラクターを運転する彼らの姿だ。

草の根の農業イノベーションは飛躍的に進歩しているのだが、一般人にはそうした現場での地味な技術はあまり伝えられず、研究所で行われているバイオテクノロジーの話ばかりが聞こえてくる。先進的な農業の実践状況や技術に関する一般の人間の認識は、ようやく実体に追いついてきたところだ。研究の成果で特許を取ったり、発明家として知られるようになる農家もいるが、そこまでいく人はかなり希だ。彼らは必要に応じて工夫をするだけで、生活が変化することはない。少し効率化される程度だ。

The Rural Advancement Foundation International(RAFI)Farm Hackは、Growing Innovationというプロジェクトを通して、農家をイノベーターやMakerになるよう奨励している。この2つの団体は、共同でKickstarterキャンペーンを行い、農業におけるイノベーションのオンラインライブラリー作りと、農家によって開発された持続可能なモデルを本にして出版することを計画している。そのオンラインライブラリーには、農家プロジェクトの検索可能なデータベースとインタラクティブな地図が含まれる。また、プロジェクトの詳細な設計図や費用なども公開される。本には、RAFIのアーカイブにある、簡単に作れて、さまざまな場面で応用が利く農家プロジェクトが掲載される。

RAFIは、17年以上にもわたり、農家によるイノベーションを記録し、仲間同士の情報交換を奨励してきた。1997年にTobacco Communities Reinvestment Fundが創設されて以来、RAFIは500以上もの農家主導のプロジェクトに補助金を提供してきた。それらのプロジェクトは、Through Growingを通して、他の農家の研究や利用に役立てるように公開される。またRAFIでは、ライブラリーのすべてのコンテンツをFarm Hackのウェブサイトに提供する計画もある。このサイトを利用する機械好きな農家のコミュニティが、同じオープンソースの精神を持ち、豊富な情報の集積に貢献してくれることを期待している。

With support from RAFI in 2011, a group of farmers started a local sustainable agriculture tool lending library that now includes 11 farms.
2011年にRAFIから支援を受けたLil FarmのGeorge O’NealとKelly Owensbyは、持続可能な農業のための道具の貸し出しライブラリーを開設した。現在、11の農場が参加している。

「毎年、RAFIのTobacco Communities Reinvestment Fundは、最高に革新的でクリエイティブな農家を見つけ出しています」と語るのはRAFIのJoe Schroederだ。「それらの人々に、小規模、中規模な農場で利益をあげて生活を成り立たせる方法をデモンストレーションしてもらい、周囲の農家やコミュニティに知恵を与えてもらいたいと思っています」

RAFIに加盟している農家は、新しい道具やユニークなビジネスモデルを開発してきた。それは、エスニックな農作物の栽培からファームトゥテーブル生協までいろいろだ。彼らは、古いタバコ農園の納屋や大規模な養鶏施設などの古い農業施設を再利用するための方法を発見した。また彼らは、新しい農園事業を興し、古いやり方から脱却してきた。彼らが開発した事物は、農業改革の最先端を行っていることに気づくようになった。

「RAFIはFarm Hackと100パーセント歩調を揃えています。農業に関する最高の実践的情報や知識を集めてパブリックドメインにして、私たちみんなが安心して食べたいと思う食料を生産する食料システムを構築します。それが力強い農業システムを支えるのです」とFarm Hackの共同創設者、Com Coxは話している。2010年からFarm Hackは、農家、エンジニア、デザイナー、建築家、Sustainability Advocate(持続可能性支援者)を結びつけ、アイデア、技術、情報の交換を行っている。個人的なイベントやWikipediaに作ったオンラインコミュニティなどを通じて、Farm Hackの会員たちは、共同して農業用の道具や技術の改良や開発を行っている。

RAFIのプロジェクトコーディネーターであり、ウェブ開発や未来の農業を裏で支える人間として、私は、こうしたまったく異分野に見える人々とつながることでの可能性に興奮を覚えている。「すべての農家が最高の情報を入手できるということが重要です。すべての農地がすでに、研究開発農場となっています。互いにつながれること、そして自分たちの成果をより多くの人たちに向けて公表できることは、とてもエキサイティングです」とCox。RAFIもFarm Hackも、オープンソースなプラットフォームこそ、農家同士をつなぎ、器具や情報の交換に役立つものと考えている。

RAFIのJoe Schroederは、こうした活動が、やがては農業イノベーションの全国規模のライブラリーに発展すると主張しているが、こう強調する。「私たちの活動の成否は、どれだけ多くの農家がその情報を利用できるようになり、どれだけ多くの人が自分のアイデアでみんなに貢献したいと考えるようになるかにかかっています」Growing Innovationプロジェクトは農家の支援に全力を尽くしているが、Farm Hackのオープンソースな学際的モデルと同様に、異なるコミュニティ同士をつなぎ、その恩恵を広範囲に普及させる可能性を秘めている。

Growing Innovationに関する詳細(英語):http://kck.st/growrafi

Growing InnovationのKickstarterキャンペーンは2014年3月22日までです。

– Jean Willoughby

原文