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2015.08.01

MFT2015レポート ― 技術がなくても作りたい人のための「ヘボコン」、水上で競う「水ヘボコン」開幕!

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「技術はないけどロボットが好き!」「不器用だけど何か作るのが好き」――そんな気持ちを抱えながら、技術力がないために諦めていた人のためのロボットコンテストが「ヘボコン」だ。Maker Faire Tokyo2014で人気を博したヘボコンが今回も登場! しかも、今回は「ロボット相撲」に加え、新機軸としてフィールドを「プール」に移した「水ヘボコン」が加わっている。

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水ヘボコンの競技会場は屋外の特設プール

水ヘボコンのルールは、ロボット船によって「コイン」をゴールまで先に運んだ方が勝ち。コース内には、水中ポンプによる噴水やシャワーからの放水などの障害物もあり、決して簡単なものではない。8チームによるトーナメント方式で、1対1の勝負を最後まで勝ち抜いたロボット船が優勝だ。

このコンテスト、勝つことがひとつの目的だが、それだけに価値を置いていないのがヘボコンの特徴だ。「稚拙な技術で作る」ことに重きを置いているため、自動操縦や遠隔操縦などの「ハイテク」はペナルティの対象になる。

初日の8月1日は、3回の水ヘボコンが開催されたが、その中から第1回の様子をお伝えする。この第1回への参加者は、事前募集への応募者で、力作・迷作揃いのコンテストとなった。

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第1回水ヘボコンのトーナメント表。3回、勝ち抜けば優勝だ

参加したのは「クイーントマトマン1号」、「わわわ」、「チームめがね」、「まつもとジュンイチロウ」、「OG技研」、「ダメリーマン」、「こがもハウス」の計7チーム。

「クイーントマトマン1号」は、四角い桶をベースに、膨らませた風船の空気を水中に吹き出して進むタイプ。安定性はあるものの、風船の空気がなくなると、身動きが取れなくなるのが欠点。

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下手のついた赤い風船をトマトに見立てている。機体横にビーチサンダルが張り付いているが、浮力には貢献していないあたりがヘボコンならでは

「わわわ」は、四角いスチロール版の上に透明な陳列ケースが備え付けられ、内部でヒゲのダンサーが踊りまくるという、派手なもの。3機もの水中モーターを搭載しているが、サイズと形状のため水中抵抗が大きく、速度が出にくいという弱点を抱える。

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ケース内のヒゲダンサーは、競技が進むたびに壊れていき、決勝戦はヨロヨロとかろうじて動いていた

「チームめがね」の機体は、発泡スチロールと船を組み合わせたもの。リモコンによる無線操作できるネズミが舵を取る仕組みだが、進行方向をコントロールできるが、動力源が風船のため、すぐに動作不能となってしまう。

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途中、舵を取るネズミが壊れ、常に右旋回するようになってしまった

「まつもとジュンイチロウ」の機体は、桃の上に桃太郎が座っているという、ファンタジー路線。桃太郎のフィギュアには塗装が施され、非常に完成度が高い。だが、バランスが悪くすぐにコインを落としてしまった。
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作るのに凝りすぎて、テストをまったくしなかったため、桃太郎の右手のお盆にコインを置くと不安定になってしまった

「OG技研」は、竹を切り出したボディに水中モーターを搭載したもの。ボディの後ろ半分には「そうめん」を搭載できるのが特徴だ。走行するとプールに「流しそうめん」をまき散らすという欠点はあるものの、小さなボディと長細い形状が功を奏して、速度と安定性が今回の参加者の中では抜きん出ていた。

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見た目は地味だが、速度はピカイチ。レースのたびに流しそうめんでプールを汚染する強者

「ダメリーマン」は、四角いスチロール板の上に、南国リゾート風の庭園を再現した機体。カエルとヘビが乗っているのがポイントだ。しかし、これも水中抵抗が大きいため、波の影響を受けやすく苦戦した。

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炎天下で開催されたなかで、非常に爽やかだったが、戦績はいまいち

「こがもハウス」は、タミヤの「メカ・フグ (尾ヒレ走航タイプ)」を改造したスイカ型マシン。市販のキットをベースにしているが、小スイカ型のアウトリガー(浮子)という工夫を加えており、侮れない機体だ。

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タミヤのキットをベースにアウトリガーで安定性を加えたが、途中でコインを落としてしまった

これらのマシンによるトーナメント戦の結果、優勝を飾ったのは「OG技研」。「流しそうめん」というネタに走った期待ながら、結果的に速度と安定性に優れたことが勝因となった。また、優勝よりも「偉い」という審査員賞だが、力作・迷作揃いで甲乙付けがたいため審査員の増田殊大さん(NPO日本水中ロボネット)も迷いに迷ったあげく「まつもとジュンイチロウ」さんの桃太郎が選ばれた。

さて、この水ヘボコンとヘボコンは、8月2日(日)にも開催される。当日も参加を受け付けており、会場の制作スペースで、用意された発泡スチロールや段ボールなどを用いて機体を製作できる。ロークオリティなヘボコンをひと目みたい方、または自分でぜひ作りたいという方は、ぜひご来場を。なお、出場する場は整理券が必要となるので、コンテストページをよくお読みのうえ、ご参加ください。

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水ヘボコンへの参加マシンたち。いずれも個性派揃い

― 青山 佑輔