2015.08.01
MFT2015出展者紹介 ─ 自転車は乗るより作るのが楽しい! カーボンフレームから自作したハブステア自転車
世界に一台しかないオリジナル自転車をカーボンフレームで自作した
前田武志さんは自作の自転車でMaker Faire Tokyo会場に乗り込んだ。最初に目を引くのが黒光りするフレームだ。カーボン素材で作られており、自分で設計・製作している。市販されているCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の板は使わず、シート状のCFRP素材(プリプレグ)を成型、自作の焼成炉で加熱硬化させている。
自作の焼成炉というとりっぱなものを想像するが、写真を見ると簡素さに衝撃を受ける。この方式は自由大学の講座で学んだという。
自転車フレームの奥に見える箱が自作の焼成炉。段ボール箱にヒートガンと温度センサを取り付けている(写真提供:前田武志)
その黒いカーボンフレームを支える前輪をよく見ると、普通の自転車とは構造が違うことに気づく。ハンドルから前輪へ延びるステアリング軸はなく、ペダル側から水平に出たスイングアームが車軸につながっているのである。
ハブステア機構では、前輪のステアリング軸は車軸の中に収められている。ハンドルの回転はもう1本のアームを通してステアリング軸に伝えられ、前輪の向きが変わるしくみである。
ハブステアリング方式の前輪を左へ切ったところ。車軸の中にステアリング軸がある
ハブステア用のハブはアルミからの削り出しで自作、ホイールも手組である。さらに内装変速機に必要なベルクランク機構もスイングアームの形状に合わせて自作した。
ケーブルをほぼすべて内蔵していることもこだわりのポイントだ。前田さんは人型ロボットの格闘技大会「ROBO-ONE」で優勝経験があるほどのロボット製作の実力者である。ロボットのケーブルを内部に納めれば見た目がよいし、ケーブルが引っかかって故障するようなトラブルも防げる。自転車作りでも同じようにケーブルを内蔵した。
前田さんは実はこれまでに3台、自転車の自作や改造をしてきている。1台目はカーボンフレームを自作する方法を学びつつ、自転車をまず完成させることを目標に製作した。2台目は電動アシストつき、ディスクブレーキ採用といった自分好みの仕様を盛り込んで自作。3台目は市販の折りたたみ自転車「ストライダ」を電動アシストつきに改造している。
会場に展示されている2台目の自作自転車と、3台目の電動アシスト化自転車。加えて電動化したバイク「eNSR」も展示中
このうえさらに4台目を作る必要はないのだが、自転車に乗るよりも作ることが好きな前田さん、面白い機構を盛り込もうと考えてハブステアリングの自転車を自作した。ハブステアは機能上のメリットはほぼないうえ、ハンドルの切れ角が制限されるため小回りがきかないというデメリットがある。「それでも作ってみたかったので作った」と断言する。
次の5台目の自転車は、作るとすれば折りたたみ式か分割式をと考えている。3台目の折りたたみ自転車は市販車の改造ですませているため、今度は車載できる自転車を一から自作したいとのことだ。
Maker Faire Tokyo 2015ではロボット/乗り物エリアのB-05-09にて、前田さんの自転車を見ることができる。
また2日の15時30分から15時50分まで、ステージにて前田さんによるプレゼンテーションが行われる。タイトルは「ハブステア車を作るたったひとつのさえた方法」である。
─ 今村 勇輔