Electronics

2016.03.14

開発ボードを知るための7つの特徴

Text by kanai

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ボードは2つのカテゴリーに分類できる。Raspberry Piのように「Linuxが走るもの」と、Arduino Unoのように「Linuxが走らないもの」だ。これは完全に好みの問題だが、機能と複雑さと消費電力とプログラムしやすさなどを計る上でも便利な分類方法なのだ。解説上の都合で、ここではLinuxが走るものを「高級(advanced)ボード」、走らないものを「基本(basic)ボード」と呼ぶことにする。それでは、いろいろなボードを見ていこう。

演算能力

どのボードにもメインチップが搭載されていて、そこで演算や情報処理が行われている。このチップはほぼすべてのボードで異なっており、これがボードの特徴にもなっている。チップごとに性能も異なり、一長一短がある。

「基本ボード」では、8ビットまたは16ビットでデータを処理するシングルチップを搭載しているものが多い。これらのボードは、プログラムを1秒間に数百万から数千万回の演算という低い処理速度で走らせる。基本ボードに使われているチップは、通常は、アナログ入力、タイマー入力とタイマー出力など、現実世界との交信が簡単に行えるようにする電子回路が含まれている。

「高級ボード」は、通常、32ビットまたは64ビットのメインチップを搭載し、コンピューターのマザーボードにあるような機能がワンチップに収められている。これは「システム・オン・チップ」(SoC)とも呼ばれている。高級ボードのメインチップは、スマートフォンやタブレットと同じぐらいの速度があり、1秒間に数億から速いものでは数十億回の演算が行える。これがすべて、手の平サイズのボードに収まって、価格は映画のチケットよりも安かったりするのだから驚きだ。

インジケーター

みんなピカピカ点滅するLEDが好きだ。たいていのボードにも、少なくとも電源LEDとソフトウェアでコントロールできるLEDが搭載されている。電源LEDは、ボードが電源につながっているかを一目で確認できるもので、欠かすことができない。ソフトウェアでコントロールできるLEDもひとつ以上必要だ。新しいボードを買ってきて最初に試すのが、LEDの点滅という人も多いだろう。それは、ボードがきちんと機能していることを知らせてくれる。

オー・ノー! ボタン(リセット)

自分が書いたソフトウェアはパーフェクトだと思いたいが、止まってしまうことはよくある。リセットボタンは、ボードをプログラムの最初の位置に戻して、再びクラッシュの状態を見せてくれるものだ。そして、うまくすれば悪い箇所を突き止めることができる。良心的なボードにはかならずリセットボタンが付いている。

電源

USB、バッテリー、コンセントは、ボードの一般的な電源だ。問題は、5ボルトのUSBを除いて、どれも電圧が違うことだ。ほとんどのボードのコンピューターチップは必要とする電源が固定されている。そのため、ボードの電源部分には電圧レギュレーターが装備されていて、入力ジャックから供給された電源を、チップにっとって適正な電圧に変換している。

基本ボードは、5ボルトか3.3ボルトが普通だが、電池で駆動できるように、5ボルトから3.3ボルトの間に対応しながら、1.8ボルトに変換しているものもある。基本ボードが消費するのは、せいぜい数マイクロワットから、多くても1ワットか2ワットだ。ワット数が低ければ、それだけバッテリーの持ちもよくなる。よくできた基本ボードには、単三電池2本ほどで数カ月から数年もつものもある。

高級ボードは、3.3ボルトか1.8ボルトのものが多い。メインチップの駆動電圧はさらに低く、1.1ボルトから0.7ボルトといった程度だ。そのため、非常に低い電力消費量で高速な演算速度が保てる。電圧はこれほど低いが、標準的な消費電力は数百ミリワットから数十ワットにも及ぶ。とのため、単三電池では数時間から数日しかもたないことになる。

インタラクション

コンピューターは、モノにつないで、モノをスマートにするとより面白くなる。ほとんどのボードには、現実世界との信号のやりとりをするための入力と出力(I/O)の簡単なポートがある。そしてほとんどのボードは、0ボルトからチップの電源供給電圧までの間の電圧に対応できるようになっている。

基本ボードには、少なくともデジタルI/Oが準備されている。これは、SDカードへの読み書きや、I2C、SPI、CANなどのプロトコルを使った他のデバイスとの交信といったボードの機能拡張に使える。基本的なデジタルI/Oは、タイマーやカウンター機能など、さまざまな種類の信号を受け取るように設定変更が可能だ。

多くの基本ボードでは、信号を0ボルトから供給電圧までの間の電圧を使ったデジタル信号に変換することができる。これを「アナログ・デジタル変換」と呼ぶ。多くのセンサーや可変抵抗などの電子部品は、アナログの電圧を発生するので、これをチップに理解可能なデジタル信号に変換してやる必要がある。そこにアナログ・デジタル変換が登場する。基本ボードのなかにはデジタル・アナログ・コンバーターが搭載されているものもあり、出力電圧を0ボルトから供給電圧の間の電圧を出力できるようになっている。

高級ボードには、基本ボードに含まれるすべての機能が搭載されているほかに、素晴らしいオマケ機能もある。基本的には1チップのコンピューターなので、デスクトップのコンピューターと同じく、HDMIや他のビデオ、音声入出力、ハードディスク用のeSATA、外部メモリー、USBホスト、Ethernetなどといった周辺セットが内蔵されているのだ。

通信

ボードとボード、ボードとコンピューター、またはネットにつないで通信させたいこともある。これは通信インターフェイスを通して行われる。

基本ボードの場合は、データの送受信を、もっとも古くてもっともシンプルな、今でも広く使われているコンピューター間通信規格であるRS232Cを使用している。USBが登場する前は、すべてがこれでつながれていた。今では、USBやBluetoothといった通信インターフェイスを持つ基本ボードもある。

高級ボードには、ボード同士の接続よりもさらに進んだWi-Fiまたはインターネットの接続機能がある。外部メモリーが使えるため、EthernetやWi-Fiのインターフェイス部品を通して、TCP/IPやその他のデータ通信規格にも対応する。

組み込み

よくデザインされたボードは、プロジェクトへの組み込みも楽にできる。一般的なのは、ネジで固定するための穴だ。この穴は、ネジの頭がボードの部品や配線に触れて電気的な問題を起こさないよう、それらから十分に離れている必要がある。

高級ボードには、グラウンド(アース)用のネジ穴のあるものもある。ネジを通じて金属ケースに接地させることで、電気的なノイズや干渉を軽減できるというわけだ。

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