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2017.07.21

ミッション・ポッシブル:お互いの問題を解決するオープンなコミュニティ

Text by Dale DoughertyTranslated by kanai

私は、Makerの話を聞くのが大好きだ。彼らが何を、どうやって作っているのかを知るのは楽しい。だがもっとも興味を惹くのは、なぜMakerたちがそれを作っているのか、その理由だ。個人的な興味や情熱でもって開始されるプロジェクトは多い。しかしそれが、Maker自身も想像できなかったようなものに発展してゆく。Makerは探求し実験し、創造し発明する。コミュニティという集団になったとき、Makerは個人的または社会的使命を明確にして、大きな力を発揮するようになる。

アイデアから行動へ

1月に掲載した頑張り屋さんの小さなボートの記事(日本語訳)で、Damon McMillanは、太陽光パネルを積んで自動航行する8フィート(約2.4メートル)のボートのプロジェクトについて話してくれた。それは、個人的な挑戦として、彼のガレージで始まった。競技に出ようとか、お金を稼ごうなどとはまったく考えていなかった。こんなボートを作れないか、実際に試せないかと、純粋に考えていただけだ。2016年5月、彼はそのボートをMaker Faire Bay Areaに出展し、たくさんの意見をもらった。なかには、こんなボートではダメだという否定的な意見もあった。その月の末に、Damonはそのボート、SeaCharger号をハーフムーン湾に運び、ハワイまでの3,860キロメートルの航海に送り出した。ボートは、人工衛星を介して、常に現在位置を伝えてきた。出発から41日後、Damonとその家族は、ハワイのハワイ島に集まり、ボートが岸に辿り着くのを見守った。Damonは、安い電子部品と並みの工作技術でどこまでできるかを、自分自身と周囲の人たちに証明して見せた。彼のボートは、自動航行で長距離を旅するという使命を果たしたのだ。

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ボートをデザインして製作するというのは、この話のほんの一部に過ぎない。また、その旅はハワイでおしまいではなかった。Makerである彼は、お金を出してボートをカリフォルニアの自宅まで運送するなどということは考えなかった。ニュージーランドに向かうようにプログラムを変更し、再び海に放したのだ。SeaChargerは、さらに10,430キロを航行したところで舵が壊れてしまった。それは、たまたま通りかかったコンテナ船に拾われてニュージーランドまで運ばれ、今はニュージーランド海洋博物館に展示されている。

Hanna Edgeはカリフォルニア州ダブリンに住む15歳の高校生。彼女は私に、自分でデザインして3Dプリントした装置を見せてくれた。彼女はそれを「スパイロメーター」と呼んでいた。私はそこで彼女の話を止めて、スパイロメーターとは何かと尋ねた。それは、肺に吸い込まれる空気の量と、吐き出される空気の量を測定する肺活量計のことだと彼女は教えてくれた。なぜそのようなものを開発したのかと聞くと、彼女は喘息を持っているとのことだった。病院へ行けば肺活量計はあるのだが、喘息の発作はいつも病院で起こるわけではない。そこで、個人向けにもっと手軽な肺活量計があってもよいはずだと彼女は考えた。彼女はその装置をSpiroEdge(スパイロエッジ)と名付けた。今では製品化され、スマートフォンを使ってデータを集め、レポートを作ることができる。同じ病気に悩む人は多く、SpiroEdgeはその人たちの役に立つと彼女は確信している。

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Makerムーブメントを支えるDIY精神は、自分のためのものを作れと人々の背中を押してくれる。その気になれば、やり方はいくらでも学べる。問題に突き当たり、解決法がわからなかったとしても、その問題が解決可能であることを知っている人は他に大勢いる。少なくとも、いっしょに考えてくれる人はいる。

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Topher Whiteの装置は不法伐採の音を検知する。写真提供:Rainforest Connection

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ブエノスアイレスの歩行困難な少女を支援するTikkun Olam Makersの国際的ネットワーク。写真提供:TOM

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「マイティー・ソー」風なe-Nableの義手。写真提供:Jen Owen – enablingthefuture.org

Donna Sanchezは、11歳になる脳性マヒの娘、Maliaを助ける装置を誰かが開発してくれることを望んでいた。Maliaの話す言葉は、母親には理解できても、他の人たちにははっきりと伝わらない。彼女が考えているのは、そこを支援してくれる装置だ。Donnaは、Maliaの声を明瞭な英語に変換してくれる想像上の装置を「アーティキュレイター」と呼んでいる。Donnaが考えているのは、首や手首に取り付けて使えるアーティキュレイターだ。そうしたアイデアはあるのだが、自分では作れない。そこで彼女は、その作り方を考えてくれるMakerはいないかと私たちに問い合わせてきた(日本語版記事)。もちろん、これに興味を示すMakerはいると私は信じている。手を貸したいと思う人は、Maker ShareのMaliaのためのミッションに参加してほしい。

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Makerコミュニティを強化する

Makerムーブメントの中で大きく育った実践的なオープン・コミュニティは、いろいろな技能を持つMaker同士、そしてその援助を受ける人たちとを結びつけている。そのひとつの例が、義手のデザインを手がけるMakerと3Dプリントを得意とするMakerが集まったe-Nableコミュニティだ。e-Nableでは、みんなの知識を互いに吸収しながら、いっしょに問題の解決方法を考えている。私はMaker Faireで会った、子どもを持つひとりの父親のことを覚えている。彼は1年前まで、3Dプリンターというものの存在を知らなかったそうだ。それを知ってから、息子のための義手が作れないかと考えるようになった。そして彼はこのコミュニティに参加し、研究を始めた。この話をしているとき、彼の隣にはその息子が立っていた。彼は真っ赤な義手を掲げ、手の平をくるりと反転させて、手の甲の黒いバットマンのロゴを見せてくれた。ふたりは自慢げに笑っていた。

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Makerムーブメントが広がるにつれて、私たちは2つの大きなゴールを目指すようになった。ひとつは、Makerムーブメントの裾野を広げて、多様な経歴を持つ大勢の人たちにツールを与え、スキルとMaker的思考を育ててもらうこと。もうひとつは、多くのMakerの幅広い技能を結集して、より複雑で深刻な問題を解決するためのオープンなコミュニティを築くことだ。私たちは、研究、共同開発、オープン・イノベーションにMakerコミュニティを活用することで、現在、困っている人々に解決策を与えようと多くの研究施設が格闘している課題を解決できるはずだ。

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深海潜水艇のパイロット、Erika Bergman。写真提供:GEECs.com

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キジバ難民キャンプにてチュクドゥ二輪車を作る。写真:Doug Bradbury

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ネパールで3Dプリントを行うField Readyのチーム。写真提供:Field Ready

Makerのミッション

この夏、私たちは新しいインターネット・プラットフォーム、Maker Shareを立ち上げた。Maker Faire同様、そこでMakerたちにプロジェクトを発表し、自分たちの興味や能力のデモンストレーションをして欲しいと考えている。Maker Shareでは、登録者はポートフォリオを作ることができる。そこで、自分の経歴を載せたり、プロジェクトの発表動画を載せて、何を作ったか、どうして作ったかなどを解説できるのだ。Maker Shareは、Makerコミュニティでの協力とイノベーションを加速するために、Intelをパートナーとして迎え入れた。また、Maker Shareでは、重要な問題を解決して人々を助けるための「ミッション」に参加できる。現在は、Maliaのためのミッションが行われている。人道的なもの、環境保護、エネルギー革新、健康管理などなど、もっといろいろなミッションがMaker Shareに増えることを私は期待している。いろいろな人たちと協力してミッションを行うことで、個人的に大きな達成感が得られるだろう。そうしたミッションを資料化することで、Makerムーブメントは、社会への形のある有益性を、そして、メイカースペース、マイクロファクトリー、イノベーションラボなど、Makerを支える施設への投資の有効性を示すことができる。

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風船を使った地図製作の準備をするPublic Lab。写真提供:Public Lab

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震災後のカトマンズで通信設備を整えるRadio Mala。写真提供:Tribhuvan University

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人道的支援を行うSyria Airlift。写真:Hep Svadja

Makerとして、自分にはどんなミッションがあるのかを考えてみよう。アーティストには、自分が何を表現しようとしているのか、なぜそのような選択を行ったかを説明するミッション・ステートメントを示している人が多い。ミッションに参加してもよいし、自分でミッションを立ち上げてもよい。Makerになるための勉強は、重要なミッションに参加するための訓練と考えることもできるだろう。

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原文