企業のなかで部活やサークルといった形でメイカー活動に取り組むメイカーたちを取りあげる本連載。今回は自動車部品メーカーである株式会社デンソーの社内サークル「DEES Maker College(DMC)」の皆さんにお話を伺った。
DMCはMaker Faire Tokyo2017の会場でも展示を行っていた。一例を挙げると、時間をLEDで知らせてくれる歯ブラシやArduinoを組み込んだ自作の小型ドローン、魚の動きを再現した実際に水中を泳げるお魚ロボット、自律走行して迷路を走破するマイクロマウスなど、実に多種多様だ。
自動車業界に疎い人にはピンとこないかもしれないが、デンソーは連結売上高約5兆1千億円、従業員数は約16万9千人という自動車部品のシェアで世界トップクラスの超巨大企業だ。もともと、トヨタ自動車の電装品部門だったが1949年に別会社として独立。そのため、トヨタ以外の自動車メーカーに自動車部品を供給するようになった現在でも、トヨタグループを構成する主要企業であり、トヨタ自動車が筆頭株主となっている。
どちらかというと保守的と言われがちな自動車業界のなかで、DMCのメンバーはメイカーとして社内外で活発な動きを見せ、コラボや情報発信を行い、さらにはテレビ番組やMaker Faireにも登場しており、かなり異色の存在と言える。そもそも、DMCはデンソー社内のなかで、どのような経緯で集まり、そしてグループとして立ち上がったのか。そして、その先にどのような未来を見ているのか。(文と写真:青山祐輔)
好きなものづくりで仲間を増やして社内に活動を広げるために
DMCは、2016年に設置されたばかりの、まだ若い組織。愛知県刈谷市にある本社を主な活動拠点とし、メンバーは2017年11月時点で総勢53名となっている。Maker Faireへの出展のほか、ガジェットやロボット、ドローンの製作や、関連するコンテストへの参加など、すでに多くの活動を行っている。例えば、名古屋テレビによるものづくりやハッカソンをテーマにした番組『メイキンクエスト』にも出演している(ちなみに、前回登場いただいた東芝の「つくるラボ」とも共演)。
Maker Faire Tokyo 2017では多くの展示品を並べており、特にお魚ロボットは子ども達から大人気だった。このお魚ロボットを作ったのは、DMCのなかの「ロボfab」というチームだ。チームキャプテンの加納健良さんは、DMCがきっかけでモノづくりの世界が広がり、そのなかでも仲間とのコラボレーションや外部のメイカーとの繋がりにとくに魅力を感じているという。
「(コラボとか仲間を増やすのが)好きなので、社内だけじゃなくて社外の人ともいろいろプロジェクトをやっている。ひとりでやっても全然盛り上がらないけど、くだらないことでも友達とやってると面白いじゃないですか。何より自分にできないことが得意な人とチームを組めば、アイディアが次から次へと形になっていく」と、DMCで使い始めた3Dプリンターで製作した「メンダコロボット」を披露してくれた。
「名古屋テレビの『メイキンクエスト』がきっかけで、親睦ができてトヨタさんのイベントにロボットを展示したり、名古屋市の『ナゴヤハッカソン』やYAHOO! JAPANの『HACK DAY』に挑戦したり、そこで仲間とのつながりがどんどん広がっている」
「十数年前から少年少女発明クラブの指導員をやっていて、発想豊かな子どもたちとモノづくりをするのも楽しい。(3D CADソフトの)Fusion 360のミートアップイベントに登壇したときは、「エイロボットを作りたい」という高校生の男の子と知り合って、一緒にやっているプロジェクトもあります」(加納さん)
DMCには現在、「ロボfab」チームのほかに、マイクロマウスやレゴ・マインドストームに取り組む「レーサー&ロボット」、ドローン開発やレースを行う「エクストリームマシン」、さまざまなガジェットを作る「ライフハック&ガジェット」、IoT関連に取り組む「サイバーフィジカルIoT」という5つのチームがある。それぞれ活動内容は決まっているが、決して厳密な区分けではない。またメンバーは複数のチームに所属することもできる。
DMCメンバーの皆さん。上段左から東さん、長谷部さん、加納さん、高川さん。下段左から平井さん、山口さん、岡本さん、榎本さん
これらのメンバーのなかにはマイクロマウス(自立型で迷路やラインを自動的に走破する小型ロボット)の海外・日本大会で複数回の優勝経験がある平井雅尊さん(レーサー&ロボット所属)や、さまざまな職業における技術の練度を競う技能五輪国際大会の金メダリストなど、いわば「プロのメイカー」とも言えるような高度な技能や経験を持ったメンバーもいる。
もちろん、DMCのメンバーはプロのメイカーばかりではない。レーサー&ロボットのチームリーダ-である榎本宏さんは、レゴ マインドストームを利用したプログラミングコンテスト「ETロボコン」に仲間とチャレンジしている。仕事はエンジニアだが、ほんの数年前まではマインドストームに触ったことがなかったという。
「一昨年(2016年)、初めてETロボコンに参加したんです。たまたま(東海地区大会の)開催場所がうちの会社だったこともあって、やってみようかなって。だからまだ3年目です」(榎本さん)
榎本さんはエンジニアだが、所属しているのはロボットとは直接関係のない部署。だから、マインドストームのプログラミングもETロボコンへの参加も、あくまでもプライベートとしてのもの。だが、そのなかで学ぶことは多いという。
そして、こうしたDMCが活動するうえで、拠点となっているのが107工房だ。デンソー本社敷地内にある建屋のひとつ「107工場」を活用したもので、3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機械が設置されている他、安全にドローンを飛ばすためのネットで仕切られた練習場、マイクロマウスなどレース競技のためのコースなどが設置されている。正直なところ、かなり贅沢なスペースだ。
マイクロマウスの日本チャンピオン経験がある平井さんは、学生時代やDMCの成立以前から個人でメイカー活動をしてきた、いわば「ガチ勢」。その平井さんの経験から見ても、107工房はかなりのものだという。
「まさか大企業に入ってこれだけ自由に使える工房ができるとは思っていなかった。大企業では珍しいんじゃないかと思っています。ガチ勢としても、十分に楽しめる環境です」(平井さん)
そんな“ガチ勢”が納得するほどの工房だが、このスペースを作る上で金沢工業大学の「夢考房」や、ソニーの「Creative Lounge」などを参考にしたと、DMCのリーダーを務める長谷部雄太さんは話す。
「チームを作るとそれだけで集まりがち。イノベーションのためには横のつながりが大事だと思うので、(DMCのメンバーが)集まりやすいことをイメージしました」
「メンバー同士のつながりを大事にしたいので、効率的な運営や情報共有で工夫をしている。個人のスマホからSlackで連絡したりニュースを共有したりして、お互いに刺激し合っている」(長谷部さん)
一方で、企業のなかでの活動だけに、さまざまな制限も存在する。例えば、DMCはあくまでも業務外の取り組みのため、セキュリティ上の観点から会社のPCや回線を使うことができない。また、107工房も本社内であるため、一般的なインターネット回線を引くことができない。
一方で、企業内でのメイカー活動には、どうしてもグレーなゾーンが出てきてしまう。ライフハックガジェットチームのキャプテンを務める東周(ひがし・あまね)さんも、その難しさを語る。
「会社の業務との線引きがしっかりできていなければ当然問題になる。そうなるとDMCを存続させることもできないので明確に分けることを意識して活動している。ただ、理想的には遊びの延長が仕事になったらスゴく楽しいはず。将来的にはそういうところを目指したい」(東さん)
DMCのメンバーはさまざまな制限があるなかで、少しずつ工夫し徐々にだが活動を広げている。また、そうしたDMCの活動に期待する人たちもいる。そして、この「広げる」という点が、DMCの活動では大事なポイントだ。
そのためにデンソー全社へ向けてアピールする活動も行っている。例えば、Maker Faire Tokyo 2017のバスツアーだ。出展する自分たちだけでなく、もっと多くの社員にMaker Faireを知ってもらうために、デンソーの社用バスを利用した日帰りツアーを企画したところ、すぐに50名の枠が埋まったという。
「(愛知県から東京への)日帰りで弾丸ツアーをやるけど行く人いる? と全社にメールしたらあっという間に埋まった。一日で刈谷から東京に行って現地滞在は3~4時間で帰ってくる弾丸ツアーだったんですけど、結構楽しかった、来年もあればぜひ行きたいと言ってくれた」(長谷部さん)
単に自分たちが好きにメイカー活動をするだけではなく、デンソー社内にメイカー活動の楽しさを広めて行きたいというのが、DMCにとってとても大切な目的となっている。そして、それこそが実はDMCの出発点でもあり、DMCに対して周りから託されたことでもあるのだ。
DEES Maker Collegeとデンソー技術会とデンソーと
冒頭で、DMCを「デンソーの社内サークル」と表現したが、実のところこれは正確ではない。DMCは、デンソーグループの社員有志による任意団体「デンソー技術会」のなかに設けられたグループという位置づけ。DMCの正式名称「DEES Maker College」の「DEES」とは、デンソー技術会の略称なのだ。
では、そもそもデンソー技術会とはどのような組織なのか。
デンソーグループの社員有志からなり、会員数は約1万4千人設立は1956年にまでさかのぼるため、60年を超える歴史を持っている。会の目的は「技術の研鑽と会員相互の親睦」であり、業務以外のところでの技術の研鑽や情報交換、さらには異分野異業種の動きを知るといった狙いがある。
デンソー技術会の会長の植田展正さんは、技術会の位置づけを次のように話してくれた。
「元々は技術全般の向上とか、会員相互の親睦を図る目的で設立された団体になっています。会員は基本的には希望者で、強制でやるような活動ではございません」
「仕事にも良い影響を与えたいという位置づけで始まったはずなんですけど、昨今のセキュリティなどの問題がありますので、いまは完全に業務と切り離された形になっています」
技術会はデンソーだけではなく、じつはトヨタ自動車を初めとするトヨタグループの多くの企業にも存在し、それぞれの技術会の間で交流もあるという。日本の工業史をひもとくと、かつて自動車業界を中心に技術会が設立されたのは、業務時間以外のところで個人として技術を磨き知識を学ぶだけでなく、仕事に直結した品質や生産性向上のため、自主的な研究活動の場であったことがわかる。
しかし、業務ではないところで業務に関わる活動を行うことに対し、企業として秘匿性の高い情報をいかに守るか、また労務管理におけるコンプライアンスの問題などもあり、現在の技術会はその存在や活動にデンソーから支援はあるものの、業務とは明確に切り離された形になっている。
一方で、技術会はその発足の由来から、メンバーにいかに技術を磨いてもらうか、また仕事へのモチベーションを高めてもらうか、そしてエンジニアとして成長を促すかということを大きな目的としており、その実現のためにさまざまな活動を行っている。
「例えば会誌を発行したりであるとか、著名人を外部から呼んで講演会を。規模が大きいものですと会社のホールをつかって千名弱くらい入ることもある」
「自動車業界なので車に絡んだ活動をやろうと言うことで、例えばカートに乗ってみたりとか、四駆に乗ってコースに出向いて乗車体験するとか、そういった活動をやっています。最近ダイバーシティという話しがでているので、女性のグループが中心になっているような部隊もあります」(植田さん)
こうした「エンジニアとしての社員を元気づける」ための取り組みのなかで、技術の研鑽という点にもっとも直接的に働き掛ける活動が「夢卵(ムーラン)」だ。
夢卵はデンソーグループのすべての社員に対して開かれたアイデアコンテスト。2年ごとに開催されており、毎回、数万件ものアイデアの応募があるなかから、審査をくぐり抜けた応募者に対し補助金を与え、アイデアを形にすることができるというものだ。そして、実際に形になった応募作品は、刈谷市のデンソー本社にて一般にも公開される形で展示され、最終審査が行われる。
大きな特徴は、アイデアは自動車関連など既存事業に縛られる必要がなく、個人が思いつくまま、自由な発想が推奨されている点だ。また、募集期間や応募総数、また掛けられる予算や最終アウトプットなど、夢卵は非常に大がかりな催しとなっており、そこに係わる人々の労力や情熱も相当なものだ。
ただし、ここで応募された技術や作品は、基本的に製品開発や業務には取り入れられることがない。あくまでも「エンジニアの腕試し」に止まっているのだ。そういう意味では、最近の企業で盛んに行われるようになった、新規事業や新製品開発に直結するアイデアコンテストとは位置づけが異なる。
「今はダイレクトにそういう(事業に取り入れる)仕組みにはしていないんですけど、せっかく出たアイデアなので、新事業の方で吸い上げられないかとか、そういった仕組みに繋げるような活動を一部始めていますね」(植田さん)
そうした「新事業に繋げる活動」のひとつが、アメリカで開催される家電の展示会「CES」における受賞作品の展示だ。CESは本来、新製品をアピールする商談の場であるため、そこに新製品ではないコンテストの作品を展示するのは異例だ。
だが、少しでも夢卵のような取り組みから、新たな事業につながるものを取り入れたい、その思いを実現するファーストステップがCESでの展示なのだ。そして、そんな新しい活動のもうひとつの芽が、DMCというわけだ。そもそもDMCがどのようにスタートしたのか、その経緯を振り返ろう。
DMCという「尖ったメンバー」と「自由な場」が、皆を元気にする
きっかけは、2016年にデンソー技術会が発足から60年を迎えたことにある。そこで60周年を記念した活動を行うべく記念誌を作ったり、大がかりな講演会を開いたりしたなかで、他に何かできないかと技術会員から募ったところ、ひとつのアイデアが届いた。DMC副学長を務める山口真さんは、その経緯を次のように語る。
「アイデアクラフト系の活動をしたいから何かないかと募ったときに、手を挙げてくれたメンバーがいまして、それが広がって大きくなっていったんです。でも、ものづくりする活動は他にもあるものですから、新しい活動はどういう形にすればよいものか、右往左往しました」
「だから最初はコンセプトもなにもなかった。でも、尖ったメンバーを集めるためには、最初から枠を決めたくなかった。どういうメンバーが集まってくるのか様子を見ながら、立ち上げていった」(山口さん)
このとき集まったのが、現在のDMCの中核を担うメンバーであり、DMCの基本コンセプトとなる「工房」というアイデアだ。そして、山口さんが望んだとおり、彼らはことごとく「尖ったメンバー」ばかりだったのだ。
もうひとつ、「人」と同じくらい大切なのが工房となる「場所」だ。
「3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル加工機を活用したメイカームーブメントが世の中に浸透してきており、自分も挑戦したいという思いがあった。ただ、従来の活動は、車とか天文とか専門分野に分かれている。いろいろな専門分野の仲間を集め、分野をまたいで皆で刺激し合うことで見たことのない新しいものを創りたいという想いがあったんです。そのためには社内で自由に使える『工房』だろうと」(岡本さん)
広々とした工房には工作機械やレース用のコースなどが設置されている
DMC立ち上げメンバーのひとりで、運営担当サブリーダーを務める岡本強さんは、DMCのもととなる工房のイメージをこのように語る。実は、前述の山口さんも、同じような「工房」のイメージを以前から持っていたという。しかし、その実現にはかなりの紆余曲折があった。
「もともと、そういう場が欲しいと思っていたんですよね。それで、社長に相談に行ったことがあるんです。最初は専用の建物を作りたいといったら、逆鱗に触れてしまいました(笑)。以前の上司だったから性格はよくわかっていたので、その時は黙って諦めた。しばらく経ってから、社長が気にしているというのが伝わってきたので、もう1回『若い人には場所が必要だ』と相談したら、まずは空いている空間を使ってやってみろとおっしゃってくれた」
「そこから60周年のため集まったメンバーに協力してもらって『場』ができた。そんなに立派なものじゃないですが、第一歩です。この後、彼らの活動をどう認めてもらって広がるかってことです。予算もいっぱい掛かったし、反対もあったんですが、みんなを元気にするために必要なんだと。結果的には上手くいってよかったと思います」(山口さん)
こうして2016年9月に107工房とともにDMCが誕生した。同年11月には社内のアイデアコンテスト「夢卵」にて展示を行ったり、12月には岐阜県大垣市で開催された「Ogaki Mini Maker Faire」を視察したりした。このOgaki Mini Maker Faireの視察が、後に全社を対象としたMaker Faire Tokyo 2017弾丸ツアーの原型にもなった。
さらに、こうしたDMCの活動成果は、デンソー技術会誌である「sandpit」にレポートを載せており、さらに多くの社員に知ってもらえるような取り組みも継続している。だが、DMCのメンバーは、メイカー活動を広めるためには、まだまだ足りないと思っている。それは、彼らがDMCの先に、もっと大きなビジョンを見ているからだ。
日本のものづくりを元気にするためメイカーにできること
DMCのメンバーは、デンソーの社員であることを明らかにして、社外でさまざまな活動を行っている。それは、やはりデンソーという社名が大きな意味を持つからだ。平井さんも「大企業だからこそできるようなコラボレーションもある。普通ならできないようなメンバーと一緒に何かすることができる」と話す。
そして社内外関係なく、面白い活動をしたいという気持ちは、加納さんを筆頭にDMCのメンバーの多くが抱えている。
「僕も以前活動していたときは、作っても子どもたちと喜んで終わりだった。でも、DMCで見てもらうと反応ももらえるし、アドバイスももらえるし、それで面白いねって人が増えてくると、それが新しい刺激になっている。僕はその作っていろんな人に見せるというのと、外とつながっていくというところの両方をやっていきたいなと思っている」(加納さん)
DMCのメンバーが、こんなにも活動を広げることに熱心なのは、もちろん楽しさもあるが、自分たちの活動によって技術会や会社全体、そして日本を元気にしたいという思いがあるからだ。
「日本のものづくりが元気ないって言われるじゃないですか。そのなかでこんなにメーカームーブメントが盛り上がるっていうことは、みんな作りたいモノがあるんだけど、会社の中ではできてないんですよ。だから地味な活動だけど、少しずついろんなところでシンパを増やして、もっともっと大きくなっていくことが大切」(平井さん)
DMCの活動のなかで作られた作品たち。ここに写っているものは、ごく一部だけ
デンソーのなかで、何か新しいことを始めて、周りに刺激を与える。DMCにはそんな役割が求められていることが、DMCの周辺からは伝わってくる。時には既存のルールを厭わなかったり、自分からどんどん動き出し、そして社外にも飛び出していく。そんな尖ったメンバーがDMCには揃っている。
「前の会社は『上司の言うことは無視しろ』という文化があった(笑)。でも、デンソーの人たちってスゴく優秀でマジメだけど、おとなしい人が多いように感じます。でも、DMCには変な人が集まっている(笑)」
「この人たちは初めて会ったときから刺激的で、相性というかフィットする感じがあった」(東さん)
ライフハックガジェットチームのキャプテンを務める東さんは、在京電機メーカーから転職してきた。以前の職場とデンソーでは、同じ製造業であってもかなり違う空気を感じていたという。その東さんでも、DMCのメンバーは驚かされることが多いという。また、技術会会長の植田さんも、DMCとそのメンバーへの期待を隠さない。
「結構、厳しいことも言っているんです。『オマエらなってない』とか(笑)。でも、こういう元気なメンバーがいるとやっぱり活動が変わってきます。そういった意味で厳しいことも言いつつ、頑張って欲しい」(植田さん)
Maker Faire Tokyoを長らく取材しているなか、出展しているメイカーに職業を伺うと、実は自動車業界に所属しているという人は多い。もちろん、日本の自動車業界は世界有数であり、間違いなく日本の基幹産業だ。当然ながら、就業人口や製品出荷額などのマクロ統計を見ても、日本全体のそれの大きな割合を占めている。つまり、日本には自動車業界に関連するエンジニアが多いのだから、Maker Faireにも多く参加しているのも当然といえる。
ということは、自動車業界にメイカーがもっと増えれば、日本のものづくりに大きな影響を及ぼすということも考えられる。そして、DMCの活動は、間違いなくその第一歩となっている。取材時に、DMCのメンバーのひとりが「偉くなりたい」という言葉を口にした。それは端的に、会社をもっと変えたいという意志の表れだろう。
もしかしたら将来、メイカーがデンソーの社長に就き、社を挙げてMaker Faire Tokyoに参加する、そんな日が来るのかもしれない。