Fabrication

2018.10.02

あなたのメイカースペースにポジティブなMakerカルチャーを築くための6つの知恵

Text by Joel Leonard
Translated by kanai

場所、機材、工具、寄付、資金を調達するのは、とても大変な仕事だけど、メイカースペースに必要な物資を揃えることなど、Makerカルチャーを作り上げることに比べれば、ずっと簡単だ。

物も人も人間関係も使い捨てを好む今の社会で、どうしたらMakerカルチャーを築くことができるだろうか? 私たちの今の社会は、己の知識をひけらかして、言葉を使ってほかの人たちの才能を蔑んだり、ケチをつけることを良しとしていないだろうか?

非常に難しい問題が山積みであり、みなさんの知識や努力に大いに期待したいところだが、ここにいくつか役に立つ知恵を紹介しておこう。

メイカースペースの目標を定める

まずは「メイカースペースの行動規範」を作る。これは文化的な基準であり、最初に一回宣言するだけとか、どこかに書いて貼り出しておくだけではなく、みんなが集まるごとに繰り返し確認する。

Makerカルチャーを築くために、自分たちの価値観を名前やキャッチフレーズに込めているスペースもある。そうすれば、ことあるごとに、そのメイカースペースの価値観を説明できる。たとえば、Decatur Makersのミッションは、探究心旺盛でやる気のある人たちを温かく迎えるファミリーな感覚のコミュニティを作り、安全な環境で、発見、理解、デザイン、面白いものの創造を助けることにある。そのキャッチフレーズは「Build. Share. Explore」(作って、教えて、探求する)だ。


先日、Decatur Makersのボランティアが、国際救援委員会アトランタから送られたMakerを手伝い、アクアポニクス・システムのデザインと組み立てを行なった。アクアポニクスとは、水生動物を育てる環境と植物の水耕栽培を組み合わせて共生環境を作るシステムのこと。

もうひとつの実例は、メリーランド州ソールズベリーのM4 Reactorだ。彼らは文化的な目標を意図的にブランディングに込めている。

正しい活動と態度を強化する

Makerカルチャーを築くには、楽しくて創造的な環境を作ることに、注意深くなるばかりでなく、前向きな気持ちを強く持つ必要がある。ルールに違反した人を非難するのではなく、根気強く教育しよう。

日常的に、よい行いをした人たちを撮影して表彰しているだろうか? 何かを得ることが賛美される。だから、監視カメラで泥棒を捕まえたり、危険な行動を見張るのではなく、毎週、無料のピザをふるまって、ほかの人の参考になるような望ましい行動をした人をたたえるというのはどうだろう。

フットボールの世界では、ボールにしがみつけという指導のほうが、ファンブルするなという指導よりも有効だと証明されている。道具を壊すな、ではなく、安全にやろうと指導することだ。

どこにどの工具があるか、確実に把握しているだろうか? きちんと片付けられているか? ラベルは貼られていうか? 効率的なメイカースペースにするために、カンザスシティーのHammerspaceでは、レーザーカットで作ったオリジナルの有孔ボードを使って、どこにどの工具があるかが一眼でわかるようにしてある。

シェルドン・クーパー的な態度にどう対処するか?(他人のあらをあげつらって自分を優位に見せる態度)

たとえば、活動時間の85パーセントは善良なメンバーだが、残りの15パーセントは他人の失敗を批判し続けている人がいたらどうするか? そうした態度は不愉快で、スペースのモラルを低下させる恐れがある。出入り禁止にして見せしめにするか? でも、85パーセントは良い人なのだ。メンバーをモノ扱いしてよいものだろうか?

まずは、あなた自身がシェルドン・クーパー(ドラマ「ビッグバン セオリー」のキャラクター、皮肉屋)にならず、彼らにそのスキルを使って他者のアイデアの実現を助け、スペース全体の一体感を醸成して成長を促すよう頼んでみることだ。その作戦がうまくいかないかったとき、または彼がそうした役割を担うことを拒絶したなら、スペースに否定的な空気が広がるのを防ぐために、その人を追放するしかない。チームで何かを作る訓練を行ない、つねに正しい活動を提示してゆくことが大切だ。

キミがこれまでやってきたすべてのことが誤りだったと仮定しよう。- シェルドン・クーパー『ビッグバン・セオリー』

仲間でいるために一緒に作る

コミュニティのためのテーブルは置いてあるだろうか? Bavarianビアホールやオハイオ州カントンのCHAMPSには、10人以上のMakerがいっしょに物を作ったり、コミュニティのプロジェクトを行える長いテーブルが置かれている。そこでMakerディナーを開催してパンを分け合ったりすれば、仲間意識が一層強まる。

メンバーの経歴をつねに確認しているか?

子どものためのプログラミング教室の講師が、性犯罪者リストに載っている人だったらどうする? それがスキャンダルとして報道されれば、スペースの評判が落ち、収益にも影響する。

人の経歴に関するサービスやプログラムは国によって異なるが、私がお勧めするのは、地元の人材紹介機関を訪ねて、その人の経歴を確認することだ。または、念のためにソーシャルメディアで確認する方法も知っておくとよい。それらを通じて地域の事業主と知り合いになれば、空いているポジションに人材を紹介したり、若者に雇用の道を開くといった機会も生まれる。

メンバーのエネルギーと情熱をうまく集めることで、スペースは成長する。若くて将来性のあるMakerたちは、古い人間には難しかった、新しいグループとのつながりを作ってくれる。上の写真は、Forge GreensboroのChandler Mayoが、ある家族に、彼が改良した3Dプリンターの実演をしているところだ。

メイカースペースのコミュニティへの奉仕計画は?

ミシガン州グランド・ラピッズのThe Geek Groupは、5,000台の古いコンピューターを作り直して、経済的に恵まれない家族に、デスクトップは25ドル、ノートパソコンは50ドルで販売して有名になった。この活動は、スポンサーや資金を惹きつけただけでなく、スペースにMakerカルチャーを引き寄せた。なぜなら、メンバー全員が自発性のある素晴らしいMakerのプライドを見せつける活動に参加できたからだ。

そこに決定打はないが、持続性があり建設的なMakerカルチャーを発展させる環境を整えるには、Maker文化を支えるしっかりとした前向きなビジョンとチームが何よりも重要だ。みなさんは、どうお考えだろうか? Joelskilltv@gmail.comまでご意見を送って欲しい。

さあ、がんばって持ち上げて、育てて、作って、強力なMakerカルチャーを築こう。作るのは大変だが、簡単に壊れてしまう。でも、みんなでやれば、うんと楽になる!

原文