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2019.05.24

日本でいちばん新しいMaker Faireの内幕:京都の静寂な歴史と魔法

Text by Mike Senese
Translated by kanai

日本人にとって京都は特別な街だ。1800年代に遷都するまで、そこは1000年以上にわたって日本の都が置かれ、丘の上には歴史的な寺や神社が無数に鎮座している。この国の美しい職人技が光る、穏やかで静かな場所だ。

その街で、とてもエキサイティングなことが起きた。オライリー・ジャパン(Maker Faire Tokyoの主催者)が、2019年に京都でMaker Faireを開催するとの計画を発表したのだ。私もこのイベントを体験しようとかの地を訪れた。その様子を要約してお伝えしよう。

京都は農業地帯でもある。その景色には、中小の畑が点在する。大阪空港から向かうバスの車窓からは、ほぼすべての家と家の間に庭園があり、空き地を埋めていた。

5年から10年ほど前にかけて、「けいはんな学研都市」と名付けられた3つの府県にまたがるテクノロジーハブの開発が行われた。3つの府県をカバーする、京都の中心地から離れた郊外にある。大学や研究所が建設され、日本の大手企業もここにテクノロジーの前哨基地を置いた。この地域は活気に包まれ、家族が移住し、大勢の人たちが京都や大阪から通勤するようになった。小規模なショッピングモールもいくつかできたようだ。我々が滞在したホテルもこの技術発展地区の中にあった。それを示すかのように、巨大な日時計が目の前にあり、夜になると緑色のレーザー光線が空に向けて発射される。未来的な感覚を受けるが、両脇には家族経営の小さな畑が点在していた。

この学研都市にあるひとつの施設で、Maker Faire Kyotoが開かれた。ぴかぴかのガラスとセメントと金属でできたその会場は、長期テナントとして科学博物館を誘致するのにうってつけだと感じた。この地区のどれだけの建物が恒常的な利用を考えているかは不明だが、その立地と週末の状況が、他の地域に見られるような注目を集める活動を難しくしている。

街の中心地から30〜40分の道のりがあり、これが初めてのイベントということもあって、主催者は、イベントが成功するか、人が見に来てくれるのか、開催前夜まで大変に気を揉んでいた。

開催当日、来場者たちは短い並木に囲まれた会場への階段を昇った。最上段には、「Maker Faire Kyoto」の横断幕を掲げた移動研究室のバスが入口前に停車していた。このバスの中は通り抜けることができ、車体にチョークでメッセージを書くこともできた。そのバスの脇には、来場者にパエリアを提供する小さな出店があった。Maker Faire Bay AreaやNew Yorkの夕食の伝統を見事に踏襲している。

入口を入ると、200組ほどの展示ブースがあった。開催中の2日間、彼らは私の興味を存分に搔き立ててくれた。移動研究室とパエリアを除いては、すべてが屋内にあった。去年のMaker Faire Tokyoで見かけた出展者を3組ほど確認できたが、あとはみな私にとっては新顔だった。

出展するMakerたちは、申し合わせたかのように、みなが驚くほど小さく精密な、動くプロジェクトを得意とする人たちに思えた。エレクトロニクスの専門家だ。その多くが高度に洗練されているが、ほとんどが熱心な愛好家による個人的なプロジェクトで、スタートアップ企業や将来の販売を目指すものは少なかった。会場には、非常にインタラクティブな暗室、たくさんの音楽プロジェクト、素晴らしい手工芸品、子ども向けの工作エリア、Makerフードゾーン、スポンサーセクション、さまざまな技術系ワークショップ(Micro:Bit、ハンダ付け、革のエッチング)などが、階段や坂道でつながれた2つの細長いオープンスペースに展開されていた。

私が気に入ったプロジェクトは、その週末にTwitterでずっとアップしていた。なるべく動画もアップしたので、見て欲しい。

土曜日の夜、初日が終了すると、チームは会場でメイカーディナーを振る舞った。食事と飲み物が饗され、スピーチが行われた(京都府副知事も登壇した)。私も一言話すよう依頼され、新天皇が即位した歴史的な瞬間をみんなと祝い、記念に特別な日本酒を開封した。私は、指ぬきほどの小さな紙コップで、ほとんどすべてのMakerたちにその酒を注いだ。床にこぼれたほうが多かったが、それより気持ちが大切だ。


Maker Faire Kyotoの順調な初日。酒を振る舞う@mseneseと海賊ポーズ

最後には、来場者数を気にしていた主催者の心配そうな表情は、大きな笑顔に変わった。そのとき、予想来場者数は、予想の1.5倍を超えていた。その多くは、おそらく近所から来たのであろう家族連れだった。日曜日の夜、京都に戻る列車の中で、来場者たちを見かけた。副知事はこの会場と地域への支援を継続したいと熱っぽく語っていた。イベントは大成功だった。

Faireの終了後、私は京都に向かい、1日、歴史的な場所を見て回った。大きくて近代的な鉄道の駅と、そこに高速鉄道が5分間隔で出入りする様子にも驚いた。この駅舎の派手な外観とその目の前にある京都タワーが、この街の歴史的な雰囲気をぶち壊していると不満に思う地元住民もいると、何かで読んだ。しかし、その両方が混在しているところが、現代の日本を象徴している。穏やかで細密な職人技と最先端テクノロジーのコンビネーションだ。それは街の中にも、日本で開かれるMaker Faireの出展プロジェクトにも見られる。ぜひ、日本のMaker Faireを見に来て欲しい。特別なイベントだ。

原文