
2026.09.18
からくりじゃんけん、人力ホバークラフトなど、電気を使わなくてもここまでできる!「非電源」の展示 — Maker Faire Tokyo 会場レポート #2
Maker Faireの展示の多くは電源や電池、各種のバッテリーを使っているが、中には電気をまったく使わずにユニークなものを作っている展示もある。その中からいくつか紹介しよう。
「からくりじゃんけん」はこちらの出す手を覚えて勝ちに来る
悪牛氏の展示は「からくりじゃんけん」。からくりだけで人間とじゃんけんできる装置である。

「からくりじゃんけん」の全景。じゃんけんの相手としては大がかりに見えるが、それには理由がある
手順に従って遊んでみよう。まず金属の玉を、装置に向かって右上のレールに落とす。転がっていく玉が止まるのを待ってから右側の黒いつまみを動かして、自分が出すじゃんけんの手を決める。そして中央下にある黒いハンドルをしばらく回し続けると、じゃんけんの手が描かれたパネルが1つ、装置の手前からせり出してきて勝ち負けが決まる。
面白いのはここからで、この装置はこちらが今までに出した手を2手まで記憶している。次にまたじゃんけんをすると、今までの手をもとにこちらに勝つ手を出してくるという。こちらがグーを出し続けるとパーを出すようになるし、グーとチョキを交互に出しているとパーとグーを交互に出すようになっていく。なぜそんなことが可能なのだろうか。

装置後方に3つある、次の手を決める部分
上の写真は装置の一部を取り出したもので、装置が次に出す手を決める部分だ。人間がこれまでに出した手に応じて、上面を支える3本の柱の高さが個別に変わるようになっている。柱の高さが変化すると上面の傾きが変わり、ここを通る金属の玉が3方向のどちらへ進むかが決まる。玉の進行方向で次の手が選ばれるので、つまり人間の出した手によって装置が次に出す手が変わってくるというわけだ。
装置の複雑さは、人間の手を記憶して勝つ手を出すしくみのためだった。これをマイコンなどを使わず、からくりだけで実現していると思うと見え方が変わってくるのではないだろうか。
回転が複雑に伝わっていくハンドスピナー
ハンドスピナーの塔ともいうべき展示を行っていたのは新里祐教氏である。ハンドスピナーの腕の中央と先端に磁石を埋め込み、重ねた塔をいくつか並べている。1つのハンドスピナーを回すと磁石どうしが反発し、ほかのハンドスピナーも不規則に回転する。塔の全体に回転が広がっていく様子は毎回変わり、つい何度も回してみたくなる展示だ。
ハンドスピナーを回すと隣のハンドスピナーが回転し、またその隣も回転していく
実はこの展示には前段がある。新里氏は、2018年に開催されたMaker Faire Tokyo 2018でも大量のハンドスピナーを展示していた。この展示は、同じように磁石を取り付けたハンドスピナーを平面に並べ、回転の様子が伝わっていくのを楽しむものだった。
Maker Faire Tokyo 2018での展示。マグネットをつけたハンドスピナーを平面に並べている
今回はこれを発展させて、ハンドスピナーを立体的に並べてみたということだ。
回転の様子は予測不可能で、ここを回すと必ずここが回るということがない。入力のわずかな違いがまったく異なる結果になる複雑系の動きだ。「回転の情報がどう伝わるかを見ることができます。数理系や物理シミュレーションをやっている人には受けがいいですね」とのこと。あわせて「難しいことを考えず、動きを楽しんでもらえたら」とも語っていた。
人力だけで浮いて前進するホバークラフト
一人乗りのホバークラフトを開発してきた超小型ホバークラフト研究室は、人力だけで進むホバークラフトを展示した。
今回のホバークラフトは4つのホバー部分と、前進するためのプロペラからなる
これまでのホバークラフトは電気を使うものが中心だったが、おととし展示した10号機に続いて今年も人力で動かす方式としている。今回の11号機は、浮上のための機構にレシプロコンプレッサーを採用した。レシプロコンプレッサーとは、シリンダーの内部でピストンが往復運動することで空気を送り込む装置である。ピストンには逆止弁がついていて、空気は下方向にのみ送られる。これを4つ配置し、ペダルの回転をピストンの上下運動に変換している。
背中の後ろにあるプロペラもペダルの力で回転する。4つのレシプロコンプレッサーで浮き上がり、プロペラで前進するしくみだ。
実際に乗らせてもらった。「プロペラで移動するには全力がいりますが、浮き上がるだけなら軽くこぐだけで大丈夫です」との言葉通り、ペダルを1秒に1回転ほどのペースで少しこぐだけで機体が浮いた。背中を押してもらうとスーッと移動する。これは楽しい感覚だ。
ホバークラフトの足下で、レシプロコンプレッサーが激しく上下している
これまでに開発してきたホバークラフトはさまざまな方式がある。今回も「思いついたので作ってみた」とのことで、来年にはまた新しい方式のホバークラフトを見せてくれるに違いない。

研究室がこれまでに開発した、歴代のホバークラフトたち






