2011.09.09
Ultimaker:新しい3Dプリンタがやって来た
オランダで作られている新しいUltimaker 3D プリンタがアメリカに上陸した。MakerBotよりも大きくて速い。開発したのは、2年前にユトレヒトのFab Lab(ファブラボ)で出会った3人のMakerだ。このFab Labは、MITのCenter for Bits and Atomsが世界中に展開しているデジタル製作工房のひとつ。Fab Labユトレヒトの所長、Siert Wijniaが、ウェブデザイナーのMartijn Elsermanと大学院生のErik De Bruijnとともに高速な新型マシンの開発を行ったのだ。
「より高性能な3Dプリンタが欲しかったのです。ビジネスとは別の話として」と語るのはDe Bruijn。彼はこれまでに、オープンソースのRepRap 3Dプリンタを何台か作ってきた。「ここにファブラボがなければ、このプロジェクトはそもそも始まっていなかったでしょう」とElsermanは断言する。
Ultimakerの開発者、Erik De Bruijn(左)、Martijn Elserman(右)、と出荷を待つUltimaker。
Ultimakerのプロトタイプは、去年の12月にブルックリンで開かれたBotacon(ロボットとロボットに近い創造的な人たちの集会)で披露された。Elsermanによると、反応は、「わお、すごい進展だ(個人向け3Dプリンタとして)。これならビジネスとしてもやっていける」というものだった。
そうして彼らはビジネスに踏み切った。3人の共同経営者は、みなオランダの別々の街に住んでいる(De Bruijnはティルブルフ、Elsermanはヘルデルマルセン、Wijniaはハールレム)。Ultimakerは、このオープンソースの3Dプリンタの出荷を4月に開始した。価格は約1,700ドルだが、翌日出荷だと1,900ドルとなる。De BruijnとElsermanによれば、120台以上売れて、現在までに70台を出荷したとのこと。注文してから配達されるまでに4~6週間かかる。売れた数の半分は、国営テレビで取り上げられた影響もあってか、オランダ国内の注文だった。購入者には障害を持つ女性も含まれていた。彼女はロボットアーム用の手をUltimakerでプリントしたという。この新しい手で、小さなキャンディが掴めるようになったそうだ。
MakerBotと同様、UltimakerはABSまたはPLA(ポリ乳酸プラスティック)でプリントできるが、Ultimakerでは、植物由来のPALを使ったほうが高速で、しかも安定的にできる話している。Ultimakerはデザインの面でも高い評価を得ている。ビルドプラットフォームが動くMakerBotと違い、Ultimakerはプリントヘッドのほうが動く。プリントヘッドがMakerBotのものに比べて小さく、ずっと軽量なのだ。さらに、MakerBotは可動部分に取り付けられているモータが、Ultimakerではプリンタのフレームに取り付けられている。こうしたことから、より大きなもの(Ultimakerは約21センチ四方、MakerBotは約13センチ四方)を高速にプリントできるようになった。
プリント速度は、低速運転でもRepRapやMakerBotの優に2倍はあると胸を張る。1月末に書かれたブログ記事“Insane Speeds With PLA on Ultimaker”(PLAを使ったときのUltimakerの脅威的な速さ)では、「移動速度が350ミリ毎秒、押し出し速度が300ミリ毎秒に達した」と公表している。
Aljosa KemperleとBozidar Kemperle親子と彼らのUltimakerとMakerBot(もうすぐRepRap Prusa Mendelも届く)。
しかし、これまでMakerbotとUltimaker 3Dの両方を使い、間もなくPrusa Mendelとして知られるRepRapプリンタも導入するAljosa Kemperleは、MakerBotがUltimakerによって駆逐されてしまうかという問題について、ちょっとあざ笑うようにこう答えた。「ボクは両方とも同じぐらい好きだよ。どっちも気むずかしいマシンだよ」
「オランダっぽいだろ(デザインが)」と語るのは父、彫刻家でインスタレーションアーティストのBozidar Kemperle。彼の住まいはブルックリンのボーラムヒル地区にある。Makerbot本社からわずか1ブロックの距離だ。
「彼ら(Ultimaker)はまったく違う畑の出身だよ」
Bozidarは、25歳で3Dアニメーターの息子に、洞窟のようなスタジオに置かれたMakerBotとUltimakerの保守管理を任せている。このスタジオは、ブルックリンのグリーンポイント地区、イーストリバー沿いの古いガラス工場の中にある。
MakerBot Industriesの創設者のひとりで、ブルックリンのハッカースペース、NYC Resistorの創設者でもあるBre Pettisは、Ultimakerはメチャクチャ速いと認めている。彼はMakeにこう語った。「すごいスピードで動かしている。すごく頭のいいことを、いろいろやってるね」
Pettisは、UltimakerにMakerbotの市場を奪われることはないと考えている。「何かで成功すれば、かならずこういうことが起きる。やり方がわかれば、事業を起こす人たちも増える。3Dプリンタが増えるのは、いいことだよ」
現在、5000台のMakerBotsが世界中で使われていて、今も「Bot Cave」では33人のスタッフがせっせとMakerBotを作り続けている(MakerBotの建物を貸している大家は、賃貸契約に、ここで生産されるロボットはアイザック・アシモフのロボット三原則を守るように、という条件を追加したそうな)。MakerbotのThing-o-matic 3Dプリンタはキットで1299ドルだが、飛ぶように売れているとPettisは話している。最近では、2,500ドルで完成品の販売も始めた。そもそも、1月にアーティスト・イン・レジデンス・プログラムとして始まったMakerBotだが、今では広報係も含むスタッフの増員を計画している。巨大プリンタメーカによる買収の噂は、Pettisも否定している。
3Dプリンタを多くの人が欲しがっている証拠がここにある。イギリスに創設された新企業、eMAKERが作ったHuxleyというRepRapマシン100台が、ウェブサイト、IndieGoGoから500ドルで売り出された。これに対して305件の注文が殺到した。eMAKERの創設者、Jean-Marc Giacalone(33)は、10月か11月に550ドルでもっと多くを発売したいと語っている。Huxleyのマシンは、世界中の個人や企業へ下請けに出すことになっているとGiacalone。イギリスのミルトンケインズにある庭の物置で、自宅勤務のお父さんが立ち上げた会社にしては上出来だ。現在、eMAKERはイギリスのブリストルにある。「こうしたマシンには大きな将来性を感じています」と、Giacalone はスカイプを使ったインタビューで答えてくれた。
PettisもUltimakerのスタッフも、楽観的な見方は共通する。MakerbotとUltimakerは、どちらもオープンソースの推進者であるため、両社とも、互いの技術を無料で分け合っている。事実、UltimakerはMakerBotのReplicator Gソフトウエアを使っている。Ultimaker専用のNetFabb Engine Basicを購入して使うこともできるが、専用ソフトを使うとなると250ドルの出費が必要になる。
Aljosa Kemperleは、Ultimakerのソフトウエアにはまだ改良の余地があると考えている。「ソフトの開発には、あまり力を入れてないようだ。早く出荷したくて、ソフトをポイと放り込んだ感じだ。気持ちはわかるがね」
だが、彼もUltimakerのメカニズムは称賛している。電子系統のベイがプリンタの底に隠されていて、スイッチャやステッピングモータのケーブルは薄い布に包んで木製フレームの角の内側に収めるようになっている。「こういう細かいところまで気を遣う連中なんだよ」とKemperle。
ボストンにあるStratus Technologiesのソフトウェアエンジニア、Dave Durantは、Ultimakerのように洗練された設計の3Dプリンタでも、イライラさせられることがあると訴える。プリントができないので、調整して、分解して、いろいろな部品を細かく調べてから、UltimakerのGoogleグループに相談した。これに対してMartijn Elsermanは、溝付きのロッドにグリスを塗るよう助言。すると、みごと問題は解決された。
Ultimakerは、いずれもっと背の高いものをプリントできるモデルを発売すると話している。
訳者から:Ultimakerは現在予約受付中。完全キットで1,194ユーロ(今なら13万円ぐらい?)。ちなみに、本文で250ドルと書かれていたNetFabb Engine Basic – for Ultimakerは150ユーロ(27,000円ぐらい)でした。送料は、保険付きDHLで日本まで約3万円ってところです。予約はUltimaker Shop サイトからどうぞ。ちなみに、日本のFablab(ファブラボ)については、Fablab Japanを見てください。
– jonkalish
[原文]