2013.05.07
12ドルの携帯電話
Bunnie Huangは、12ドルで携帯電話を買った。電話会社がお金を出しているわけではない。自由契約でロックフリーの電話だ。どうってことのない電話だ。AppleのiPhoneやGoogleのNexus 4 などとは比べようもないが、クアッドバンドGSM、ブルートゥース、MP3再生機能、OLEDディスプレイ、バックライト付きキーパッドを備えている。それでも、箱入りで、充電器、ケーブル、シリコンカバーが付属して12ドルで売られている。つまり、12ドル以下で生産されているということだ。Bunnieはこう話す。「…大きめのチーズピザか、ちょっと高級なグラスワインの値段だ」
なぜこんなことが可能なのかハッキリしない。そこでBunnieは電話を分解して探ってみた。ネジは使われておらず、ケースははめ込み式。内部にコネクターはなく、ディスプレイからバッテリーまで、すべてが基板に直接ハンダ付けされている。それでもバックライト付きのキーパッドをと、周囲を光らせる装飾用のライトまで内蔵されている。
秘密は、2つの主要IC、MediatekのMT6250DAとVanchipのVC5276で構成された電子回路にありそうだ。MT6250はバルクでひとつ2ドル以下で販売されているという噂だ。しかし、欧米の人間には、このメーカーに「正面玄関から入って」接触することは、まず不可能だ。
中国人に知り合いがいれば、そしてウェブサイトが見つけられれば、回路図とレイアウトファイルとソフトウェアをダウンロードして、タダで作ることができる。ただし、この電話機はオープンソースではない。オープンハードウェアでもない。これは、Bunnieが言うところの「公开」(ゴンカイ)だ。
「公开」は、単に商品が模倣される「山寨」を越えて発展しているユニークなハードウェアのエコシステムだ。それに対して、公开は、一定のルールのもとでのアイデアのネットワークであり、ピアツーピアの広がりだ。欧米で言われている知的所有権とはまったく違う考え方で、中国特有のものだ。
欧米の知的所有権という考え方は抜本的なオーバーホールが必要だという意見には誰もが賛同するだろう。アイデアや知的所有権の共有に関して、中国が新しい方向性を示してくれているのかもしれない。公开式のエコシステムは、こっちの世界でも有効かも。
ネジは使われず、ケースははめ込み式。
コネクターはほとんどなく、すべてが基板にハンダ付けされている。
ブルートゥースのアンテナは短いビニール線(左下)。
主要なICは2つだけ。MediatekのMT6250DAとVanchipのVC5276。
(bunnie:studiosより)
– Alasdair Allan
[原文]